「7月に届いた固定資産税の納付書を見て、思った以上の金額に驚いた」——創業して初めての夏を迎えるスタートアップ経営者や個人事業主の方から、こうした声をよくいただきます。自宅兼事務所や店舗など事業用不動産を所有している場合、固定資産税・都市計画税は年間で数十万円に及ぶことも珍しくありません。しかも第2期以降の納付書が集中するのがまさにこの7月〜9月。売上が安定しない創業期ほど、この「忘れがちな税金」が資金繰りを圧迫します。本記事では、2026年度の納付スケジュールを踏まえたキャッシュフロー計画への組み込み方と、事業用・個人用の按分処理の実務ポイントを整理します。

01固定資産税・都市計画税の基本と2026年度の納付スケジュール

固定資産税・都市計画税とは

固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・家屋・償却資産を所有している人に課される市区町村税です。都市計画税は市街化区域内の土地・家屋に対して上乗せで課税されます。税率は固定資産税が標準税率1.4%、都市計画税が制限税率0.3%(自治体により異なります)。仮に固定資産税評価額が2,000万円の自宅兼事務所であれば、住宅用地の特例適用後でも年間で20万円前後の負担になるケースがあります。

2026年度の一般的な納付スケジュール(東京23区の場合)

固定資産税・都市計画税は原則として年4回に分けて納付します。東京23区を例にとると、2026年度のおおよその納期限は以下のとおりです。

  • 第1期:2026年6月末
  • 第2期:2026年9月末
  • 第3期:2026年12月末
  • 第4期:2027年2月末

自治体によって納期限は異なりますが、多くの場合4月〜6月に第1期の納税通知書が届き、第2期以降の納付書もまとめて同封されています。7月〜9月はちょうど第2期の納付時期にあたり、第1期を払い終えたばかりのタイミングで再び資金が出ていくため、創業期の資金繰りに影響しやすいのです。

ポイント:納税通知書は4月〜6月に届きますが、届いた時点で年間の税額が確定しています。届いたらすぐに年間総額を確認し、キャッシュフロー表の該当月に金額を記入しておきましょう。「届いてから考える」では遅く、資金ショートの原因になります。

02事業用と個人用の按分計算——根拠づくりが最大のポイント

按分が必要になるケース

自宅兼事務所や自宅兼店舗のように、プライベートと事業の両方で使用している不動産の固定資産税は、事業使用割合に応じた按分が必要です。個人事業主の場合、按分した事業使用分のみが必要経費になります。

按分割合の算出方法

按分割合の算出には、主に以下の方法が用いられます。

  1. 面積按分:建物全体の床面積に対する事業専用スペースの割合で算出。最も一般的で、税務署への説明もしやすい方法です。
  2. 時間按分:1日のうち事業に使用している時間の割合で算出。フリーランスなど事業専用スペースを確保しにくい場合に補完的に使います。
  3. 面積×時間の複合按分:共用部分(リビングなど)を時間按分で加味する方法。実態に即した計算が可能です。

按分根拠の残し方

税務調査で問われるのは「なぜその割合なのか」という根拠です。以下の資料を整備しておくことをおすすめします。

  • 間取り図に事業使用エリアを色分けした図面(手書きでも可)
  • 各部屋の面積と事業使用・私用の区分を記載した一覧表
  • 時間按分を使う場合は、日常的な業務時間の記録

たとえば、延床面積80平米のマンションで事業専用の書斎が16平米であれば、面積按分は20%です。年間の固定資産税・都市計画税が18万円なら、事業経費にできるのは3万6,000円となります。

03法人名義と個人名義で異なる経費処理のルール

個人事業主の場合

個人名義の不動産にかかる固定資産税は、事業使用割合に応じて按分した金額を「租税公課」として必要経費に算入します。按分割合は前述の面積按分等で合理的に計算し、毎年一貫した方法で処理することが重要です。

小規模法人の場合

法人名義の不動産にかかる固定資産税・都市計画税は、全額が法人の損金(経費)になります。法人所有であれば按分の問題は原則として生じません。

一方、代表者個人が所有する不動産を法人の事務所として使用しているケースでは、法人が個人に「賃料」を支払い、個人側で不動産所得として固定資産税を経費計上するのが一般的な処理です。この場合、賃料設定が相場とかけ離れていると税務上の問題が生じるため、近隣相場を参考にした適正賃料の設定が必要です。

注意:代表者個人の不動産を法人に無償で貸している場合、法人側では賃料を経費計上できません。また、個人側でも固定資産税を不動産所得の経費にできるかどうかは収入との対応関係によります。「なんとなく無償で貸している」という状態は税務上不利になりやすいため、早めに賃貸借契約を整備しましょう。

04キャッシュフロー計画への組み込み方——3つのステップ

固定資産税・都市計画税を資金繰りに織り込むための具体的な手順を紹介します。

ステップ1:年間税額を確認し月別に配分する

納税通知書が届いたら、まず年間の税額総額と各期の納付額を確認します。2026年度であれば、6月・9月・12月・翌2月の4回に分けて支払うことになりますので、キャッシュフロー表の該当月にそれぞれの金額を入力します。

ステップ2:「納税準備預金」または積立で毎月資金を確保する

年間税額を12で割った金額を毎月別口座に積み立てておくと、納付月に慌てません。たとえば年間18万円なら月1万5,000円です。金融機関の「納税準備預金」を活用すれば、利息が非課税になるメリットもあります。

ステップ3:翌年度の税額を予測して早めに反映する

固定資産税は3年ごとの評価替えで変動します。直近の評価替えは2024年度でしたので、次回は2027年度です。新たに不動産を取得した場合や増改築した場合は翌年度から税額が変わりますので、取得時点で概算を見積もり、翌期のキャッシュフロー計画に反映しておきましょう。

05創業期に見落としやすい固定資産税の注意点

償却資産税の申告漏れに注意

土地・家屋以外にも、事業用の機械装置・器具備品・構築物などの「償却資産」には固定資産税(償却資産税)が課税されます。毎年1月31日までに市区町村へ申告が必要ですが、創業初年度は存在自体を知らずに申告漏れになるケースが少なくありません。パソコン、エアコン、看板、内装工事なども対象になり得ますので、該当する資産がないか確認しましょう。ただし、課税標準額の合計が150万円未満であれば免税点以下として課税されません。

一括納付と分割納付の選択

自治体によっては全期一括で納付できる場合があります。一括納付による割引制度はありませんが、「払い忘れを防ぎたい」「資金に余裕がある」という場合は一括納付も選択肢です。一方、資金繰りを重視するなら分割納付で手元資金を温存するほうが合理的です。

この記事のまとめ
  • 固定資産税・都市計画税は年4回の分割納付。2026年度は6月・9月・12月・翌2月が納期限の目安(自治体により異なる)
  • 自宅兼事務所の按分は面積按分が基本。間取り図と面積一覧を根拠資料として保管する
  • 個人名義の不動産を法人で使う場合は賃貸借契約を整備し、適正賃料を設定する
  • 年間税額÷12の金額を毎月積み立てておくと、納付月の資金繰りが安定する
  • 償却資産税の申告漏れにも注意。事業用のパソコンや内装工事なども対象になり得る