確定申告を無事に終えてほっとしたのも束の間、いざ創業融資や追加融資を申し込もうとすると「青色申告決算書の○○について説明してください」と金融機関から質問が飛んでくる――。そんな場面で的確に答えられず、融資の印象を下げてしまうケースは少なくありません。実は、確定申告書は「提出して終わり」ではなく、資金調達の場面で最も重要な説明資料になります。本記事では、金融機関が青色申告決算書のどこを見ているのか、そしてどう準備すれば融資面談を有利に進められるのかを税理士の視点で解説します。

01なぜ青色申告決算書が融資面談の主役になるのか

金融機関が融資審査で最も重視するのは「返済能力の根拠」です。法人であれば決算書、個人事業主であれば青色申告決算書がその根拠資料となります。特に日本政策金融公庫の創業融資や、信用金庫・地方銀行のプロパー融資では、直近1~2期分の青色申告決算書の提出が求められるのが一般的です。

青色申告決算書には、損益計算書(1ページ目)、月別売上・仕入金額(2ページ目)、減価償却費の計算や地代家賃の内訳(3ページ目)、貸借対照表(4ページ目)がコンパクトにまとまっています。金融機関の担当者はこの4ページを読み込んだうえで面談に臨むため、経営者自身が内容を正確に把握していないと「数字に対する意識が低い」と評価されるリスクがあります。

02金融機関が質問してくる7つの定番ポイント

(1)売上の増減理由

前期比で売上が増えていれば「何が要因か」、減っていれば「回復の見通しはあるか」を聞かれます。たとえば令和7年分の売上が前年比120%に伸びた場合、「新規取引先が3社増え、月平均受注額が約40万円増加した」といった具体的な数字と要因をセットで説明できると好印象です。

(2)粗利率(売上総利益率)の変動

売上が伸びていても粗利率が下がっていると「安売りしていないか」「原価管理ができているか」を疑われます。原材料費の高騰など外部要因がある場合は、その対策まで含めて説明しましょう。

(3)経費の中身と妥当性

特に「雑費」や「その他の経費」が大きい場合に質問されやすくなります。内訳を聞かれて即答できないと、経費管理が甘いと見なされます。事前に金額の大きい上位3項目は内容を整理しておきましょう。

(4)借入金の残高と使途

貸借対照表に記載された借入金について「何のために借りたのか」「返済は計画通りか」を確認されます。既存借入の返済予定表を手元に用意しておくとスムーズです。

(5)月別売上の波とその理由

2ページ目の月別売上金額は、事業の季節性やリスクの読み取りに使われます。特定月だけ売上が極端に高い(または低い)場合は、合理的な説明が求められます。

(6)減価償却費と設備投資の計画

現在の設備がいつ更新時期を迎えるのか、新たな投資計画はあるのかを聞かれることがあります。融資申込の目的が設備資金であれば、見積書と合わせて既存設備の状況も説明できるようにしておきましょう。

(7)事業主貸・事業主借の金額

個人事業主特有の項目ですが、事業主貸(生活費等の引き出し)が過大だと「事業資金が生活費に流れている」と見られます。年間の生活費としてどの程度必要かを把握し、妥当な範囲であることを説明できるとよいでしょう。

ポイント:金融機関は「数字そのもの」だけでなく、「経営者が自分の数字を理解しているか」を見ています。完璧な決算書よりも、数字の背景を自分の言葉で語れることが信頼につながります。

03面談前にやっておくべき3つの準備

準備1:決算書の「セルフ質問」をする

自分の青色申告決算書を手元に置き、前述の7つのポイントについて「もし聞かれたら何と答えるか」を声に出して練習してみてください。紙に書き出すのも効果的です。曖昧な箇所が見つかれば、帳簿や請求書を確認して裏付けを取りましょう。

準備2:前期比較の一覧表を作成する

令和6年分と令和7年分の主要項目(売上、売上原価、粗利、主要経費、所得金額)を並べた比較表をA4用紙1枚で作成します。増減額と増減率を記入し、大きく変動した項目にはコメントを添えます。この資料を面談時に持参するだけで、「数字を管理できている経営者」という印象を与えることができます。

準備3:資金繰り表と事業計画を用意する

過去の実績だけでなく、今後の見通しを示す資料があると説得力が大幅に増します。向こう12か月分の簡易資金繰り表を作成し、借入金の返済原資がどこから出るのかを明示しましょう。売上の根拠として、既存顧客のリピート率や新規営業の見込みも添えると効果的です。

注意:青色申告決算書と実態が乖離しているケースには特に注意が必要です。たとえば、節税を意識して経費を多めに計上した結果、所得が実態より低く見える場合、融資審査では「返済能力が低い」と判断される可能性があります。確定申告の段階から、融資申込を見据えた数字のバランスを意識することが重要です。

04実際の面談での回答例

ここでは、よくある質問と回答のイメージを紹介します。

質問:「前期と比べて売上が約15%減少していますが、理由を教えてください。」

回答例:「令和7年分は主要取引先1社との契約が6月で終了したことが主因です。ただし、同年9月から新規取引先2社との取引が始まり、月あたり約25万円の売上が加わっています。令和8年は年間を通じてこの取引が継続するため、前期並みの水準に回復する見込みです。」

質問:「雑費が80万円と大きいですが、何が含まれていますか。」

回答例:「内訳としては、業務用ソフトウェアの年間利用料が約30万円、外注先への少額支払いが合計約35万円、その他細かい事務用品等が約15万円です。次期以降は勘定科目を細分化して管理する予定です。」

このように、金額の内訳・原因・今後の見通しの3点をセットにして答えることが鉄則です。

05確定申告を「資金調達ツール」に変える視点

多くの個人事業主やスタートアップ経営者は、確定申告を「税金の計算」としか捉えていません。しかし、青色申告決算書は事業の成績表であり、金融機関との対話の出発点です。

確定申告の段階から以下の視点を持つことで、申告書の質が変わります。

  • 勘定科目はできるだけ具体的に分類し、「雑費」への集約を避ける
  • 月別売上は正確に記録し、季節変動の理由を把握しておく
  • 貸借対照表の各科目(特に現金・預金、売掛金、借入金)が実態と一致しているか確認する
  • 事業主貸・事業主借の金額が過大にならないよう、事業用と生活用の口座を分ける
  • 減価償却資産の取得時期と耐用年数を把握し、設備更新の時期を見通す

これらを意識して日頃から帳簿を整えておけば、融資面談の直前に慌てて数字を確認する必要がなくなります。結果的に、経営管理の質そのものが向上するという好循環が生まれます。

06税理士を活用した面談対策のすすめ

融資面談の前に、顧問税理士と一緒に決算書の「読み合わせ」をする時間を取ることをおすすめします。税理士は数字の作成者として、各項目の背景や計上根拠を熟知しています。面談で聞かれそうなポイントを事前に洗い出し、回答を整理しておくことで、当日の受け答えに自信が持てるようになります。

また、金融機関に提出する事業計画書や資金繰り表の作成サポートも税理士の得意分野です。過去の実績と将来の計画に一貫性を持たせることで、融資担当者に「この事業者は信頼できる」と感じてもらえる資料が出来上がります。

この記事のまとめ
  • 青色申告決算書は融資審査の最重要資料。「提出して終わり」にせず、面談対策として内容を把握しておくことが不可欠。
  • 金融機関がよく質問するのは、売上の増減理由・粗利率の変動・経費の内訳・借入金の使途・月別売上の波・減価償却と設備計画・事業主貸借の金額の7項目。
  • 面談前には「セルフ質問」「前期比較表の作成」「資金繰り表の準備」の3つを行う。
  • 回答は「金額の内訳・原因・今後の見通し」の3点セットで伝えるのが鉄則。
  • 確定申告の段階から融資を見据えた帳簿管理を意識すると、経営管理の質も向上する。
  • 税理士との決算書の読み合わせや事業計画書の作成サポートを活用し、面談に万全の態勢で臨もう。