「確定申告が終わった!もう書類は捨てていいよね?」──そんなふうに思ったことはありませんか?毎年の確定申告は大変な作業ですから、終わった瞬間にすべてを忘れたくなる気持ちはよく分かります。しかし、申告書の控えや帳簿、領収書などを安易に処分してしまうと、税務調査への対応はもちろん、融資の審査や法人化の検討など、将来の大切な場面で「あのデータがあれば…」と後悔することになりかねません。
特に創業期の申告データは、事業の成長過程を示す経営の資産そのものです。本記事では、保管義務のある書類と期間の一覧、電子帳簿保存法への対応ポイント、そして過去の申告データを経営判断に活かす具体的な方法を分かりやすく解説します。
1. なぜ確定申告後の書類保管が重要なのか
1-1. 税務調査は「過去」にさかのぼる
税務調査は、通常過去3〜5年分、悪質な場合には最大7年分までさかのぼって行われます。調査時に帳簿や領収書が提出できなければ、経費が否認され、追徴課税や加算税が発生するリスクがあります。「もう申告は終わったから大丈夫」ではなく、申告が終わったあとこそ書類が必要になる場面がやってくるのです。
1-2. 融資審査・法人化で過去データが求められる
日本政策金融公庫の創業融資や民間銀行の事業融資では、直近2〜3期分の確定申告書の控えの提出を求められるのが一般的です。また、個人事業から法人化を検討する際にも、過去の売上推移や利益率などの数字が不可欠です。創業期のデータを残していないと、これらの判断を「勘」に頼らざるを得なくなってしまいます。
2. 保管義務のある書類と保管期間の一覧
所得税法・法人税法で定められている主な保管義務は以下のとおりです。
2-1. 個人事業主の場合
- 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など):7年間
- 決算関係書類(損益計算書・貸借対照表など):7年間
- 領収書・請求書・納品書等:5年間(※前々年の所得が300万円超の場合は7年間)
- 確定申告書の控え:法律上の保管義務は明記されていませんが、最低でも7年間の保管を強く推奨します
2-2. 法人の場合
- 帳簿・決算関係書類:原則7年間(欠損金の繰越控除を利用する場合は10年間)
- 領収書・請求書・契約書等:7年間
- 確定申告書の控え:法人も同様に7年以上の保管を推奨
起算日は「確定申告の提出期限の翌日」です。たとえば、2024年分の所得税の確定申告であれば、2025年3月16日から起算して7年後の2032年3月15日までが保管期間の目安となります。
2-3. 保管期間早見表
以下にまとめますので、ぜひブックマークしてご活用ください。
- 帳簿類 → 7年(法人で欠損金繰越ありなら10年)
- 決算書類 → 7年
- 領収書・請求書 → 5年〜7年(個人)/7年(法人)
- 申告書控え → 7年以上を推奨
- 契約書・届出書の控え → 永久保管を推奨
3. 電子帳簿保存法への対応ポイント
3-1. 2024年1月から電子取引データの保存が完全義務化
2024年1月1日以降、メールやクラウドサービスで受領した請求書・領収書等の電子データは、紙に印刷して保管するだけでは不十分です。電子データのまま、一定の要件を満たした方法で保存する必要があります。
3-2. 最低限押さえるべき3つの要件
- ①検索機能の確保:取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようにする(前々年の売上高が5,000万円以下の場合、ダウンロードの求めに応じられれば検索要件は不要)
- ②改ざん防止措置:タイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムの利用、または事務処理規程の備え付けのいずれかを実施
- ③見読可能性の確保:ディスプレイやプリンターで速やかに確認・出力できる状態にしておく
3-3. 創業期におすすめの対応方法
大掛かりなシステム導入が難しい創業期には、以下のシンプルな方法が現実的です。
- 電子取引データを「年度別」「取引先別」のフォルダに整理して保存
- ファイル名を「20250315_〇〇株式会社_55000」のように日付・取引先・金額を含めて命名
- 事務処理規程(国税庁のひな型を活用可)を作成・備え付ける
クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)を利用している場合は、ソフト側で要件を満たせる機能が搭載されていることも多いので、設定を確認しておきましょう。
4. 過去の申告データを経営に活かす3つの方法
4-1. 融資申請での「信用力の証明」
金融機関は数字で事業の実力を判断します。過去3期分の確定申告書控え・青色申告決算書を提出できれば、売上の成長率や利益率の推移を具体的に示すことができ、融資審査を有利に進められます。逆に、控えを紛失していると税務署で「保有個人情報の開示請求」などの手続きが必要になり、時間と手間がかかります。
4-2. 法人化シミュレーションの精度向上
「法人化した方が節税になるのでは?」と検討する際、最低でも直近2〜3年の所得金額・経費内訳・社会保険料のデータが必要です。たとえば、課税所得が継続的に500万円〜700万円を超えてくると、法人化による税率差のメリットが出始める目安と言われています。過去データがあれば、税理士がより正確なシミュレーションを行うことができます。
4-3. 経営改善のための「数字で振り返る」習慣
過去の申告データは、いわば事業の「健康診断記録」です。年ごとの売上総利益率や経費率の変動を比較することで、「なぜこの年は利益率が下がったのか」「どの経費が増えているのか」といった分析が可能になります。創業1〜3年目のデータを丁寧に蓄積しておくことが、将来の経営改善に大きく貢献します。
5. まとめ:書類とデータは「未来への投資」
- 帳簿・領収書は最低5〜7年、法人の欠損金繰越がある場合は10年の保管が必要
- 確定申告書の控えは法定義務にかかわらず7年以上の保管を推奨
- 電子取引データは電子のまま保存が原則。ファイル命名ルールと事務処理規程で対応可能
- 過去の申告データは融資・法人化・経営改善の重要な判断材料になる
確定申告は「終わったら終わり」ではありません。保管した書類やデータが、融資の成功、法人化のタイミング判断、経営の見直しなど、未来の経営を支える力になります。創業期だからこそ、今のうちに正しい保管ルールを身につけておきましょう。
「保管方法がこれで合っているか不安」「過去のデータを使って法人化や融資の相談をしたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。平川文菜税理士事務所では、創業期の経営者さまに寄り添ったサポートを行っています。
