「税務署から電話がありました」――留守電やスタッフからの伝言を受け取った瞬間、心臓がドキッとした経験はありませんか。創業して間もない時期ほど「何か間違いがあったのでは」「税務調査が来るのでは」と不安になるものです。しかし、税務署からの電話にはさまざまな種類があり、その多くは調査とは無関係の事務的な確認です。本記事では、連絡パターンごとの対応手順と、やってはいけないNG行動を整理します。

01税務署からの電話=税務調査とは限らない

税務署から電話がかかってくると聞くと、多くの方が「税務調査の通知」を思い浮かべます。しかし実際には、創業期の事業者に対する電話の大半は以下のような事務連絡です。

  • 開業届・青色申告承認申請書など届出書類の記載内容の確認
  • 消費税の届出(課税事業者届出書・簡易課税制度選届出書など)に関する確認
  • 確定申告書・法人税申告書の記載ミスや添付書類不足の問い合わせ
  • 納税額の未納・振替口座の不備に関する案内
  • 各種お知らせ(説明会の案内、制度変更の周知など)

国税庁が公表している統計によると、2024事務年度(令和6事務年度)の法人税の実地調査件数は約6万件前後で推移しており、日本全国の法人数約280万社に対して年間の調査率はおよそ2〜3%程度です。つまり、電話が即座に調査を意味する確率はそれほど高くありません。まずは冷静に対応することが大切です。

02連絡の種類別・具体的な対応手順

パターン1:届出書類の記載内容確認

創業直後に最も多いのがこのパターンです。開業届や青色申告承認申請書の「事業開始日」「届出の届出区分」など、形式的な確認が中心です。手元に届出の控えがあれば、その場で回答して問題ありません。控えが見当たらない場合は「確認して折り返します」と伝えましょう。

パターン2:申告内容の問い合わせ

確定申告や法人税申告の提出後、記載内容に不明点がある場合に電話が来ることがあります。例えば「売上の計上時期が前期と大きく異なる理由」「経費として計上した勘定科目の内容」などです。この場合は、即答を避け、顧問税理士がいれば税理士に相談してから回答するのが安全です。

パターン3:納税に関する連絡

振替納税の口座不備や納期限を過ぎた未納税額がある場合、督促の前段階として電話連絡が入ることがあります。放置すると延滞税が加算されるため、早めに対応しましょう。2026年(令和8年)現在、延滞税は納期限の翌日から2か月以内であれば年2.4%程度、2か月を超えると年8.7%程度まで上昇します(特例基準割合により変動)。

パターン4:税務調査の事前通知

実際に税務調査が行われる場合、原則として事前に電話で通知されます。国税通則法第74条の9に基づき、調査の日時・場所・対象税目・対象期間などが伝えられます。顧問税理士がいる場合は税理士に先に連絡が入るケースが一般的です(税務代理権限証書を提出している場合)。

ポイント:税務調査の事前通知を受けた場合でも、提示された日程に都合が悪ければ変更を申し出ることが可能です。「日程の調整=拒否」ではありませんので、業務に支障がない日を冷静に調整しましょう。

03折り返し前に準備しておくべきもの

税務署からの電話に折り返す前に、以下の資料や情報を手元に用意しておくとスムーズです。

  1. 相手の所属・氏名・内線番号のメモ:留守電の内容を正確に記録します。折り返し時に担当者に直接つないでもらえます。
  2. 届出書類の控え一式:開業届、青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、消費税関連届出書など。
  3. 直近の申告書の控え:確定申告書(所得税・法人税)、消費税申告書、決算書・内訳書のコピー。
  4. 帳簿・会計データへのアクセス手段:クラウド会計を利用している場合はログイン情報を確認しておきましょう。
  5. 顧問税理士の連絡先:折り返す前に税理士へ一報を入れるのが理想です。

特に創業1〜2年目は届出漏れや届出の記載ミスが起こりやすい時期です。提出した届出書類の控えは、紙・データのいずれかで必ず保管しておきましょう。

04その場で回答してはいけないこと・やってはいけないNG行動

NG行動1:曖昧な記憶で数字を答える

「売上はだいたいこのくらいです」「経費はたぶん○○万円くらいだったと思います」といった曖昧な回答は、後から正確な数字と食い違ったときに不信感を持たれる原因になります。正確に答えられない質問は「帳簿を確認して改めてご連絡します」と伝えてください。

NG行動2:税務署を名乗る電話を無条件に信用する

近年、税務署や国税局を騙る詐欺電話・フィッシングが増加しています。電話で「還付金があるのでATMで操作してください」「クレジットカード番号を教えてください」などと言われた場合、それは100%詐欺です。不審に感じたら、電話を切り、税務署の代表電話番号(国税庁ホームページや電話帳で確認できる番号)に自分からかけ直して確認しましょう。

NG行動3:電話を無視・放置する

怖いからといって着信を無視し続けると、事態が悪化する場合があります。単なる届出の確認であれば、放置することで届出が受理されず不利益を被る可能性がありますし、納税の督促であれば延滞税が膨らみます。また、税務調査の通知を無視した場合、事前通知なしの「無予告調査」に切り替えられるリスクもあります。

NG行動4:顧問税理士に相談せず独断で対応する

顧問税理士と契約しているにもかかわらず、自己判断で回答してしまうと、後から税理士が状況を把握できず適切なサポートが難しくなります。特に申告内容に関する踏み込んだ質問や、税務調査の事前通知を受けた場合は、必ず税理士に相談してから対応しましょう。

注意:税務調査の事前通知の電話で、その場で「調査に同意します」「すべてお見せします」などと安易に発言する必要はありません。日程調整と税理士への連絡を優先し、落ち着いて準備を進めてください。

05創業期に特に気をつけたい3つのポイント

1. 届出書類の控えを必ず保管する

開業届、青色申告承認申請書、消費税の各種届出書は提出時に控えを取っておくのが鉄則です。e-Taxで提出した場合は受信通知(メール詳細)をPDFで保存しておきましょう。控えがあれば、税務署からの問い合わせにもすぐ対応できます。

2. 会計処理は日頃から整理しておく

帳簿の記帳が溜まっていると、いざ問い合わせが来たときに何も答えられません。クラウド会計ソフトを活用して、少なくとも月次で帳簿を整理しておく習慣をつけましょう。

3. 早い段階で税理士と顧問契約を結ぶ

創業期は売上規模が小さいため「まだ税理士は必要ない」と考える方も多いですが、税務署とのやり取りに不安がある場合こそ、専門家のサポートが心強い場面です。税務代理権限証書を税務署に提出しておけば、調査の事前通知も税理士に直接届くため、経営者が直接対応する負担を大幅に軽減できます。

この記事のまとめ
  • 税務署からの電話の多くは届出内容の確認や申告書の記載ミスに関する事務連絡であり、即座に税務調査を意味するわけではない。
  • 折り返し前に届出書控え・申告書控え・帳簿データを手元に準備し、顧問税理士にも一報を入れてから対応するのがベスト。
  • 曖昧な記憶で数字を答えない、電話を無視しない、詐欺電話に注意する、独断で対応しないという4つのNG行動を避けることが重要。
  • 創業期から届出書類の保管・月次の帳簿整理・税理士との顧問契約を整えておくと、税務署からの連絡にも落ち着いて対応できる。