ゴールデンウィークが明けた5月上旬、ポストに届く自動車税(種別割)の納付書。創業して間もない時期だと、「この車は個人名義のままだけど経費にできるの?」「法人名義にしたほうが得なの?」「そもそもどう仕訳すればいいの?」と迷う方は少なくありません。本記事では、車両の保有形態ごとに異なる経費計上の方法と、按分・仕訳の実務ポイントを整理します。
012026年5月の自動車税(種別割)の基本をおさらい
自動車税(種別割)は、毎年4月1日時点の車両所有者に対して課される都道府県税です。2026年度の納付書は5月上旬に届き、納期限は原則として2026年5月末日(都道府県によって多少異なります)です。
税額の目安
乗用車の場合、排気量に応じておおむね以下の金額が課されます(2019年10月1日以降に初回新規登録を受けた自家用乗用車の場合)。
- 排気量1,000cc以下:25,000円
- 排気量1,000cc超~1,500cc以下:30,500円
- 排気量1,500cc超~2,000cc以下:36,000円
- 排気量2,000cc超~2,500cc以下:43,500円
軽自動車の場合は市区町村が課す軽自動車税(種別割)となり、自家用乗用の場合は一律10,800円です。創業期にコストを抑えたい方は、軽自動車を選択するケースも多いでしょう。
02法人名義の車両:経費処理のシンプルなパターン
仕訳の基本
法人が所有する車両にかかる自動車税は、全額が「租税公課」として損金(経費)に算入できます。仕訳はシンプルです。
【仕訳例:排気量1,500cc超~2,000cc以下の法人名義の乗用車の場合】
- (借方)租税公課 36,000円 /(貸方)現金預金 36,000円
納付書で金融機関やコンビニから支払った場合は「現金」、口座振替の場合は「普通預金」を貸方に使います。
事業専用なら按分不要
法人名義の車両を100%事業用として使用している場合、按分計算は不要です。ただし、代表者が法人名義の車を私的に使用している実態がある場合は、税務調査で「役員に対する経済的利益(役員給与)」として指摘されるリスクがあります。社内ルールとして「業務使用のみ」と定め、運行記録を残しておくことが望ましいでしょう。
03個人名義の車両を事業に使う場合:按分がカギ
個人事業主のケース
個人事業主が自分名義の車を事業とプライベートの両方に使っている場合、自動車税も「家事按分」の対象になります。按分割合の算出方法には主に以下のようなものがあります。
- 走行距離による按分:事業用の走行距離 ÷ 総走行距離で割合を算出
- 使用日数による按分:1週間のうち事業で使う日数 ÷ 7日で割合を算出
たとえば、排気量1,500cc超~2,000cc以下の車で、事業使用割合が70%の場合の仕訳は次のとおりです。
- (借方)租税公課 25,200円 /(貸方)事業主借 36,000円
- (借方)事業主貸 10,800円
事業用分の25,200円(36,000円 × 70%)だけが必要経費として計上されます。
法人で個人名義の車を使う場合
創業直後は、代表者個人の車をそのまま法人の業務に使うことがよくあります。この場合、車両の名義は個人のままですから、自動車税の納付書は個人宛に届きます。
法人の経費として処理するには、法人と個人の間で賃貸借契約(使用貸借契約)を締結しておくことが重要です。契約書があれば、法人が実質的に負担する自動車税相当額を経費にしやすくなります。
ポイント:個人名義の車を法人で使う場合は、「車両賃貸借契約書」を作成しましょう。契約書には使用範囲、費用負担の取り決め(自動車税・保険料・ガソリン代など)を明記しておくと、税務調査時にもスムーズに説明できます。
04リース車両の場合:自動車税はどうなる?
カーリース契約の場合、自動車税はリース料に含まれているケースが一般的です。この場合、自動車税を個別に仕訳する必要はなく、毎月のリース料を「リース料」または「賃借料」として経費計上します。
- (借方)リース料 ○○円 /(貸方)普通預金 ○○円
ただし、リース契約の内容によっては「自動車税は別途使用者負担」と定められている場合もあります。契約書を必ず確認しましょう。
注意:ファイナンスリースで所有権移転条件に該当する場合は、会計上は資産計上が必要となり、自動車税も法人名義の車両と同様に「租税公課」として処理します。リース契約の分類(オペレーティングリース/ファイナンスリース)によって会計処理が変わるため、契約内容を税理士とともに確認することをおすすめします。
05納付時の資金繰りへの影響と対策
自動車税は5月末が納期限のため、3月決算法人にとっては法人税等の確定申告(5月末期限)と時期が重なります。また、個人事業主も消費税の振替納税が4月下旬に行われた直後であり、手元資金が薄くなりがちなタイミングです。
創業期に意識したい3つの対策
- 年間の税金スケジュールを把握する:自動車税だけでなく、固定資産税(4期分割)、消費税、法人税、社会保険料などを月別に一覧化し、支払いが集中する月を可視化しましょう。
- 口座振替やクレジットカード納付を活用する:口座振替なら払い忘れを防げます。クレジットカード納付は決済手数料がかかりますが、支払いを1か月程度先送りできるため資金繰りの調整に有効です。
- 未払計上で決算をまたぐ場合の処理:3月決算法人で4月1日時点に車両を所有していれば、その年度の自動車税は3月末決算で「未払金」として費用計上できます(賦課決定のあった日の属する事業年度の損金)。
06保有形態別・経費計上の比較一覧
ここまでの内容を整理すると、以下のようになります。
- 法人名義(事業専用):全額「租税公課」で経費計上。按分不要。
- 個人名義(個人事業主・事業兼用):事業使用割合で按分した金額を「租税公課」で計上。
- 個人名義の車を法人で使用:賃貸借契約を締結し、費用負担ルールを明確化。法人が実質負担する場合は法人の経費へ。
- リース車両:リース料に含まれている場合は個別計上不要。別途負担の場合は「租税公課」で計上。
- 自動車税(種別割)は毎年5月に届き、納期限は5月末日が原則。2026年度も同様です。
- 法人名義で事業専用の車両であれば、全額を「租税公課」として経費計上でき、按分は不要です。
- 個人名義の車を事業に使う場合は、走行距離や使用日数をもとに家事按分して経費計上します。
- 個人名義の車を法人で使う場合は、賃貸借契約書の作成が実務上の必須ステップです。
- リース車両は契約内容を確認し、自動車税が料金に含まれるか別途負担かで処理が変わります。
- 5月は各種税金の支払いが集中する時期。年間の支払いスケジュールを可視化して資金繰りに備えましょう。
