「確定申告を提出した後に、経費の計上漏れを見つけてしまった」「売上の金額を間違えて申告してしまったかもしれない」――創業期の経営者や個人事業主の方から、こうしたご相談をいただくことは少なくありません。申告後のミスに気づいたとき、焦る気持ちはよく分かります。しかし、税額が増えるのか減るのかによって手続きがまったく異なるため、正しい対応フローを知っておくことがとても大切です。本記事では、2025年分の確定申告期限を過ぎた2026年3月30日現在の情報をもとに、「修正申告」と「更正の請求」の違いを分かりやすく解説します。
01修正申告と更正の請求──2つの手続きの基本的な違い
確定申告の提出後にミスに気づいた場合、対応方法は大きく2つに分かれます。
修正申告(税額が増える場合)
当初の申告で税額を少なく申告していた場合や、還付金を多く申告していた場合に行う手続きです。たとえば、売上の計上漏れがあった場合がこれにあたります。修正申告は納税者側から「自主的に」提出するものであり、提出した時点で確定します。税務署の承認を待つ必要はありません。
更正の請求(税額が減る場合)
当初の申告で税額を多く申告していた場合や、還付金を少なく申告していた場合に行う手続きです。たとえば、経費の計上漏れに気づいた場合がこれにあたります。更正の請求は「税務署に内容を審査してもらい、認められれば」税額が減額される仕組みです。自動的に認められるわけではない点に注意が必要です。
ポイント:「税金が増える方向の修正=修正申告」「税金が減る方向の修正=更正の請求」と覚えましょう。手続きの性質がまったく異なるため、混同しないことが重要です。
02手続き方法と期限を比較する
それぞれの手続きについて、方法・期限・必要書類を整理します。
修正申告の手続き
- 提出書類:修正申告書(確定申告書B等の第一表・第五表)
- 提出先:所轄税務署(e-Taxでの電子提出も可能)
- 期限:法律上の提出期限はなく、いつでも提出できます。ただし、早ければ早いほど延滞税が少なくなります
- 納付:修正申告書の提出と同時に、増加する税額を納付するのが原則です
更正の請求の手続き
- 提出書類:更正の請求書(所定の様式)および事実を証明する書類
- 提出先:所轄税務署(e-Taxでの電子提出も可能)
- 期限:法定申告期限から5年以内。2025年分の所得税であれば、法定申告期限は2026年3月16日のため、2031年3月16日が期限となります
- 還付:税務署が内容を審査し、認められた場合に減額更正が行われ、納めすぎた税金が還付されます。審査には通常1〜3か月程度かかります
03延滞税・加算税はどうなる?ペナルティの仕組み
修正申告の場合は追加の税額が発生するため、ペナルティの税金が課される可能性があります。一方、更正の請求にはペナルティはありません。
修正申告で発生しうるペナルティ
- 延滞税:法定納期限の翌日から実際に納付する日までの期間に応じて課されます。2025年分の所得税であれば、2026年3月17日以降から計算されます。納付が遅れるほど金額が増えるため、ミスに気づいたら速やかに対応することが肝心です
- 過少申告加算税:原則として、増差税額の10%(増差税額のうち期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)が課されます。ただし、税務署から調査の通知を受ける前に自主的に修正申告を行った場合は、原則として過少申告加算税はかかりません
- 重加算税:仮装・隠蔽があった場合は35%と非常に重いペナルティが課されます。故意に売上を除外するような行為は絶対に避けてください
注意:税務調査の事前通知を受けた後、調査が開始される前に自主的に修正申告を行った場合でも、過少申告加算税が軽減税率(5%または10%)で課されることがあります。調査通知が届く前に自ら修正することが、ペナルティを最小限に抑える最善の方法です。
更正の請求の場合
税金が減る方向の訂正であるため、延滞税や加算税は発生しません。期限内であれば安心して手続きを進めていただけます。
04創業期に多い間違いパターン5選
平川文菜税理士事務所でご相談をお受けする中で、創業期の経営者・個人事業主に特に多いミスのパターンをご紹介します。
パターン1:開業費を一括経費にしてしまう
開業前に支出した費用(開業費)は「繰延資産」として計上し、任意償却するのが原則です。全額を初年度の経費にしてしまうと、本来は数年にわたって償却すべきものを一度に計上したことになります。なお、任意償却の場合は全額償却も認められますが、そもそも開業費に該当しない資産(10万円以上の備品など)まで含めてしまっているケースが見受けられます。
パターン2:売上の計上時期を間違える
12月に納品した仕事の入金が翌年1月だった場合、売上は納品した12月に計上するのが原則です。入金ベースで計上してしまい、年度をまたいで売上がずれるケースは非常に多い間違いです。
パターン3:家事按分の計算を誤る
自宅兼事務所の家賃や光熱費について、事業使用割合の根拠が不明確なまま高い割合で経費計上してしまうケースです。たとえば、70平米の自宅のうち事務スペースが10平米であれば約14%が目安ですが、根拠なく50%で計上してしまうと、税務調査で否認される可能性があります。
パターン4:青色申告特別控除の要件を満たしていない
65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記による記帳に加えて、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存の要件を満たす必要があります。これらを満たさない場合は55万円控除(紙提出の場合)または10万円控除となります。要件不備のまま65万円控除を適用してしまうと、修正申告が必要です。
パターン5:消費税の免税事業者なのにインボイス登録してしまい混乱
インボイス制度の導入に伴い、売上1,000万円以下の免税事業者がインボイス発行事業者に登録したものの、消費税の申告義務が生じることを理解していなかったケースです。2割特例の適用可否も含めて、登録前に慎重に検討する必要があります。
05ミスに気づいたときの対応フロー
申告後にミスに気づいた場合は、以下の流れで対応しましょう。
- ミスの内容を正確に把握する:どの項目が、いくら間違っているのかを確認します
- 正しい税額を再計算する:修正後の所得・税額を計算し、当初申告との差額を算出します
- 税額が増えるか減るかを判定する:増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求です
- 必要書類を準備して提出する:修正申告書または更正の請求書を作成し、税務署に提出します
- 追加の税額がある場合は速やかに納付する:延滞税を最小限にするため、修正申告書の提出と同日に納付するのが理想です
自分だけで判断が難しい場合は、早い段階で税理士に相談することをおすすめします。特に税額が増えるケースでは、対応が遅れるほどペナルティが大きくなるため、スピードが重要です。
- 税額が増える場合は「修正申告」、税額が減る場合は「更正の請求」と手続きが異なる
- 修正申告には期限がないが、遅れるほど延滞税が増える。税務調査前の自主的な修正であれば過少申告加算税は原則不要
- 更正の請求は法定申告期限から5年以内に行う必要がある。税務署の審査を経て還付が行われる
- 創業期は売上の計上時期・開業費の処理・家事按分の計算など、間違いやすいポイントが多い
- ミスに気づいたら、内容を正確に把握し、速やかに正しい手続きを行うことが最も重要
