2025年分の確定申告を無事に終えて「やっと一息つけた」と安心している方も多いのではないでしょうか。しかし、創業期の個人事業主の方にとっては、ここからが本番です。6月以降、住民税や個人事業税の納付書が届き、「こんな金額になるの?」と驚くケースが後を絶ちません。確定申告で計算した所得税だけが税金のすべてではないのです。本記事では、確定申告の数字をもとに住民税・事業税のおおよその金額を事前に見積もる方法と、納付に備えた資金確保のコツを解説します。

01確定申告後に届く「もうひとつの税金」とは

確定申告で納付する所得税・復興特別所得税は、あくまで国に納める税金です。これとは別に、地方自治体に対して納める税金として「住民税(市区町村民税+都道府県民税)」と「個人事業税」があります。

どちらも確定申告の情報をもとに自治体側が税額を計算し、納付書を送ってくるため、自分で申告する手間はありません。しかし、その分「忘れたころにやってくる」ため、資金繰りを圧迫しやすいのです。

届く税金の全体像を整理する

  • 住民税:すべての個人事業主が対象。確定申告の所得をもとに計算される。
  • 個人事業税:法定業種に該当し、事業所得が一定額を超える場合に課税される。
  • 国民健康保険料(税):厳密には「税金」ではありませんが、同じく所得に連動して決まるため、資金計画には含めておきましょう。

02住民税の計算方法と納付スケジュール

住民税はいつ届く?

2025年分の確定申告に基づく住民税の通知書は、2026年6月ごろに届きます。普通徴収(自分で納付)の場合、納付は原則として年4回に分かれます。

  1. 第1期:2026年6月末
  2. 第2期:2026年8月末
  3. 第3期:2026年10月末
  4. 第4期:2027年1月末

※自治体によって具体的な期限は若干異なります。届いた納付書で正確な日付を確認してください。

住民税のおおよその金額を見積もる方法

住民税は「所得割」と「均等割」の合計で算出されます。ざっくりとした目安は次のとおりです。

  • 所得割:課税所得(確定申告書の「課税される所得金額」とほぼ同じ)× 約10%
  • 均等割:年額5,000円程度(自治体により異なる場合あり)

たとえば、確定申告で課税所得が400万円だった場合、住民税の所得割はおよそ40万円、均等割を加えて合計約40万5,000円が目安になります。4回に分けると1回あたり約10万円です。

ポイント:所得税の確定申告書で使う所得控除と住民税の所得控除は金額が異なるものがあります(例:基礎控除は所得税48万円に対し住民税43万円)。そのため、住民税の課税所得は所得税の課税所得よりやや大きくなり、実際の住民税は「課税所得×10%」の単純計算より少し多くなる傾向があります。

03個人事業税の仕組みと「事業主控除290万円」

個人事業税はいつ届く?

個人事業税の通知書は、2026年8月ごろに届きます。納付は原則として年2回です。

  1. 第1期:2026年8月末
  2. 第2期:2026年11月末

課税対象になる人・ならない人

個人事業税は、都道府県が定める「法定業種(全70業種)」に該当する事業を営んでいる方に課税されます。ほとんどの業種が該当しますが、ライターや漫画家など一部の業種は法定業種に含まれない場合があります。

事業主控除290万円とは

個人事業税の計算では、事業所得から年間290万円の事業主控除を差し引くことができます。したがって、事業所得が290万円以下であれば個人事業税はかかりません。

計算式は次のとおりです。

(事業所得 + 所得税の事業専従者給与等の加算 − 個人事業税の事業専従者控除 − 各種控除 − 事業主控除290万円) × 税率

税率は業種によって3%〜5%で、大半の業種は5%です。

具体例で見積もってみる

たとえば、物販業(税率5%)を営む方の2025年分の事業所得が600万円だった場合を考えてみましょう。青色申告特別控除前の金額ではなく、確定申告書上の事業所得で計算します。ただし、青色申告特別控除は事業税の計算では差し引く前の金額を使う点に注意が必要です。

注意:個人事業税の計算では、所得税で認められている青色申告特別控除(10万円・55万円・65万円)は適用されません。確定申告書の事業所得に青色申告特別控除額を足し戻した金額がベースになります。65万円控除を使っている方は、想定よりも事業税の金額が大きくなるため要注意です。

青色申告特別控除65万円を適用して確定申告書の事業所得が600万円の場合:

  • 事業税の計算上の所得 = 600万円 + 65万円(青色申告特別控除の加算)= 665万円
  • 課税標準 = 665万円 − 290万円(事業主控除)= 375万円
  • 個人事業税 = 375万円 × 5% = 187,500円

これを2回に分けて納付するので、1回あたり約94,000円です。住民税と合わせると、6月〜翌1月にかけてかなりの金額を支払うことになります。

04納付時期に合わせた資金確保テクニック

「売上が入ったら使ってしまい、納付書が届いたときに手元にお金がない」という事態を避けるため、以下の方法を実践しましょう。

1. 毎月の売上から一定割合を「納税口座」に移す

事業用口座とは別に、納税資金専用の普通預金口座を用意します。毎月の売上または利益の15%〜20%程度を機械的に移す習慣をつければ、住民税・事業税・翌年の所得税の予定納税にも対応できます。

2. 年間納税カレンダーを作る

確定申告後すぐに、その年の主な納付スケジュールを一覧にまとめましょう。

  • 6月:住民税第1期
  • 7月:所得税の予定納税第1期(該当者のみ)
  • 8月:住民税第2期・個人事業税第1期
  • 10月:住民税第3期
  • 11月:所得税の予定納税第2期(該当者のみ)・個人事業税第2期
  • 1月:住民税第4期

3. 概算金額を先に計算しておく

本記事で紹介した方法で、確定申告書の数字をもとに住民税・事業税の概算額を算出しましょう。正確な金額は通知書が届くまで分かりませんが、おおよその金額がわかっていれば資金計画は格段に立てやすくなります。

4. 振替納税・口座振替を活用する

住民税や個人事業税は口座振替に対応している自治体が多くあります。「うっかり納付忘れ」による延滞金を防ぐためにも、口座振替の手続きを検討してみてください。

05国民健康保険料も忘れずに

住民税・事業税と同時期に、国民健康保険料の通知も届きます。保険料率は自治体によって大きく異なりますが、所得が増えれば保険料も増える仕組みです。上限額も年々引き上げられており、2025年度は年間最大106万円となっています。住民税・事業税とあわせて、資金計画に組み込んでおきましょう。

この記事のまとめ
  • 確定申告後、6月以降に届く住民税と8月以降に届く個人事業税は「想定外の出費」になりやすい。事前に概算額を把握しておくことが大切。
  • 住民税の目安は「課税所得×約10%+均等割5,000円程度」。年4回に分けて納付する。
  • 個人事業税は事業所得から事業主控除290万円を引いた金額に税率(多くは5%)をかけて計算する。青色申告特別控除は事業税では適用されない点に要注意。
  • 毎月の売上から15〜20%を「納税口座」に移す習慣をつけ、年間納税カレンダーで資金準備のタイミングを管理する。
  • 国民健康保険料も所得に連動するため、あわせて資金計画に含めておく。