「創業したばかりで本業に集中したい。経理は後でまとめてやればいいか…」
そんなふうに思っていませんか? お気持ちはとてもよくわかります。創業1〜2年目は、営業・商品開発・人脈づくりなど、やることが山のようにありますよね。
でも、経理を後回しにした結果、確定申告の直前に領収書の山と格闘して徹夜したり、融資審査で「帳簿が整っていない」と銀行に指摘されたり…。私たち平川文菜税理士事務所にも、毎年そうしたご相談が多く寄せられます。
そこで今回は、クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード)を使って最小限の手間で帳簿を整えるコツと、税理士目線で「ここだけは押さえてほしい」というポイントを具体的にお伝えします。
なぜ創業1〜2年目の経理を放置すると危険なのか
まずは「後回し」がどんなリスクにつながるか、代表的な3つのパターンを見てみましょう。
① 確定申告で青色申告特別控除65万円を逃す
個人事業主の方が青色申告で最大65万円の特別控除を受けるには、複式簿記による帳簿づけと期限内申告が必要です。帳簿が未整備のまま申告期限(原則3月15日)を迎えてしまうと、控除額が10万円に下がったり、そもそも青色申告ができなくなるケースもあります。所得税率が20%の方なら、65万円の控除は約13万円の節税効果に相当します。これを逃すのは本当にもったいないです。
② 融資・補助金の審査でつまずく
日本政策金融公庫の創業融資や各種補助金の申請では、試算表(月次の損益や残高がわかる帳簿)の提出を求められることがあります。帳簿が白紙に近い状態だと、審査に時間がかかるだけでなく、「経営管理能力に不安がある」と判断されかねません。実際に、帳簿が整っていないために融資審査が3か月遅れたという事例もあります。
③ 消費税の届出タイミングを逃す
法人の場合、資本金1,000万円未満で設立すれば原則として最初の2事業年度は消費税の免税事業者になれます。ただし、特定期間(設立1期目の前半6か月)の課税売上高が1,000万円を超える場合などは、2期目から課税事業者になる可能性があります。売上の把握が遅れると、届出やインボイス登録の判断が後手に回ってしまいます。
クラウド会計ソフトを選ぶならfreeeかマネーフォワードか
創業期のクラウド会計ソフトとして人気が高いのがfreee(フリー)とマネーフォワード クラウド確定申告/会計の2つです。それぞれの特徴を簡単にまとめます。
- freee:簿記の知識がなくても入力しやすい独自のUI。質問に答える形式で確定申告書類を作成できる。個人事業主やひとり法人に特に人気。スタータープランは月額1,480円(税抜・2024年時点、個人向け)から。
- マネーフォワード クラウド:従来の会計ソフトに近い画面設計で、簿記の基礎知識がある方や税理士との連携がスムーズ。パーソナルミニプランは月額1,078円(税込・2024年時点)から。
どちらも銀行口座・クレジットカードとの自動連携機能があり、日々の取引を自動で取り込んでくれます。正直なところ、どちらを選んでも大きな差はありません。迷ったら無料お試し期間で実際に触ってみるのが一番です。
最低限やるべき経理フロー5ステップ
「最小限の手間で帳簿を整える」ために、私たちが創業期のお客様にお伝えしている運用フローをご紹介します。
ステップ1:事業用の銀行口座とクレジットカードを分ける
まず最初にやるべきは、プライベートと事業の口座・カードを完全に分けることです。これだけで、帳簿づけの手間が体感で半分以下になります。個人事業主の方で「個人口座のまま事業を始めてしまった」という方は、今からでも遅くありませんので、事業用口座を開設しましょう。
ステップ2:口座・カードをクラウド会計に連携する
freeeでもマネーフォワードでも、事業用口座とカードを登録して自動連携をオンにするだけで、取引データが自動的に取り込まれます。設定にかかる時間はおおよそ30分〜1時間程度です。
ステップ3:週に1回、取引の「確認・登録」をする
ここが最大のポイントです。毎日やる必要はありません。週に1回、15〜30分でOKです。具体的には以下の作業を行います。
- 自動取り込みされた取引データの勘定科目が正しいか確認する(例:「Amazon」の支出が消耗品費なのか、書籍購入なのかなど)
- 現金で支払った経費があれば、レシートを撮影してアプリから登録する(freeeならスマホアプリのカメラ機能、マネーフォワードなら「手入力」または連携アプリを使用)
- 不明な取引にはメモやタグをつけておく(後で税理士に相談するときに役立ちます)
月末にまとめて処理しようとすると、「この支払い何だっけ?」と記憶があいまいになり、余計な時間がかかります。週1回のルーティン化が成功のカギです。
ステップ4:月に1回、残高チェックをする
月末に、クラウド会計上の預金残高と、実際の通帳・ネットバンキングの残高が一致しているかを確認します。ズレがあれば、未登録の取引や二重登録がないかを確認しましょう。この作業は10分程度で終わります。残高が合っていれば、帳簿の精度はかなり高い状態です。
ステップ5:領収書・請求書の原本を保存する
電子帳簿保存法の改正により、2024年1月以降は電子取引データ(メール添付のPDF請求書など)は電子保存が義務となっています。紙で受け取った領収書も、freeeやマネーフォワードのファイルボックス機能で写真を撮ってアップロードしておくと、検索性が格段に上がります。
紙の原本は、念のため月ごとに封筒にまとめて保管しておけば安心です。法人は7年間、個人事業主は5年間(帳簿は7年間)の保存義務があります。
税理士目線で「ここだけは押さえて」という3つのポイント
ポイント1:売上の計上タイミングを間違えない
売上は「入金日」ではなく、「サービス提供日」や「商品の引渡日」に計上するのが原則です(発生主義)。たとえば、12月に納品して1月に入金があった場合、売上は12月に計上します。クラウド会計の自動取り込みは「入金日」ベースなので、期末(12月や3月末)をまたぐ売上は手動で修正が必要です。
ポイント2:プライベート支出の混入に注意
事業用カードでうっかり私的な買い物をしてしまうことは、誰にでもあります。その場合は、「事業主貸」(個人事業主の場合)や「役員貸付金」(法人の場合)として処理してください。放置すると、税務調査で経費否認されるリスクがあります。
ポイント3:迷ったら「仮で登録して税理士に相談」でOK
「この支出は経費になるのかな?」「勘定科目がわからない…」と悩んで手が止まるのが一番もったいないです。まずは仮の科目で登録しておき、あとで税理士に確認するというスタンスで十分です。クラウド会計なら税理士側からもデータを確認・修正できるので、遠慮なく相談してください。
まとめ:週1回30分の習慣が、あなたの事業を守ります
創業1〜2年目の経理で大切なのは、完璧を目指すことではありません。最低限のフローを習慣化して、帳簿を「だいたい合っている」状態に保つことです。
- 事業用口座・カードを分ける
- クラウド会計に連携する
- 週1回15〜30分で取引を確認・登録する
- 月1回残高をチェックする
- 領収書・請求書を保存する
たったこれだけで、確定申告の直前に慌てることも、融資審査でつまずくことも大幅に減らせます。
平川文菜税理士事務所では、創業期のお客様向けにクラウド会計の初期設定サポートや、月次の経理チェックを行っています。「何から手をつければいいかわからない」「自分の処理が合っているか不安」という方は、お気軽にご相談ください。
あなたが本業に集中できるよう、経理のことは私たちが一緒にサポートします。
