「確定申告で所得税を納めたから、今年の税金はもう終わり」——そう安心していた矢先、6月に届く住民税の通知書を見て青ざめた経験はありませんか。さらに8月には個人事業税の通知まで届き、「こんなに税金があるなんて聞いていない」と戸惑う創業期の経営者は少なくありません。実は、確定申告はあくまで所得税の精算手続きであり、住民税・個人事業税・消費税はそれぞれ別のタイミングで課税・納付が求められます。本記事では、2025年分の確定申告を済ませた個人事業主・フリーランスの方に向けて、申告後に届く税金の種類・金額の目安・納付スケジュールを時系列で整理し、資金ショートを防ぐ具体策をお伝えします。
01確定申告で納める所得税はあくまで「1つ目」の税金
個人事業主が1年間の事業について行う確定申告は、所得税および復興特別所得税の申告・納付手続きです。2025年分(令和7年分)の確定申告期限は2026年3月16日、納付期限も同日でした。振替納税を利用した場合は2026年4月下旬に口座引き落としとなります。
しかし、確定申告のデータは税務署から自治体へ送られ、住民税や個人事業税の計算に使われます。つまり、確定申告で所得税を納めたあとにも、以下の税金が順番にやってきます。
- 住民税(市区町村民税+都道府県民税)——6月に通知、年4回に分けて納付
- 個人事業税——8月に通知、年2回に分けて納付
- 消費税および地方消費税——確定申告と同時期に納付(課税事業者のみ)
- 所得税の予定納税——前年の所得税額が15万円以上の場合、7月と11月に前払い
これらをすべて把握しておかないと、手元資金が想定以上に減り、事業の運転資金が不足する事態に陥りかねません。
02税金ごとの計算方法の違いを押さえよう
所得税——累進課税で5%~45%
所得税は課税所得に対して5%から45%の超過累進税率が適用されます。各種所得控除(基礎控除・社会保険料控除・青色申告特別控除など)を差し引いた後の金額に課税されるため、控除をフル活用すれば税額を抑えることが可能です。
住民税——一律約10%+均等割
住民税は前年の所得をもとに計算され、税率は所得割が一律約10%(市区町村民税6%+都道府県民税4%)、これに均等割(年額約5,000円前後、自治体により異なる)が加わります。所得税では適用される累進税率の恩恵がなく、所得控除の金額も所得税とは一部異なるため、「所得税は少なかったのに住民税が高い」と感じるケースが多いのです。
個人事業税——業種ごとに3%~5%
個人事業税は事業所得が年間290万円(事業主控除)を超える場合に課税されます。税率は業種によって異なり、多くの業種で5%が適用されます。青色申告特別控除(最大65万円)は個人事業税の計算では差し引けないため、所得税の計算上は利益が290万円以下でも個人事業税が課税される場合がある点に注意が必要です。
消費税——課税事業者のみ
2023年10月のインボイス制度開始に伴い、免税事業者からインボイス登録をして課税事業者になった方は、消費税の納付が必要です。2025年分の消費税は2026年3月31日が申告・納付期限です。2割特例の経過措置を適用できる場合は、売上税額の2割が納税額の目安になります。
ポイント:個人事業税の計算では、青色申告特別控除65万円が適用されません。たとえば事業所得が350万円(青色申告特別控除前)の場合、所得税の計算では65万円を差し引けますが、個人事業税は350万円から事業主控除290万円を引いた60万円に対して課税されます。この違いを見落とすと、想定外の税負担に驚くことになります。
032026年の納税スケジュールを時系列で確認
2025年分の所得に基づく税金の納付スケジュールを時系列で整理します。以下は個人事業主を前提としたものです。
2026年3月——所得税・消費税の申告と納付
- 所得税:確定申告期限 3月16日(振替納税の場合は4月下旬引落し)
- 消費税:確定申告期限 3月31日(振替納税の場合は4月下旬引落し)
2026年6月——住民税の通知・第1期納付
- 住民税の税額決定通知書が届く
- 第1期納付期限:6月末日(自治体により異なる)
2026年7月——所得税の予定納税(第1期)
- 前年の所得税額が15万円以上の場合、予定納税の通知が届く
- 第1期納付期限:7月31日
2026年8月——住民税第2期+個人事業税第1期
- 住民税 第2期納付期限:8月末日
- 個人事業税 第1期納付期限:8月末日(都道府県により異なる)
2026年10月~11月——住民税第3期+個人事業税第2期+予定納税第2期
- 住民税 第3期納付期限:10月末日
- 個人事業税 第2期納付期限:11月末日
- 所得税予定納税 第2期納付期限:11月30日
2027年1月~2月——住民税第4期
- 住民税 第4期納付期限:翌年1月末日
このように、確定申告が終わった3月以降も、ほぼ毎月のように何らかの税金の納付期限が訪れます。特に7月~8月は住民税・個人事業税・予定納税が重なるため、資金繰りが最も厳しくなる時期です。
04具体的な金額シミュレーション
事業所得500万円(青色申告特別控除65万円適用前)、青色申告の個人事業主(扶養なし、社会保険料控除80万円と仮定)のケースで、各税金の概算額をシミュレーションしてみましょう。
- 所得税:課税所得約290万円 → 約19万円(税額控除前の概算)
- 住民税:課税所得約300万円(住民税の控除額は所得税と異なる)→ 所得割約30万円+均等割約5,000円 = 約30.5万円
- 個人事業税:(500万円 − 290万円)× 5% = 10.5万円
- 消費税(2割特例適用の場合):売上に係る消費税額の2割(売上規模による)
所得税の約19万円だけを想定していた方が、住民税30.5万円+個人事業税10.5万円=合計約41万円の追加負担を知ったとき、驚くのも無理はありません。さらに予定納税が発生する場合は、翌年の所得税の前払いも加わります。
注意:上記はあくまで簡易的な概算です。実際の税額は各種控除の適用状況や自治体の税率により異なります。正確な税額を把握したい場合は、税理士にご相談ください。
05資金ショートを防ぐ3つの実践策
1. 売上の15%~20%を納税準備金として毎月プールする
所得税・住民税・個人事業税・消費税をすべて合わせると、所得に対して25%~35%程度の税負担になるケースも珍しくありません。毎月の売上から15%~20%を事業用口座とは別の「納税用口座」に移し、税金専用の資金として確保しておきましょう。
2. 年間納税カレンダーを作成し、キャッシュフロー表に組み込む
前述の納付スケジュールを自社のキャッシュフロー表に反映させましょう。特に7月~8月の納税集中期にどれだけの支出が発生するかを事前に把握しておくことが重要です。年度初めに概算額を見積もり、月ごとの支出予定に組み込んでおくと安心です。
3. 確定申告の時点で翌年度の税負担を試算しておく
確定申告を行う際に、所得税だけでなく住民税・個人事業税の概算額も同時に試算しておきましょう。税理士に依頼している場合は、申告時に「年間の税負担総額の見込み」を確認するようにすると、通知書が届いても慌てずに済みます。
06予定納税の減額申請も忘れずに
前年の所得税額が15万円以上の場合、翌年7月と11月に予定納税が求められます。しかし、今年の業績が前年より大幅に落ち込んでいる場合は、「予定納税額の減額申請書」を提出することで納付額を減らすことが可能です。第1期分の減額申請期限は2026年7月15日です。資金繰りに余裕がない場合は、積極的に活用しましょう。
また、住民税についても、前年に比べて所得が大幅に減少した場合は、自治体によって減免や徴収猶予の制度が設けられている場合があります。該当しそうな方はお住まいの市区町村に相談してみてください。
- 確定申告で納める所得税は年間の税負担の一部に過ぎない。住民税(6月~)・個人事業税(8月~)・予定納税(7月・11月)が後から届く
- 住民税は一律約10%、個人事業税は事業主控除290万円超に対して3%~5%で課税される。青色申告特別控除が個人事業税では使えない点に注意
- 7月~8月は住民税・個人事業税・予定納税が重なる最も資金繰りが厳しい時期
- 毎月売上の15%~20%を納税用口座にプールし、年間納税カレンダーでキャッシュフローを管理する
- 確定申告時に所得税だけでなく、住民税・個人事業税の概算額も含めた年間税負担総額を試算しておくことが大切
