「年末に届いた封筒の中身が何なのか分からない」「法定調書って何を出せばいいの?」——創業1年目・2年目の経営者から毎年寄せられるご相談です。法定調書合計表と支払調書は、提出期限が2027年2月1日(2027年1月31日が日曜日のため翌営業日)。年末のうちに準備を始めれば十分間に合います。本記事では、対象範囲の判定から集計方法、e-Tax提出までを一気通貫で解説します。
01法定調書合計表・支払調書とは何か
法定調書とは、所得税法・相続税法などの規定により税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。全部で約60種類ありますが、創業期の小規模法人・個人事業主が関わるのは主に以下の6種類です。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
これらを一覧にまとめたものが「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」です。税務署から届く用紙(またはe-Taxの画面)に、各調書の合計人数・合計金額を記入して提出します。
02提出が必要かどうかの判定フロー
報酬・料金の支払調書の対象判定
創業期に最も多いのが、外注先やフリーランスへの報酬支払いに関する支払調書です。所得税法第204条に定められた報酬・料金に該当し、かつ同一人に対する年間支払額が5万円を超える場合に提出義務が生じます。具体的には次のような支払いが該当します。
- 税理士・弁護士・司法書士・社会保険労務士への報酬
- デザイナー・ライター・カメラマンなどへの原稿料・デザイン料
- 講演料・コンサルティングフィー
ただし、司法書士への報酬は年間支払額が15万円超の場合に提出義務となる点に注意してください。
不動産の使用料等の支払調書の対象判定
オフィスや店舗の家賃を支払っている場合、同一の支払先に対する年間支払額が15万円を超えると提出義務が発生します。ただし、支払先が法人の場合は権利金・更新料等の支払いがなければ提出不要です。個人の大家さんに家賃を払っている場合は要注意です。
ポイント:「提出義務の金額基準」と「源泉徴収義務の有無」は別の論点です。支払調書の提出義務がない少額の支払いでも、源泉徴収は必要なケースがあります。逆に、支払調書を提出するからといって必ず源泉徴収が必要とは限りません。混同しやすいので分けて考えましょう。
03年末からの逆算スケジュール
2026年分の法定調書の提出期限は2027年1月31日(日曜日)のため、翌営業日の2027年2月1日(月曜日)です。以下のスケジュールで動けば無理なく間に合います。
- 2026年11月中旬:外注先・士業・大家さんなど支払先のリストを作成し、支払金額の仮集計を行う
- 2026年12月上旬:マイナンバー(個人番号)・法人番号を未取得の支払先から収集開始
- 2026年12月末:年間の最終支払いを確定し、源泉徴収税額を含めた集計を完了
- 2027年1月上旬:支払調書・合計表の下書きを作成し、内容をチェック
- 2027年1月中旬~下旬:e-Taxまたは書面で税務署に提出。支払先への調書交付もこの時期に
04支払データの集計方法と注意点
集計の基本ルール
支払調書に記載する金額は、2026年1月1日から12月31日までに実際に支払った金額(支払確定日ベースではなく支払日ベース)です。12月末に届いた請求書でも、実際の振込が2027年1月であれば2027年分として翌年の調書に計上します。
よくある集計ミス3選
創業期の経営者が特に間違えやすいポイントを具体例で見ていきましょう。
ミス1:源泉徴収税額の含め忘れ
たとえば税理士に月額報酬55,000円(税込)を支払い、源泉所得税5,105円を差し引いて49,895円を振り込んでいる場合、支払調書の「支払金額」欄には55,000円(税込の総額)を記載し、「源泉徴収税額」欄には5,105円×12か月=61,260円を記載します。振込額の49,895円×12か月で集計してしまうミスが非常に多いです。
ミス2:消費税込み/抜きの混同
支払調書の支払金額は原則として消費税込みの金額を記載しますが、請求書等で報酬と消費税が明確に区分されている場合は、消費税抜きの金額で記載することも認められています。どちらの方法で記載するかを統一し、提出基準(5万円超など)の判定も同じ基準で行いましょう。
ミス3:法人への支払いを全て対象と思い込む
報酬・料金の支払調書は、支払先が法人であっても提出が必要です(弁護士法人・税理士法人への報酬なども含む)。一方、不動産の使用料等の支払調書は、支払先が法人の場合で権利金・更新料等がなければ提出不要です。調書の種類によってルールが異なります。
05マイナンバーの取得タイミングと注意点
支払調書にはマイナンバー(個人番号)または法人番号の記載が必要です。法人番号は国税庁の法人番号公表サイトで誰でも検索できますが、個人のマイナンバーは本人から直接提供を受ける必要があります。
取得時には本人確認(番号確認+身元確認)が必要で、郵送の場合はマイナンバーカードの写し等を送ってもらう手間がかかります。年末の繁忙期は返送が遅れがちですので、11月中には依頼を始めることをおすすめします。
注意:マイナンバーの取り扱いには安全管理措置が求められます。メールやチャットでの平文送信は避け、書留郵便や暗号化されたファイルで受け取りましょう。取得したマイナンバーは施錠できる場所に保管し、利用目的の範囲外での使用は法律で禁止されています。
06e-Taxでの提出手順
前々年の提出枚数が100枚以上の場合はe-Tax等による電子提出が義務ですが、創業期であれば書面提出も可能です。とはいえ、e-Taxでの提出は自宅やオフィスから完結でき、控えも電子で保管できるためおすすめです。
- e-Taxの利用者識別番号を取得(開業届提出時に取得済みの方が多い)
- e-Taxソフト(WEB版またはダウンロード版)にログイン
- 「法定調書」メニューから各支払調書を作成・入力
- 合計表が自動集計されるので内容を確認
- 電子署名を付与して送信
なお、提出枚数が少ない場合は国税庁ホームページの「法定調書の作成・提出についてのご案内」ページからPDFをダウンロードし、手書きで作成して税務署に郵送・持参することも可能です。
07提出後に忘れがちなこと
税務署への提出とあわせて、支払先への調書の交付も忘れずに行いましょう。支払調書の交付は法律上の義務ではありませんが、支払先が確定申告で使用するため、慣行として交付するのが一般的です。特にフリーランスの外注先からは「支払調書を送ってほしい」と依頼されることが多いので、1月中に郵送またはPDFで交付できるよう準備しておきましょう。
- 法定調書合計表の提出期限は2027年2月1日(1月31日が日曜のため)。11月から支払先リストの整理を始めると安心
- 報酬・料金の支払調書は年間5万円超(司法書士は15万円超)、不動産使用料は15万円超で提出義務が発生
- 支払金額は源泉徴収税額を差し引く前の総額を記載する。消費税の処理は請求書の記載方法に応じて統一する
- マイナンバーの取得は11月中に依頼を開始し、安全管理措置を講じて保管する
- e-Taxを使えば自宅・オフィスから提出が完結。創業期は書面提出も可能だが電子提出がおすすめ
