「創業したはいいけれど、経理や税務って何から手をつければいいの?」――これは、創業1年目の経営者からもっとも多く寄せられるご相談のひとつです。届出書の提出期限を知らずに損をしてしまったり、領収書をためこんで確定申告直前に慌てたり……。実は、創業初年度の「最初の習慣づくり」が、その後の経営を大きく左右します。
この記事では、スタートアップ経営者・個人事業主・小規模法人の代表者に向けて、創業1年目に押さえておくべき経理・税務の基本をチェックリスト形式でまとめました。2026年時点の最新情報をもとに、つまずきやすいポイントを網羅していますので、ぜひブックマークしてご活用ください。
1. 創業直後に提出すべき届出書をチェック
創業してまず取り組むべきは、税務署や自治体への届出書の提出です。提出期限を過ぎると、受けられるはずの節税メリットを逃してしまうケースがあります。以下の届出書を確認しましょう。
【個人事業主の場合】
- 個人事業の開業届出書:事業開始日から1か月以内に所轄税務署へ提出
- 所得税の青色申告承認申請書:開業日から2か月以内(1月1日~1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで)に提出。最大65万円の青色申告特別控除を受けるために必須です。
- 給与支払事務所等の開設届出書:従業員を雇用する場合、開設から1か月以内に提出
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:給与支払の対象者が常時10人未満の場合、源泉所得税の納付を年2回にまとめられます。届出は随時可能ですが、早めの提出がおすすめです。
【法人の場合】
- 法人設立届出書:設立日から2か月以内に所轄税務署へ提出(都道府県・市区町村にも届出が必要)
- 青色申告の承認申請書:設立日から3か月以内、または最初の事業年度終了日のいずれか早い日までに提出
- 消費税の課題判定:資本金1,000万円以上で設立した法人は、初年度から消費税の課税事業者となります。インボイス発行事業者の登録も必要に応じて検討しましょう。
特に青色申告承認申請書は、提出を忘れると白色申告になり、最大65万円(個人)の控除や法人の欠損金繰越控除10年のメリットを受けられません。「提出期限を1日でも過ぎたらアウト」ですので、創業と同時に手続きすることを強くおすすめします。
2. 会計ソフトの選定と導入
経理の効率化は、会計ソフトの選び方で大きく変わります。創業1年目の段階で、自社に合ったソフトを導入しておきましょう。
会計ソフト選びの3つのポイント
- クラウド型かインストール型か:近年はクラウド型(freee、マネーフォワードクラウド、弥生会計オンラインなど)が主流です。銀行口座やクレジットカードとの自動連携機能があり、入力の手間を大幅に削減できます。
- インボイス制度・電子帳簿保存法への対応:2026年現在、インボイス制度(適格請求書等保存方式)と改正電子帳簿保存法への対応は必須です。電子取引データの保存義務にも対応しているソフトを選びましょう。
- 税理士との連携のしやすさ:顧問税理士がいる場合は、税理士が対応可能なソフトを選ぶとデータ共有がスムーズです。導入前に税理士へ相談するのがベストです。
月額料金は個人向けプランで年間1万円~3万円程度、法人向けプランで年間3万円~5万円程度が目安です。初年度無料のプランを提供しているサービスもありますので、まずは試してみるとよいでしょう。
3. 日々の経理業務の習慣づくり
創業1年目で最も大切なのは、「日々の経理を溜めない習慣」をつくることです。
領収書・レシートの管理ルール
- もらったその日に処理するのが理想。最低でも週に1回はまとめて会計ソフトに入力しましょう。
- 紙の領収書はスマホアプリで撮影し、電子データとして保存。電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ付与または訂正削除の履歴が残るシステムでの保存)を満たす方法で管理しましょう。
- 事業用とプライベートの支出は明確に分けること。事業用のクレジットカードや銀行口座を別に用意するだけで、経理の負担が格段に減ります。
請求書の発行と売上管理
- インボイス発行事業者に登録している場合は、適格請求書の記載要件(登録番号、適用税率、消費税額等)を満たしているか必ず確認しましょう。
- 売上の入金確認は最低でも月1回行い、未入金がないかチェックする習慣をつけましょう。
4. 給与計算・社会保険の基本
従業員を雇用した場合、給与計算と社会保険の手続きも経営者の責任です。
- 源泉所得税の徴収と納付:毎月の給与から源泉所得税を差し引き、原則翌月10日までに納付します(納期の特例適用の場合は年2回)。
- 社会保険の加入:法人は社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入義務があります。設立から5日以内に届出が必要です。
- 労働保険の加入:従業員を1人でも雇用したら、労災保険・雇用保険の手続きが必要です。
給与計算を間違えると、従業員との信頼関係にも影響します。給与計算ソフトの導入や、税理士・社労士への外注も検討してみてください。
5. 決算・確定申告に向けた準備
創業1年目の決算・確定申告をスムーズに終えるために、年間を通じて以下のことを意識しておきましょう。
- 月次で試算表を確認する:最低でも四半期に1回は損益の状況を把握し、利益予測に基づいた節税対策を検討しましょう。
- 固定資産台帳の作成:10万円以上の備品やPCなどは固定資産として計上し、減価償却の処理が必要です(青色申告の場合、30万円未満の少額減価償却資産の特例あり)。
- 棚卸しの実施:在庫を扱う事業の場合、期末に実地棚卸しを行い、正確な在庫金額を把握します。
- 確定申告の期限:個人事業主は翌年3月15日まで、法人は事業年度終了日の翌日から2か月以内が原則です。
「決算が近づいてから慌てて節税を考える」のでは遅いケースがほとんどです。創業半年を過ぎたあたりで一度、税理士に相談することで、初年度の税負担を適正に抑えることができます。
創業1年目チェックリストまとめ
最後に、本記事のポイントをチェックリストとしてまとめます。
- ☐ 開業届・法人設立届出書を期限内に提出した
- ☐ 青色申告承認申請書を期限内に提出した
- ☐ 消費税・インボイスの登録要否を確認した
- ☐ 会計ソフトを導入し、銀行口座と連携した
- ☐ 事業用の銀行口座・クレジットカードを開設した
- ☐ 領収書・レシートの管理ルールを決めた
- ☐ 電子帳簿保存法に対応した保存方法を導入した
- ☐ 適格請求書(インボイス)の記載要件を確認した
- ☐ 給与計算・源泉所得税の納付ルールを把握した
- ☐ 社会保険・労働保険の届出を完了した
- ☐ 月次(または四半期)で損益を確認する仕組みを作った
- ☐ 決算・確定申告の期限を把握した
創業1年目は、事業を軌道に乗せることに集中したい時期です。だからこそ、経理・税務の基盤を早めに整えておくことが、後々の安心につながります。
平川文菜税理士事務所では、創業したばかりの経営者に寄り添ったサポートを行っています。「届出書を出し忘れていないか不安」「会計ソフトの初期設定を手伝ってほしい」「初めての確定申告が心配」など、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
