「友人と一緒に会社をやろう」「ビジネスパートナーと共同で法人を設立しよう」──そんなワクワクする船出のとき、お金の話はつい後回しにしがちです。「信頼している相手だから大丈夫」「細かいことは走りながら決めよう」。その気持ちはよくわかります。しかし、税理士として多くの共同創業者の相談を受けてきた経験から断言できます。お金のルールが曖昧なまま始めた共同経営は、高い確率でトラブルに発展します。

この記事では、共同創業時に最低限合意しておくべき「お金のルール」を、税務と経営の両面から整理します。これから共同創業を考えている方、すでに始めているけれどルールが曖昧な方は、ぜひ参考にしてください。

なぜ共同創業で「お金のトラブル」が起きるのか

共同創業のトラブルで最も多い原因は、「暗黙の了解」のズレです。お互いが「こうだろう」と思っていたことが、実は全く違う認識だったというケースは珍しくありません。

実際に当事務所に寄せられた相談の一例をご紹介します。

  • 友人2人で50:50の株式比率にしたが、経営方針で意見が割れたときに議決ができず事業が停滞した
  • 片方が本業の傍ら参画しているのに、役員報酬が同額だったことで不満が蓄積した
  • 経費精算の基準が曖昧で、一方の私的な支出が経費に紛れ込んでいることが後から発覚した

どれも「最初にルールを決めていれば防げた」トラブルです。友人関係やビジネスパートナーとしての信頼関係を守るためにも、創業前の「お金の設計」は不可欠なのです。

ルール①:株式の持分比率は「50:50」を避ける

なぜ50:50は危険なのか

共同創業でもっとも多い失敗パターンが、株式を50:50で分けるケースです。「対等な関係でやりたい」という気持ちは理解できますが、会社法上、普通決議(役員選任・報酬決定など)は過半数の賛成が必要です。持分が50:50では、意見が対立した瞬間にあらゆる決議がデッドロック(膠着状態)に陥ります。

おすすめの持分比率の考え方

実務上は以下のような比率がよく採用されています。

  • 51:49──普通決議は代表側が主導できるが、特別決議(定款変更・合併など、2/3以上の賛成が必要)は双方の合意が必要となり、バランスが取れる
  • 66:34──代表側が特別決議まで単独で可決できる。もう一方の関与度が低い場合に適する
  • 60:40──普通決議は代表側が主導でき、特別決議には双方の協力が必要。出資額に大きな差がない場合に使いやすい

持分比率は「出資額」だけで決めるものではありません。誰がフルタイムで経営にコミットするのか、アイデアや技術の貢献度はどうかなど、総合的に話し合って決めましょう。このプロセス自体が、共同創業者間の認識をすり合わせる貴重な機会になります。

株主間契約書を作成する

持分比率に加えて、株主間契約書(Shareholders’ Agreement)を作成しておくことを強くおすすめします。退任時の株式買取条件、競業避止義務、追加出資のルールなどを文書化しておくことで、将来のトラブルを大幅に減らせます。費用は司法書士・弁護士への依頼で10万〜30万円程度が目安です。

ルール②:役員報酬は「定期同額給与」の原則を守る

税務上のルールを理解する

法人の役員報酬は、税務上「定期同額給与」でなければ原則として損金(経費)に算入できません。事業年度開始から3か月以内に決定し、その後は毎月同額を支給する必要があります(法人税法第34条)。

「今月は売上が良かったから多めに」「資金繰りが厳しいから減らそう」という対応は、税務調査で損金否認されるリスクがあるため注意が必要です。

共同創業者間の報酬格差をどうするか

当事務所での相談事例では、以下のような基準で差をつけるケースが多いです。

  • 経営へのコミット時間──フルタイムとパートタイムで差をつける
  • 担当領域の責任度──代表取締役と取締役で差をつける
  • 前職の報酬水準──創業に伴うリスクとのバランスを考慮する

たとえば、代表取締役が月額30万円、取締役が月額15万円というように、役割と責任に応じた金額設定を最初の段階で合意しておくことが大切です。「利益が出たら見直す」というルールも併せて決めておくと、初期の低報酬にも納得感が生まれます。

ルール③:経費精算の基準を明文化する

「これは経費?」の曖昧さがトラブルの温床に

共同創業の初期は、個人の財布と会社の財布の境界が曖昧になりがちです。特に以下のような経費は、共同創業者間で認識がズレやすい項目です。

  • 交際費(飲食代)──事業関連か私的な飲み会か
  • 交通費──自家用車の利用やタクシー代の基準
  • 通信費・備品費──個人利用との按分
  • 出張時の宿泊・日当──上限額や等級の基準

最低限決めておくべき経費ルール

以下のルールを書面で共有しておくだけで、トラブルのリスクは大幅に下がります。

  • 1回あたりの交際費上限額(例:1人5,000円以内は事前承認不要)
  • 領収書・レシートの提出期限(例:支出日から1週間以内)
  • 一定金額以上の支出は相手方の事前承認を必要とする(例:3万円以上)
  • 月次で経費明細を共有し、双方が確認する仕組みをつくる

なお、資本金1億円以下の中小法人であれば、交際費のうち飲食費の50%を損金算入できる特例(または年間800万円までの全額損金算入の特例)があります。こうした税務上のメリットを活用するためにも、正確な経費管理は欠かせません。

トラブルを防ぐための「3つの仕組み」

ルールを決めても、運用が伴わなければ意味がありません。以下の3つの仕組みを導入することで、共同経営を円滑に維持できます。

  • ①月次の経営ミーティング──月に1回、売上・経費・キャッシュフローの状況を共有する場を設ける
  • ②第三者の関与──税理士や会計士など、利害関係のない専門家に定期的にチェックしてもらう
  • ③定期的なルール見直し──半年〜1年ごとに、報酬水準や経費ルールが現状に合っているか見直す

特に②は重要です。共同創業者同士では言いにくいお金の話も、第三者である税理士が間に入ることで冷静に議論できるようになります。

まとめ:お金のルールは「信頼関係を守る仕組み」

共同創業時にお金のルールを決めることは、相手を疑うことではありません。むしろ、信頼関係を長く維持するための「仕組みづくり」です。最低限、以下の3点は創業前に合意しておきましょう。

  • 株式の持分比率──50:50は避け、役割と貢献度に応じて設計する
  • 役員報酬の決め方──定期同額給与のルールを守り、金額の根拠を明確にする
  • 経費精算の基準──上限額・承認フロー・月次確認の仕組みを書面で共有する

平川文菜税理士事務所では、共同創業時の資本政策・役員報酬設計・経理ルールの策定まで、創業初期に必要なお金の設計をトータルでサポートしています。「これから共同で会社を作りたい」「すでに始めているけれどルールを見直したい」という方は、お気軽にご相談ください。

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