「決算整理仕訳って、結局なにをすればいいの?」——9月決算を初めて迎える創業期の経営者や、12月決算の中間整理に取りかかる個人事業主の方から、毎年この時期に多くいただくご相談です。日々の取引を記帳するだけでも大変なのに、期末にだけ出てくる特殊な仕訳となると不安が一気に増すのは当然のこと。本記事では、2026年9月時点で押さえるべき決算整理仕訳の全体像を示したうえで、つまずきやすい3大論点を仕訳例付きで解説します。最後まで読めば、初めての決算でも「抜け漏れゼロ」で帳簿を締められる状態が見えてくるはずです。

01決算整理仕訳とは? まず全体像を把握する

決算整理仕訳とは、期中の記帳だけでは正しい損益にならない項目を、決算日(今回は2026年9月30日)の時点に合わせて修正・追加する仕訳です。大きく分けると以下のカテゴリに分かれます。

  • 経過勘定の計上(前払費用・未払費用・未収収益・前受収益)
  • 引当金の設定(貸倒引当金など)
  • 減価償却費の計上
  • 棚卸資産の実地棚卸と売上原価の算定
  • 仮払金・仮受金の精算
  • 消費税の税額確定仕訳(税込経理の場合)

この中でも、創業期の経営者がとくにつまずきやすいのが上位3つです。以下ではこの「3大論点」に絞って、ステップバイステップで解説します。

02論点1:経過勘定——「期間のズレ」を正しく切る

経過勘定が必要になる理由

企業会計は「発生主義」が原則です。お金の出入りではなく、サービスの提供や消費が行われた期間に費用・収益を対応させなければなりません。たとえば、2026年8月1日に12か月分のオフィス賃料120万円(月10万円)を一括前払いした場合、9月決算では2か月分(8月・9月)だけが当期の費用であり、残り10か月分は「前払費用」として資産に計上します。

仕訳例:前払費用の計上

【前提】2026年8月1日に支払ったオフィス賃料120万円のうち、翌期対応分10か月(100万円)を繰り延べる。

  • 期中仕訳(支払時):(借方)地代家賃 1,200,000 /(貸方)普通預金 1,200,000
  • 決算整理仕訳:(借方)前払費用 1,000,000 /(貸方)地代家賃 1,000,000

仕訳例:未払費用の計上

【前提】従業員の9月分社会保険料(会社負担分15万円)は10月末に納付予定だが、9月分の費用として認識する。

  • 決算整理仕訳:(借方)法定福利費 150,000 /(貸方)未払費用 150,000

ポイント:クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)では、決算整理仕訳を「決算仕訳」として入力することで通常の月次仕訳と区別できます。入力画面で「決算整理仕訳」や「決算」タグを選択し、通常取引と混在しないように管理しましょう。こうすると翌期の再振替仕訳の入力漏れも防ぎやすくなります。

03論点2:貸倒引当金——売掛金の回収リスクに備える

貸倒引当金とは

決算日時点で残っている売掛金や受取手形などの金銭債権について、将来の回収不能に備えてあらかじめ費用計上しておくのが貸倒引当金です。法人税法上、中小法人(資本金1億円以下等)は「一括評価」と「個別評価」の2つの方法で損金算入が認められています。

一括評価による設定手順

  1. 決算日(2026年9月30日)時点の売掛金・受取手形等の合計額を集計する。
  2. 法定繰入率を確認する。たとえば卸売業・小売業は10/1000、サービス業等は6/1000など業種ごとに定められている。
  3. 集計額に法定繰入率を乗じた金額を貸倒引当金として繰り入れる。

仕訳例:一括評価の貸倒引当金

【前提】サービス業を営む創業1期目の法人。2026年9月30日時点の売掛金残高が500万円。法定繰入率は6/1000。引当金の前期繰入額は0円(創業初年度のため)。

  • 繰入限度額:5,000,000 × 6/1000 = 30,000円
  • 決算整理仕訳:(借方)貸倒引当金繰入 30,000 /(貸方)貸倒引当金 30,000

創業1期目は過去の貸倒実績がないため、法定繰入率を用いるケースがほとんどです。2期目以降は実績率との有利選択が可能になるため、毎期見直しましょう。

04論点3:減価償却費——月割計算を正確に

減価償却の基本ルール

事業で使う固定資産(パソコン・車両・内装工事など)は、取得した年に全額を費用にするのではなく、法定耐用年数にわたって費用配分します。法人の場合は事業年度の月数に応じた「月割計算」が必須です。

仕訳例:定額法での減価償却

【前提】2026年5月(期首は4月)に取得したノートパソコン。取得価額25万円、耐用年数4年、定額法、残存価額1円。9月決算のため当期使用月数は5か月(5月~9月)。

  1. 年間償却額:250,000 × 0.250(耐用年数4年の定額法償却率)= 62,500円
  2. 月割計算:62,500 × 5/12 = 26,041円(円未満切捨て)
  3. 決算整理仕訳:(借方)減価償却費 26,041 /(貸方)器具備品 26,041(直接法の場合)

注意:取得価額が10万円未満の資産は全額を消耗品費等で即時経費化できます。また、青色申告法人であれば取得価額30万円未満の資産について「少額減価償却資産の特例」により年間合計300万円まで全額損金算入が可能です(2026年9月現在、措置法67条の5)。特例の適用期限は税制改正で変わることがあるため、必ず最新情報を確認してください。

間接法で処理する場合

貸借対照表に取得価額を残したい場合は間接法を使います。

  • 決算整理仕訳:(借方)減価償却費 26,041 /(貸方)減価償却累計額 26,041

中小法人では直接法が多く見られますが、固定資産台帳との突合がしやすい間接法を採用するケースも増えています。クラウド会計ソフト上では固定資産を登録すれば自動で仕訳を生成してくれる機能があるため、まずは正しく固定資産台帳へ登録することが最優先です。

05決算整理を抜け漏れなく進めるチェックリスト

最後に、3大論点を含む決算整理の作業を漏れなく進めるためのチェックリストを掲載します。印刷またはブックマークしてご活用ください。

  1. 通帳・クレジットカード明細と帳簿の残高を一致させる
  2. 売掛金・買掛金の残高を取引先別に確認する
  3. 経過勘定(前払費用・未払費用・未収収益・前受収益)を洗い出す
  4. 貸倒引当金の繰入額を計算し、仕訳を入力する
  5. 固定資産台帳を更新し、減価償却費を月割で計上する
  6. 棚卸を実施して期末在庫を確定する(該当がある場合)
  7. 仮払金・仮受金が残っていないか確認し、精算する
  8. 消費税の仮受・仮払を精算する(税抜経理の場合)
  9. 試算表を出力し、各勘定残高に異常値がないか最終確認する

創業1期目の決算は手探りになりがちですが、上記のステップを順番に進めていけば大きなミスは防げます。判断に迷う項目がある場合は、早めに税理士へ相談して方針を固めておくと安心です。

この記事のまとめ
  • 決算整理仕訳は「期間のズレ」「将来リスクへの備え」「資産の費用配分」を正しく反映するために不可欠
  • 経過勘定は発生主義に基づき、前払費用・未払費用などで期間対応を調整する
  • 貸倒引当金は創業初年度でも法定繰入率で設定可能。売掛金残高を正確に集計することが第一歩
  • 減価償却は月割計算が原則。固定資産台帳への正確な登録がカギ
  • チェックリストを使って作業順に進めれば、初めての決算でも抜け漏れを防げる