「定額減税の処理、ちゃんと終わっていますよね?」——そう聞かれて、自信を持って「はい」と答えられる創業期の経営者は、実はそれほど多くありません。

2024年6月から実施された定額減税(所得税3万円・住民税1万円の定額控除)は、多くの事業者にとって初めて経験する特殊な源泉徴収事務でした。年末調整や確定申告で精算が完了しているはずですが、創業間もない小規模法人や個人事業主の現場では「そもそも月次の控除を正しく行えていたか分からない」「年末調整で精算したつもりだが確信が持てない」という声が少なくありません。

年度末を迎える2026年3月〜4月のこのタイミングで、改めて源泉徴収事務に漏れや過不足がないか総点検しておきましょう。本記事では、具体的なチェックポイントと、万が一漏れがあった場合の対処法を分かりやすく解説します。

そもそも定額減税とは?2024年の制度をおさらい

定額減税は、2024年分の所得税・住民税について、納税者本人および扶養親族1人につき所得税3万円・住民税1万円を控除する制度でした。

  • 所得税:本人3万円+同一生計配偶者・扶養親族1人あたり3万円
  • 住民税:本人1万円+同一生計配偶者・扶養親族1人あたり1万円

たとえば、配偶者と子ども1人がいる給与所得者の場合、所得税で9万円(3万円×3人)、住民税で3万円(1万円×3人)の控除が受けられました。

給与所得者については、2024年6月以降の源泉徴収税額から順次控除し、控除しきれなかった分は年末調整で精算する仕組みでした。この「月次控除」と「年末調整での精算」という二段階の処理が、事務ミスの温床となっています。

創業期の事業者で「漏れ」が起きやすい3つのパターン

パターン1:月次の源泉徴収で定額減税の控除を行わなかった

創業直後で給与計算ソフトを導入していなかったり、手計算で源泉徴収を行っていた事業者の中には、2024年6月以降の月次控除をそもそも実施していなかったケースがあります。この場合、従業員は毎月の手取りが本来より少なくなっていた可能性があります。年末調整で正しく精算できていれば最終的な過不足は解消されますが、年末調整自体が不十分だった場合は問題が残ります。

パターン2:年末調整で定額減税の精算処理を誤った

年末調整時に「定額減税額」の記載欄や計算を正しく処理できていなかったケースです。具体的には以下のようなミスが見られます。

  • 扶養親族の人数を誤ってカウントした(年途中の異動を反映していない等)
  • 合計所得金額が1,805万円を超える従業員にも定額減税を適用してしまった
  • 源泉徴収票の「定額減税額」欄の記載を忘れた、または誤った金額を記載した

パターン3:個人事業主自身の確定申告で定額減税を反映し忘れた

個人事業主の場合、自身の所得税については確定申告で定額減税を適用します。しかし、2024年分の確定申告(2025年3月期限)で定額減税の適用を忘れてしまったり、予定納税の段階で控除した金額との整合性が取れていなかったりするケースもあります。

今すぐできる!源泉徴収事務の総点検チェックリスト

以下のチェックリストを使って、定額減税に関する処理を再確認してみてください。

【給与支払者(法人・個人事業主)向け】

  • □ 2024年6月〜12月の給与で月次の定額減税控除を実施したか
  • □ 控除対象者(合計所得金額1,805万円以下)を正しく判定したか
  • □ 同一生計配偶者・扶養親族の人数は正確か(年途中の異動も含む)
  • □ 年末調整で「年調減税額」を正しく計算し、過不足を精算したか
  • □ 源泉徴収票に定額減税額(控除済額・控除外額)を正しく記載したか
  • □ 給与支払報告書を市区町村へ正しく提出したか

【個人事業主(自分自身の申告)向け】

  • □ 2024年分の確定申告書で定額減税額を正しく記載・控除したか
  • □ 予定納税で控除した減税額と確定申告での精算に矛盾はないか
  • □ 控除しきれなかった分について「調整給付金」の申請対象ではないか確認したか

漏れが見つかった場合の対処法

従業員の年末調整に誤りがあった場合

年末調整の再計算(再年調)を行い、正しい税額との差額を従業員に還付または徴収します。再年調が難しい場合は、従業員本人に確定申告をしてもらうことで精算が可能です。源泉徴収票の再発行も忘れずに行いましょう。

源泉所得税の納付額に過不足がある場合

源泉所得税を多く納付していた場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求」を所轄税務署に行うことができます。逆に不足している場合は、速やかに不足分を納付してください。納付が遅れると不納付加算税(原則10%)や延滞税が課される可能性があります。

個人事業主自身の確定申告に誤りがあった場合

定額減税の適用を忘れて税額を多く納めていた場合は「更正の請求」を行うことで還付を受けられます。更正の請求の期限は法定申告期限から5年以内です。逆に定額減税を過大に適用していた場合は「修正申告」が必要となります。

調整給付金の確認も忘れずに

定額減税で控除しきれなかった金額がある場合、その差額は「調整給付金」として自治体から支給される仕組みでした。2024年中に支給された分と、2025年に行われた不足額給付を含め、対象者が正しく受給できているか確認しておきましょう。

特に2024年中に創業・就職した方や、年の途中で扶養親族の人数が変わった方は、給付金の対象となっている可能性があります。お住まいの市区町村の案内を改めてご確認ください。

なぜ「今」確認すべきなのか?

2026年4月は、多くの法人にとって新年度の始まりです。このタイミングで前年度以前の源泉徴収事務を振り返っておくことには、以下のメリットがあります。

  • 税務調査への備え:源泉徴収事務は税務調査で重点的に確認される項目の一つです。定額減税という特殊な処理があった2024年分は、特に注意が必要です。
  • 経理体制の見直し:創業期に手探りで行っていた経理事務を、このタイミングで仕組み化・外注化することで、今後のミスを防止できます。
  • 従業員との信頼関係:給与に関するミスは従業員の信頼を損ないます。万が一未精算の金額があれば、早めに対応することが大切です。

まとめ:不安があれば専門家に相談を

定額減税は2024年限りの時限的な制度でしたが、その影響は源泉徴収票・給与支払報告書・確定申告書など複数の書類にまたがっています。「たぶん大丈夫」で済ませず、年度が替わる今こそ、一つひとつ確認しておくことをおすすめします。

特に以下に該当する方は、専門家への相談をおすすめします。

  • 2024年に創業し、初めて年末調整を行った法人・個人事業主
  • 給与計算を手作業やExcelで行っている事業者
  • 従業員の入退社が年の途中で発生した事業者
  • 自身の確定申告で定額減税を正しく処理できたか不安がある個人事業主

平川文菜税理士事務所では、創業期の事業者様の源泉徴収事務の確認・見直しをサポートしています。「定額減税の精算が正しくできているか確認してほしい」「そもそも源泉徴収事務のやり方を整理したい」など、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。

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