「気づけば毎月、使っていないサービスに課金され続けている……」「創業時に契約したツール、今の事業に本当に必要だろうか?」――そんなモヤモヤを感じながらも、日々の業務に追われて後回しにしていませんか。

年度末の3月は、こうした惰性で続いている契約やサブスクリプションを見直す絶好のタイミングです。創業初期は「まずは始めること」が最優先で、勢いのままにさまざまなサービスを契約しがちです。しかし、事業フェーズが変わった今、それらすべてが本当に必要とは限りません。

本記事では、平川文菜税理士事務所が日頃の顧問先サポートで実践している「契約・サブスク・固定費の棚卸し」の方法を、具体的な手順と判断基準、見直し後の経理処理まで含めて解説します。翌期の利益率を1%でも改善したい方は、ぜひ最後までお読みください。

なぜ「3月」に棚卸しをするべきなのか

日本の多くの法人は3月決算、個人事業主は12月決算ですが、いずれにしても年度の切り替わりは事業計画を見直すタイミングです。特に3月は以下の理由で棚卸しに最適です。

  • 年間契約の更新月が集中しやすい:4月始まりの年間契約は3月末が更新判断の期限になることが多い
  • 翌期の予算策定に間に合う:4月からの新年度に向けて、固定費を見直した数字で予算を組める
  • 補助金・助成金の申請前に整理できる:新年度に各種支援策を活用する場合、現状の経費構造が明確だと申請書も作りやすい

ある顧問先のスタートアップ(従業員3名・年商約2,000万円)では、3月に棚卸しを実施した結果、月額約4万8,000円・年間で約57万円の固定費削減に成功しました。売上に対する固定費率が約3%改善し、その分を広告費に再投資できたケースです。

ステップ1:契約一覧表をつくる

まず最初にやるべきことは、現在契約中のサービス・取引をすべて「見える化」することです。以下の項目を一覧表にまとめましょう。

一覧表に記載すべき項目

  • サービス名・契約先
  • 月額 or 年額の金額(税込・税抜)
  • 契約開始日
  • 契約期間・更新日・解約期限
  • 支払方法(クレジットカード・口座振替・請求書払い)
  • 利用頻度(毎日/週数回/月数回/ほぼ使っていない)
  • 担当者(誰が主に使っているか)

クレジットカードの明細、会計ソフトの経費データ、メールの受信箱で「請求」「invoice」「ご利用明細」などを検索すると、漏れなくリストアップしやすくなります。

よくある「見落としやすい」固定費

  • 使っていないドメインやサーバーの維持費(月500〜3,000円程度でも年間では大きな額に)
  • 無料トライアルから自動移行した有料プラン
  • 複数人で重複契約しているクラウドツール(例:ZoomとGoogle Meetの両方を有料契約)
  • 創業時に依頼したまま放置している業務委託契約(顧問料・保守費用など)
  • 使用頻度が低い電話回線やFAX回線

ステップ2:「残す・下げる・やめる」の3分類で判断する

一覧表ができたら、各契約を以下の3つに分類します。

A:残す(現状維持)

事業に不可欠で、費用対効果が明確なもの。例えば、毎日使用している会計ソフトや、売上に直結しているECプラットフォームの月額利用料などが該当します。

B:下げる(プラン変更・価格交渉)

必要だが、現在のプランがオーバースペックなもの。たとえば、従業員5名の会社で50アカウント分のライセンスを契約しているケースや、ストレージ容量1TBのプランで実際には100GBしか使っていないケースなどです。プランのダウングレードだけで月額数千円〜数万円の削減が見込めます。

C:やめる(解約)

利用頻度が「月数回以下」で、なくても業務が回るもの。判断に迷ったときは「もしこのサービスが明日なくなったら、どれくらい困るか?」と自問してみてください。「少し不便だが代替手段がある」なら、解約候補です。

実務上の目安として、月額利用料に対して「そのサービスが生み出す売上または削減する人件費」が3倍以上なければ費用対効果が低いと判断するケースが多いです。

ステップ3:解約・変更時の注意点

解約期限と違約金を確認する

年間契約の場合、解約の申し出期限が「更新日の1ヶ月前」「2ヶ月前」などと定められていることがあります。期限を過ぎると自動更新され、さらに1年間解約できないケースもあるため、契約書や利用規約を必ず確認しましょう。

データのバックアップ

クラウドサービスを解約する場合、保存されているデータが削除される可能性があります。解約前にエクスポート機能でデータをダウンロードしておくことが重要です。特に顧客情報や取引履歴は、税務調査の際に必要になることがあるため、最低7年間は保存しておきましょう。

業務委託契約の解約は書面で

口頭やチャットでの「来月からお願いしません」は、後々トラブルの原因になります。契約書に定められた解約手続きに従い、書面(メールでも可)で解約の意思を伝え、双方で合意した記録を残すようにしてください。

ステップ4:見直し後の経理処理

契約を見直した後は、経理面での対応も忘れずに行いましょう。

  • 前払費用の精算:年額で前払いしているサービスを途中解約した場合、未経過分の返金があれば「雑収入」や「前払費用の戻し」として処理します。
  • 勘定科目の整理:複数のサブスクを統合した場合、翌期から勘定科目や補助科目を整理し、月次の推移が前期と比較しやすいようにしておきましょう。
  • クレジットカードの登録情報の削除:解約したはずのサービスが引き続き課金されるケースがあります。解約手続きに加え、決済手段側でも登録を解除しておくと安心です。
  • 固定費削減額を記録する:「月額いくら削減できたか」を数字で記録しておくと、翌期の予算管理に役立ちますし、経営判断の振り返りにも使えます。

【参考】棚卸しチェックリスト

最後に、今すぐ使えるチェックリストをまとめます。3月中に以下をすべて完了させましょう。

  • ☐ クレジットカード明細・会計データから契約一覧表を作成した
  • ☐ 各契約を「残す・下げる・やめる」に分類した
  • ☐ 解約期限・違約金の有無を確認した
  • ☐ 解約するサービスのデータをバックアップした
  • ☐ 業務委託の解約は書面で通知した
  • ☐ プラン変更・解約の手続きを完了した
  • ☐ クレジットカードの登録情報を削除した
  • ☐ 経理処理(前払費用の精算・勘定科目の整理)を行った
  • ☐ 削減できた金額を記録し、翌期の予算に反映した

まとめ

創業期の経営者にとって、固定費の棚卸しは「守りの経営」の基本です。年間数十万円の削減は、売上を同額伸ばすよりも確実に利益を押し上げます。

ポイントを振り返ります。

  • 3月は年間契約の更新が集中するため、棚卸しに最適な時期
  • すべての契約を一覧化し「残す・下げる・やめる」の3分類で判断
  • 解約期限・データバックアップ・書面通知の3点を忘れずに
  • 見直し後の経理処理まで完了させて初めて「棚卸し完了」

「うちの固定費、もう少し削れるかも?」「どの経費がどの勘定科目に該当するかわからない」――そんなときは、お気軽にご相談ください。平川文菜税理士事務所では、創業期の経営者に寄り添い、経費の見直しから経理体制の構築までトータルでサポートしています。

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