「売上は伸びてきたのに、手元にお金が残らない…」「税金の支払いが想像以上に大きくて驚いた…」――スタートアップ経営者の方から、こうしたお悩みをよくお聞きします。
事業の立ち上げ期は、営業やプロダクト開発に全力を注ぐあまり、税務対策が後回しになりがちです。しかし、確定申告の時期に「もっと早く知っていれば…」と後悔されるケースは少なくありません。
この記事では、2026年(令和7年分)の確定申告に向けて、スタートアップ経営者が見落としやすい節税ポイントを5つ厳選してお伝えします。個人事業主の方も、小規模法人の経営者の方も、ぜひ最後までお読みください。
ポイント1:青色申告特別控除65万円を「満額」で使い切れていますか?
個人事業主のスタートアップ経営者にとって、まず確認していただきたいのが青色申告特別控除です。最大65万円の控除を受けるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 複式簿記で帳簿を記帳していること
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること
- e-Tax(電子申告)で期限内に申告すること、または電子帳簿保存を行っていること
特に見落としやすいのが3つ目の要件です。e-Taxを利用せず紙で提出した場合、控除額は55万円に下がってしまいます。差額の10万円は、所得税率20%の方なら約2万円、住民税と合わせると約3万円の差になります。「たかが3万円」と思うかもしれませんが、スタートアップの資金繰りでは決して小さくない金額です。
ポイント2:開業費の「任意償却」を活用していますか?
スタートアップならではの節税ポイントが、開業費の任意償却です。開業前にかかったセミナー参加費、名刺・Webサイトの制作費、打ち合わせの交通費などは「開業費」として繰延資産に計上できます。
開業費の大きなメリットは、償却時期と金額を自由に決められる点です。利益が少ない年は償却せずに据え置き、利益が大きく出た年にまとめて経費化することで、所得の波を平準化できます。
たとえば、開業前に合計80万円の支出があった場合、初年度に利益がほとんど出なければ償却を見送り、2年目・3年目に売上が伸びたタイミングで一括または分割で経費にできます。開業初期の数年間は業績の波が大きいスタートアップにとって、非常に有効な手法です。
注意点
開業費として認められるのは、あくまで「開業準備のために直接かかった費用」です。プライベートとの区別が曖昧な支出は税務調査で否認されるリスクがあるため、領収書や支出の目的を記録しておくことが大切です。
ポイント3:小規模企業共済の掛金は「全額所得控除」
意外と加入していない方が多いのが小規模企業共済です。個人事業主や小規模法人の役員が加入でき、月額1,000円〜70,000円の範囲で掛金を設定できます。
この掛金は全額が所得控除の対象となり、節税効果は非常に大きいです。たとえば、月額7万円(年間84万円)の掛金を支払った場合、課税所得が600万円の方なら、所得税・住民税を合わせて年間約25万円の節税になります。
- 掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)
- 受取時は退職所得控除または公的年金等控除が使える
- 事業資金の貸付制度もあり、いざというときの資金調達手段にもなる
「将来の退職金を積み立てながら、今の税金を減らせる」という一石二鳥の制度です。まだ加入されていない方は、ぜひ検討してみてください。
ポイント4:経営セーフティ共済(倒産防止共済)の活用
法人のスタートアップ経営者に特におすすめしたいのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。取引先の倒産に備える共済制度ですが、節税面でも大きなメリットがあります。
掛金は月額5,000円〜200,000円で、全額を損金(法人)または必要経費(個人)に算入できます。年間最大240万円、累計上限800万円まで積み立てが可能です。
ただし、2024年10月以降の税制改正により、解約後2年以内に再加入した場合、再加入後の掛金を損金算入できなくなりました。「解約→再加入」を繰り返す節税スキームは封じられていますので、長期的な視点で加入を検討しましょう。
加入要件に注意
経営セーフティ共済に加入するには、1年以上の事業実績が必要です。設立直後は加入できませんので、要件を満たしたら早めに手続きされることをおすすめします。
ポイント5:少額減価償却資産の特例(30万円未満の即時償却)
スタートアップの成長過程では、パソコン、ソフトウェア、オフィス家具など、さまざまな設備投資が発生します。青色申告を行っている中小企業者等であれば、取得価額30万円未満の減価償却資産を、その年に全額経費として計上できる特例があります。
- 1件あたりの取得価額が30万円未満であること(税込経理の場合は税込金額で判定)
- 年間の合計額が300万円まで(事業年度が12か月の場合)
- 青色申告をしていることが要件
たとえば、28万円のパソコンを3台購入した場合、通常の減価償却では4年間に分けて経費化しますが、この特例を使えば合計84万円を購入した年に一括経費にできます。利益が出ている年に計画的な設備投資を行うことで、効果的な節税が可能です。
この特例は令和8年(2026年)3月31日まで延長されています。期限が近づくと再延長されることも多い制度ですが、適用期限には注意しておきましょう。
まとめ:節税の第一歩は「知ること」から
今回ご紹介した5つのポイントをまとめます。
- 青色申告特別控除65万円…e-Tax申告で満額適用を確保
- 開業費の任意償却…利益が出た年にまとめて経費化
- 小規模企業共済…掛金全額が所得控除、将来の退職金にもなる
- 経営セーフティ共済…全額損金算入で最大年240万円の節税効果
- 少額減価償却資産の特例…30万円未満の資産を即時償却
これらの制度は、知っているかどうかで税負担が大きく変わります。特にスタートアップの成長フェーズでは、「いつ」「どの制度を」「どれくらいの金額で」活用するかというタイミングの判断が重要です。
「自分のケースではどうすればいいのか分からない」「そもそも何から手をつければよいか迷っている」という方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
平川文菜税理士事務所では、スタートアップ・個人事業主の方の確定申告や節税対策のご相談を承っております。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
