「事業の経費はしっかり計上しているのに、なぜか税金が高い気がする……」
創業期の経営者やフリーランスの方から、こうしたご相談をいただくことがよくあります。法人の経費や個人事業の必要経費には細心の注意を払っていても、ご自身の「所得控除」を見落としているケースが実はとても多いのです。
所得控除とは、課税所得を計算する際に差し引ける金額のこと。これを正しく活用すれば、所得税・住民税を合法的に減らすことができます。今回は、経営者の方が確定申告で見落としやすい所得控除をチェックリスト形式でまとめました。2026年(令和8年)の確定申告に向けて、ぜひご活用ください。
なぜ経営者は「個人の所得控除」を見落としやすいのか
創業期の経営者は、事業の売上・経費管理に意識が集中しがちです。特に以下のような理由から、個人の所得控除が後回しになってしまいます。
- 事業の帳簿づけや資金繰りに時間を取られ、個人の税金対策まで手が回らない
- 法人と個人の区別が曖昧で、何が「個人の控除」に該当するか分からない
- 年末調整のない経営者は、自分で確定申告をしないと控除が適用されない
しかし、所得控除を1つ見落とすだけで数万円〜数十万円の税金を余計に支払ってしまうこともあります。以下のチェックリストで、該当するものがないか確認してみましょう。
経営者のための所得控除チェックリスト【全10項目】
✅ 1. 医療費控除
年間の医療費(自己負担額)が10万円を超える場合(総所得金額が200万円未満の方は総所得金額の5%超)、超えた分が所得控除の対象になります。控除の上限は200万円です。
対象となるのは、本人だけでなく生計を一にする配偶者や親族の医療費も合算できます。歯科矯正(治療目的)、レーシック手術、通院のための交通費なども対象になり得ます。
【見落としポイント】市販薬の購入で一定要件を満たす場合は「セルフメディケーション税制」(年間12,000円超で適用・上限88,000円)も選択肢に。医療費控除との併用はできないため、有利な方を選びましょう。
✅ 2. ふるさと納税(寄附金控除)
ふるさと納税は自己負担2,000円で地方自治体に寄附でき、寄附額から2,000円を差し引いた金額が所得税・住民税から控除されます。
例えば、課税所得700万円の方なら、目安として年間約11万円程度までふるさと納税が可能です(家族構成等により異なります)。
【見落としポイント】経営者の方でワンストップ特例制度を利用しても、確定申告をする場合はワンストップ特例が無効になります。確定申告書に寄附金控除として改めて記載する必要があるため、申告漏れにご注意ください。
✅ 3. iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)の掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象です。
- 自営業者(第1号被保険者):月額68,000円(年間816,000円)が上限
- 会社経営者で厚生年金加入(第2号被保険者):企業年金の有無等により月額12,000円〜23,000円が上限(2024年12月以降、一部上限が月額62,000円に引き上げ)
仮に年間27.6万円(月23,000円)を拠出し、所得税率20%・住民税率10%の方であれば、年間約8.3万円の税負担軽減が見込めます。
✅ 4. 小規模企業共済
個人事業主や小規模法人の役員が加入できる「経営者の退職金制度」です。掛金は月額1,000円〜70,000円の範囲で設定でき、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。
年間最大84万円を所得控除でき、所得税率20%・住民税率10%の場合、年間約25.2万円の節税効果があります。将来の退職金や廃業時の備えにもなる、経営者にとって非常に有利な制度です。
✅ 5. 生命保険料控除
生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料が対象です。それぞれ最大4万円ずつ、合計で最大12万円の所得控除が受けられます(新契約の場合)。保険会社から届く控除証明書を確認しましょう。
✅ 6. 社会保険料控除
国民健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料などは全額が所得控除の対象です。配偶者やお子さんの国民年金保険料を代わりに支払った場合も、支払った方が控除を受けられます。
✅ 7. 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者の年間合計所得金額が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)の場合、最大38万円の配偶者控除が受けられます。48万円を超えても133万円以下であれば配偶者特別控除の対象です。ただし、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。
✅ 8. 扶養控除
16歳以上の扶養親族がいる場合、1人あたり38万円〜63万円の所得控除が受けられます。離れて暮らす親御さんへの仕送りをしている場合も、要件を満たせば扶養控除の対象になり得ます。
✅ 9. 地震保険料控除
自宅の地震保険料は、最大5万円の所得控除の対象です。事務所兼自宅の場合、居住用部分に対応する保険料が控除対象になります。
✅ 10. 雑損控除
災害・盗難・横領により資産に損害を受けた場合に適用されます。台風や地震の被害を受けた場合など、該当する方は忘れずに申告しましょう。
【実例】控除の見落としで約15万円の差が出たケース
当事務所にご相談いただいた、創業3年目のIT系フリーランスAさん(年間所得約600万円)の事例です。
Aさんは毎年ご自身で確定申告をしていましたが、以下の控除を見落としていました。
- 小規模企業共済の掛金(年間84万円)→ 未加入だった
- ふるさと納税(約8万円分)→ 確定申告書への記載漏れ
- 配偶者の国民年金保険料(約20万円)→ 社会保険料控除への計上漏れ
これらを適正に反映した結果、所得税・住民税あわせて約15万円の税負担軽減につながりました。特に小規模企業共済は加入するだけで将来の備えと節税が同時にできるため、すぐに加入手続きを進めました。
まとめ:チェックリストで「もったいない」をなくしましょう
今回ご紹介した所得控除をもう一度整理します。
- ☐ 医療費控除(セルフメディケーション税制含む)
- ☐ ふるさと納税(寄附金控除)
- ☐ iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)
- ☐ 小規模企業共済
- ☐ 生命保険料控除
- ☐ 社会保険料控除
- ☐ 配偶者控除・配偶者特別控除
- ☐ 扶養控除
- ☐ 地震保険料控除
- ☐ 雑損控除
事業の経費を適切に計上することはもちろん大切ですが、個人の所得控除を正しく活用することも、手元に残るお金を増やす重要な戦略です。
「自分にはどの控除が使えるのか分からない」「確定申告で損をしていないか不安」という方は、ぜひ一度専門家にご相談ください。
平川文菜税理士事務所では、創業期の経営者・フリーランスの方に向けて、個人の税金対策を含めたトータルサポートを行っています。確定申告や節税対策についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2025年6月時点の税制に基づいて作成しています。最新の税制改正により内容が変更となる場合がありますので、実際の申告にあたっては専門家にご確認ください。
