「売上は少しずつ伸びているのに、なぜか手元にお金が残らない」「月末の支払いが近づくたびに胃が痛くなる」――創業間もないスタートアップ経営者の方から、こうしたご相談をいただくことが本当に多くあります。

実は、創業から3年以内に廃業する企業の多くは、赤字ではなく「資金ショート」が原因だと言われています。中小企業庁の調査でも、小規模事業者が経営上の課題として最も多く挙げるのが「資金繰り」です。つまり、利益が出ていても、キャッシュの流れを管理できなければ事業は続けられないのです。

本記事では、税理士の視点から今日から実践できる資金繰り改善策を5つ厳選してお伝えします。2026年度に活用できる補助金・融資制度の最新情報もあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

ポイント1:キャッシュフローを「見える化」する

資金繰り改善の第一歩は、お金の流れを正確に把握することです。感覚で「なんとなく大丈夫」と思っていると、突然の出費や入金遅れで一気に苦しくなるケースが少なくありません。

資金繰り表を作成しよう

まずは「資金繰り表」を作成しましょう。資金繰り表とは、月ごと(できれば週ごと)の入金予定と出金予定を一覧にまとめたものです。エクセルやGoogleスプレッドシートで十分作成できます。

  • 入金欄:売上入金、補助金・助成金の入金、借入金の入金など
  • 出金欄:仕入代金、人件費、家賃、税金・社会保険料、借入返済など
  • 差引残高:月初残高+入金合計-出金合計=月末残高

この表を最低3か月先まで作成することで、「来月末に資金が不足しそうだ」といった危険信号を早期に察知できます。実際に、当事務所のお客様でも資金繰り表の導入後、資金ショートのリスクを2か月前に発見し、事前に融資の手続きを進められたケースがあります。

ポイント2:入金サイクルを短くする

売上が立っていても、入金までの期間が長ければ手元資金は不足します。「勘定合って銭足らず」という状態を防ぐために、入金サイクルの見直しは非常に重要です。

具体的な改善策

  • 請求書の発行を早める:月末締め・翌月末払いの取引先に対し、納品後すぐに請求書を発行する仕組みを整えましょう。クラウド請求書サービスを活用すれば、発行から送付まで即日対応が可能です。
  • 支払条件の交渉:新規取引先との契約時に「末締め・翌月15日払い」など、できるだけ短い支払いサイトを設定しましょう。既存取引先にも、取引実績を背景に条件変更を相談する価値はあります。
  • 前受金・着手金の導入:サービス業やコンサルティング業の場合、契約時に着手金として代金の30〜50%を受領する方法も有効です。

たとえば、支払いサイトを「翌々月末払い(約60日)」から「翌月末払い(約30日)」に短縮できれば、月商300万円の企業であれば常時300万円分のキャッシュが早く手元に入る計算になります。この差は経営の安定感に直結します。

ポイント3:固定費を最適化する

創業期はつい「将来の成長に備えて」と、オフィスや人員を先行投資しがちです。しかし、売上が不安定な時期に固定費が高いと、資金繰りは一気に悪化します。

見直すべき固定費の例

  • オフィス賃料:コワーキングスペースやバーチャルオフィスの活用で、月額数万円〜十数万円の削減が可能です。都内のコワーキングスペースなら月額2〜5万円程度から利用でき、個室オフィスの家賃(月額15〜30万円)と比較すると大幅なコストダウンになります。
  • サブスクリプション費用:使っていないSaaSツールや、重複しているサービスがないか棚卸ししましょう。月額数千円でも、年間にすると数万円〜十数万円の節約になります。
  • 人件費:業務の一部を外注やクラウドソーシングに切り替えることで、社会保険料を含めた人件費を変動費化できます。

固定費の削減は「売上を1円も増やさずにキャッシュフローを改善できる」方法です。月5万円の固定費削減は、利益率10%のビジネスなら月50万円の売上増加と同じ効果があると考えると、その重要性がわかるのではないでしょうか。

ポイント4:税金・社会保険料の支払いに備える

スタートアップ経営者が見落としがちなのが、税金と社会保険料の支払いです。法人税、消費税、源泉所得税、社会保険料など、創業1〜2年目に「こんなに払うの?」と驚かれる方が非常に多くいらっしゃいます。

事前に備えるコツ

  • 納税用の別口座を用意する:売上入金口座とは別に、税金・社会保険料の支払い用口座を開設し、毎月売上の15〜20%程度を積み立てておくと安心です。
  • 消費税の納税タイミングを把握する:2023年10月のインボイス制度導入以降、課税事業者を選択したスタートアップも増えています。消費税の納税資金を売上と一緒に使ってしまわないよう注意しましょう。
  • 予定納税・中間申告を見越した計画:法人税や消費税には中間申告の制度があります。前期の実績に基づいて中間納付が発生するため、2期目以降は特に計画的な資金準備が必要です。

当事務所では、お客様に年間の納税スケジュール表をお渡しし、「いつ・いくら」の納付が発生するかを事前にお伝えしています。これだけで「突然の出費」を防ぐことができます。

ポイント5:補助金・融資制度を賢く活用する【2026年度最新情報】

資金繰りの改善には、外部からの資金調達も重要な選択肢です。2026年度もスタートアップ向けの支援制度が充実していますので、主なものをご紹介します。

活用を検討したい主な制度

  • 日本政策金融公庫「新規開業資金」:創業期の企業を対象とした低金利の融資制度です。無担保・無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)の借入が可能です(※2025年度時点の制度内容。2026年度は条件が変更される場合がありますので、最新情報をご確認ください)。
  • 小規模事業者持続化補助金:販路開拓にかかる経費の一部を補助してもらえる制度です。補助上限額は通常枠で50万円、特別枠の適用で最大200万円程度まで拡大される場合があります(※公募回ごとに条件が異なります)。
  • IT導入補助金:会計ソフトや受発注システムなどのIT導入費用を補助してもらえます。業務効率化とキャッシュフロー管理の両面で効果的です。
  • 各自治体の創業支援融資・利子補給制度:お住まいの自治体独自の制度も見逃せません。利子の一部を自治体が負担してくれる「利子補給制度」がある地域もあります。

これらの制度は申請に手間がかかるものの、返済不要の補助金や低金利の融資は資金繰りの大きな助けになります。申請書類の作成にはコツが必要ですので、早めに専門家に相談されることをおすすめします。

※上記の制度内容は2025年度時点の情報を基にしています。2026年度の正式な公募要領が公表された際は、必ず最新情報をご確認ください。

まとめ:資金繰り改善は「仕組みづくり」がカギ

今回ご紹介した5つのポイントをまとめます。

  • ポイント1:キャッシュフローを「見える化」する(資金繰り表の作成)
  • ポイント2:入金サイクルを短くする(支払条件の交渉・前受金の活用)
  • ポイント3:固定費を最適化する(オフィス・サブスク・人件費の見直し)
  • ポイント4:税金・社会保険料の支払いに事前に備える
  • ポイント5:補助金・融資制度を賢く活用する

資金繰りの問題は、一つの大きな施策で解決するというよりも、小さな改善を積み重ねて「お金が回る仕組み」を作ることが大切です。そして、その仕組みづくりは早ければ早いほど効果を発揮します。

平川文菜税理士事務所では、スタートアップや小規模事業者の方向けに、資金繰り表の作成サポートや税務顧問サービスをご提供しています。「自社のキャッシュフローを一度プロに見てもらいたい」「補助金の申請について相談したい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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