「税務署から見慣れない封筒が届いた」「予定納税って何?こんな金額、今は払えない……」——創業して初めての確定申告を終え、ほっとしたのも束の間、2026年6月に届く予定納税の通知書に驚く経営者は少なくありません。前年の所得税額をもとに自動計算されるこの制度は、今期の業績次第では資金繰りに大きな影響を及ぼします。本記事では、通知書の見方から納付スケジュール、減額承認申請の要件と手続きまでを時系列で整理し、資金ショートを未然に防ぐ方法を解説します。

01予定納税とは何か——制度の基本を押さえる

予定納税とは、前年の確定申告で一定額以上の所得税を納めた方に対し、当年の所得税の一部をあらかじめ分割して納付させる制度です。具体的には、前年分の所得税(予定納税基準額)が15万円以上の場合に対象となります。

たとえば、2025年分の確定申告で所得税を40万円納めた個人事業主の方は、2026年に予定納税の対象となる可能性が高いです。この仕組みは国が税収を平準化するためのものですが、納税者側から見ると「まだ稼いでいない利益に対して先に税金を取られる」感覚になりがちです。

予定納税基準額の計算方法

予定納税基準額は、前年の確定申告書に記載された所得税額(復興特別所得税を除く)から源泉徴収税額を差し引いた金額をベースに算出されます。ただし、一時所得や雑所得など臨時的な所得がある場合は調整されることがあります。ポイントは「前年ベース」であるということ。今期の業績がどうであれ、前年の実績で自動的に決まる点に注意が必要です。

022026年6月に届く通知書の読み方

税務署から届く「予定納税額の通知書」は、毎年6月中旬頃に発送されます。2026年の場合も同様に、6月15日前後にお手元に届くと見込まれます。届いたらまず以下の項目を確認してください。

通知書で確認すべき3つの項目

  1. 予定納税基準額:前年の申告内容から算出された年間の基準額。この金額の3分の1ずつが第1期・第2期の納付額になります。
  2. 第1期分の納付額と納期限:2026年7月31日(金)が納期限です。基準額の3分の1が記載されています。
  3. 第2期分の納付額と納期限:2026年11月30日(月)が納期限です。第1期と同額が記載されています。

たとえば予定納税基準額が45万円の場合、第1期・第2期ともに15万円ずつ、合計30万円を年内に納付することになります。残りの15万円分は翌年の確定申告で精算されます。

ポイント:予定納税で納めた金額は、2026年分の確定申告時に差し引かれます。つまり「先払い」であり、二重課税ではありません。業績が下がった場合は確定申告で還付を受けることも可能です。

03資金準備のスケジュール——逆算して備える

予定納税の通知を受けた場合、納付までの期間は決して長くありません。2026年の場合、通知が届くのは6月中旬、第1期の納期限は7月31日ですから、実質的な準備期間は約6週間です。

2026年の予定納税カレンダー

  • 6月中旬:税務署から予定納税額の通知書が届く
  • 7月1日〜7月15日:減額承認申請の提出期限(第1期分)
  • 7月31日(金):第1期分の納期限
  • 11月15日:減額承認申請の提出期限(第2期分のみ減額する場合)
  • 11月30日(月):第2期分の納期限

資金繰りの観点からは、通知が届く前の5月時点で「予定納税があるかもしれない」という前提で準備を始めるのが理想です。前年の確定申告で15万円以上の所得税を納めた記憶がある方は、納付額の概算を事前に把握しておきましょう。

資金準備の具体策

突然の出費に慌てないために、以下のような対策を検討してください。

  • 毎月の売上から一定割合(目安として10〜15%)を納税準備用の口座に積み立てる
  • 予定納税の概算額を資金繰り表に組み込む(第1期:7月、第2期:11月)
  • 振替納税を利用している場合は、口座残高の確認を忘れない

04減額承認申請の判断基準と手続き

予定納税はあくまで前年ベースの計算です。そのため「今期は売上が大幅に減っている」「大きな設備投資をした」「廃業・休業した」といった事情がある場合、減額承認申請を行うことで納付額を減らすことができます。

減額申請を検討すべきケース

  • 2026年の事業収入が前年と比べて明らかに減少している
  • 多額の医療費や災害による損失が見込まれる
  • 事業を縮小・廃業した、または開業初年度の特殊要因で前年の所得が一時的に膨らんでいた
  • 青色申告特別控除額の変更や扶養控除の増加など、所得控除に大きな変動がある

申請の手続き

  1. 申請書の入手:「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署で入手します。
  2. 見積もり計算:2026年分の所得金額・所得控除・税額を6月30日時点の状況で見積もり、申請書に記入します。
  3. 提出期限の厳守:第1期分の減額申請は2026年7月15日(水)まで、第2期分のみの減額申請は2026年11月15日(日、翌営業日に繰り下げの可能性あり)までに所轄税務署へ提出します。
  4. 承認通知の確認:税務署から承認・却下の通知が届きますので、結果を確認のうえ納付額を調整してください。

注意:減額申請は「見積もり」に基づく申請です。申請が認められても、最終的な税額は確定申告で精算されます。過度に減額すると確定申告時にまとまった納付が必要になるため、慎重な見積もりが大切です。また、申請期限を1日でも過ぎると受け付けてもらえません。早めの準備を心がけてください。

05創業期の経営者が特に注意すべきポイント

創業1〜2年目の経営者にとって、予定納税は想定外の出費になりがちです。その理由は明確で、「創業初年度に頑張って稼いだ利益」に基づいて翌年の予定納税が発生するからです。

よくある失敗パターン

創業1年目に売上が好調で所得税を50万円納めたケースを考えてみましょう。翌年、予定納税として第1期・第2期合わせて約33万円の納付を求められます。しかし2年目は設備投資がかさんで手元資金が薄い——このようなケースは珍しくありません。

さらに、所得税だけでなく住民税や個人事業税の納付も同時期に重なります。住民税は6月頃に通知が届き、個人事業税は8月と11月が納期限です。予定納税と合わせると、6月から11月にかけて大きな納税負担が集中します。

対策のまとめ

  • 確定申告が終わった時点で、翌年の予定納税額を概算しておく
  • 月次の資金繰り計画に税金の支払いスケジュールを必ず反映させる
  • 業績の変動が大きい場合は、顧問税理士に減額申請の要否を早めに相談する
  • 振替納税を利用している場合でも、口座残高不足による延滞税のリスクに注意する

06納付方法の選択肢

予定納税の納付方法は複数あります。自分に合った方法を選ぶことで、手続きの手間や資金管理がしやすくなります。

  • 振替納税:事前に届出をしておけば、納期限の約1か月後に口座から自動引落し。納付忘れを防げる反面、残高不足に注意が必要です。
  • ダイレクト納付(e-Tax):e-Taxから即時または指定日に口座振替で納付。オンラインで完結します。
  • クレジットカード納付:国税クレジットカードお支払サイトから納付可能。ポイントが貯まる一方、決済手数料がかかります。
  • コンビニ納付(QRコード):30万円以下であればコンビニで納付可能。手軽さが魅力です。
  • 金融機関・税務署の窓口:納付書を持参して直接納付する従来の方法です。
この記事のまとめ
  • 予定納税は前年の所得税が15万円以上の場合に発生する「所得税の先払い制度」。2026年6月中旬に通知書が届く。
  • 第1期は7月31日、第2期は11月30日が納期限。通知から第1期納付まで約6週間しかないため、早めの資金準備が不可欠。
  • 今期の業績が前年より悪化している場合は、減額承認申請を検討する。第1期分の申請期限は7月15日。
  • 創業期は住民税・個人事業税の支払いも重なるため、年間の納税カレンダーを作成し、月次で資金を積み立てておく。
  • 減額申請は見積もりに基づくため、確定申告での精算を見据えた慎重な判断が求められる。不安な場合は早めに税理士へ相談を。