「創業1年目はがむしゃらに走ってきたけれど、2年目に入って急に不安になってきた」——そんなお声を、平川文菜税理士事務所にはたくさんいただきます。売上はあるのに手元にお金が残らない。忙しいのに利益が出ている実感がない。帳簿はつけているけれど、正直どこを見ればいいかわからない。もし一つでも当てはまるなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
創業1年目は「とにかくやってみる」という勢いが大きな武器になります。しかし2年目以降は、数字に基づいた経営判断ができるかどうかで、事業の安定性が大きく変わってきます。本記事では、数字が苦手な方でも明日から経営に活かせるよう、試算表や損益計算書の「見るべきポイント」と、利益率・損益分岐点・限界利益という3つの基本指標をやさしく解説します。
なぜ「創業2年目」に壁を感じるのか
中小企業庁の統計によると、創業から5年以内に廃業する企業は約2割にのぼります。特に2年目は、創業時の資金が底をつき始め、補助金や融資の据置期間が終了するタイミングと重なることが多いのです。
- 創業時の運転資金が減少し、キャッシュフローが厳しくなる
- 1年目の確定申告・決算で初めて「思ったより利益が出ていない」と気づく
- 売上は伸びていても、経費の増加ペースが把握できていない
- 日本政策金融公庫などの融資返済が本格的に始まる
こうした状況を乗り越えるカギが、「数字を読む力」です。難しい会計知識は必要ありません。まずは3つのポイントを押さえるだけで、経営の見え方が大きく変わります。
まずはここを見よう!損益計算書の3つのチェックポイント
損益計算書(P/L)は、一定期間の「儲け」を示す書類です。会計ソフトで出力される試算表にも同じ情報が含まれています。見るべきポイントを3つに絞りましょう。
チェックポイント①:売上総利益(粗利)
売上総利益とは、売上高から売上原価(仕入や材料費)を引いた金額です。ここがプラスでなければ、売れば売るほど赤字という危険な状態です。
具体例:月商300万円の飲食店で、食材原価が120万円なら、売上総利益は180万円。売上総利益率は60%です。飲食業の一般的な目安は60〜70%と言われていますので、まずはこの水準を維持できているか確認しましょう。
チェックポイント②:営業利益
売上総利益から人件費・家賃・広告費などの「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いたものが営業利益です。これが本業で稼いだ「本当の利益」を表します。
具体例:先ほどの飲食店で、人件費80万円・家賃30万円・その他経費40万円(合計150万円)がかかっていれば、営業利益は180万円−150万円=30万円。営業利益率は10%となります。小規模事業者の場合、営業利益率5〜10%を一つの目安にしてみてください。
チェックポイント③:月次推移で「傾向」を読む
単月の数字だけ見ても経営判断はできません。大切なのは、3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月の推移を並べて「傾向」を読むことです。売上が横ばいなのに経費が右肩上がりなら、早めの対策が必要です。会計ソフトの月次推移表を活用しましょう。
数字が苦手でも使える!3つの基本指標
指標①:利益率——「いくら残るか」を見る
利益率は「売上に対してどれだけ利益が残っているか」を示す割合です。
- 売上総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
- 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
業種によって目安は異なりますが、営業利益率が3%を下回っている場合は、価格設定や経費構造の見直しを検討すべきサインです。
指標②:損益分岐点——「いくら売れば赤字にならないか」を知る
損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになる(利益ゼロの)売上高のことです。計算式は以下の通りです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
具体例:毎月の固定費(家賃・人件費・リース料など)が100万円、変動費率(売上に対する仕入・外注費の割合)が40%の場合——
損益分岐点売上高 = 100万円 ÷(1 − 0.4)= 約167万円
つまり、月に167万円以上売り上げないと赤字になるということです。この数字を知っているだけで、「あといくら売ればいいか」が明確になり、営業やマーケティングの目標設定にも使えます。
指標③:限界利益——「1個売るといくら儲かるか」を掴む
限界利益とは、売上高から変動費だけを引いた利益です。固定費を回収する「元手」にあたる部分と考えてください。
限界利益 = 売上高 − 変動費
具体例:1個5,000円の商品で、仕入原価が2,000円なら、限界利益は3,000円。この商品を何個売れば固定費をまかなえるかを逆算すれば、具体的な販売目標が立てられます。固定費が月90万円なら、90万円÷3,000円=300個が損益分岐点の販売数です。
明日から始められる3つのアクション
ここまで読んで「なるほど」と思っていただけたら、ぜひ以下の3つを今週中に試してみてください。
- アクション①:会計ソフトで直近6ヶ月の月次推移表を出力し、売上総利益率と営業利益率を計算する
- アクション②:固定費と変動費をざっくり分けて、損益分岐点売上高を計算する
- アクション③:主力商品・サービスの限界利益を算出し、月間の販売目標を具体的な数字で設定する
最初は「ざっくり」で構いません。完璧に分類しなくても、大まかな傾向をつかむだけで経営判断の質は格段に上がります。
まとめ:数字は経営の「健康診断」
創業2年目の壁は、多くの経営者が経験するものです。大切なのは、壁にぶつかったときに「感覚」ではなく「数字」で現状を把握できるかどうか。損益計算書の粗利と営業利益をチェックし、利益率・損益分岐点・限界利益という3つの指標を使えば、数字が苦手な方でも経営の健康状態を診断できます。
とはいえ、「自分の事業の場合、どの数字をどう改善すればいいの?」という疑問は、業種や事業規模によって答えが異なります。平川文菜税理士事務所では、創業期・成長期の小規模事業者さまに寄り添い、数字の読み方から経営改善のご提案まで一緒に考えるサポートを行っています。
「数字のことを気軽に相談できる専門家がほしい」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。
