「年末調整の書類、従業員にいつ・何を・どう頼めばいいのか分からない」——創業して初めての年末調整を迎えるスタートアップ経営者や個人事業主の方から、毎年この時期に多くのご相談をいただきます。従業員が数名でも、書類の回収が遅れれば12月の給与計算に間に合わず、結果として確定申告や修正作業に追われることになりかねません。本記事では、2026年10月〜12月の実務スケジュールに沿って、各申告書を漏れなく回収するための段取りとテンプレートをまとめました。

01年末調整で従業員から回収する書類の全体像

まず、年末調整にあたって従業員から提出してもらう主な書類を確認しましょう。2026年分の年末調整では、以下の書類が対象となります。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(令和9年分)——翌年分を年末調整時に提出
  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書(令和8年分)
  • 給与所得者の保険料控除申告書(令和8年分)
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ・令和8年分)

少人数の会社であっても、書類の種類と提出期限は大企業と同じです。「うちは3人しかいないから大丈夫」と油断すると、1人の遅延がそのまま全体の作業遅延につながります。

ポイント:令和8年分(2026年分)の年末調整では、扶養控除等申告書は「令和9年分」を新たに提出してもらう点に注意してください。当年分(令和8年分)は年初に提出済みのはずですが、異動があれば修正も必要です。

0210月〜12月の時系列スケジュール

書類回収から年末調整完了までの流れを、時系列で整理します。以下のスケジュールを基本に、自社の給与計算日に合わせて前倒しで動くことが重要です。

10月中旬〜下旬:準備と初回案内

  1. 必要書類のリストアップと用紙の準備(国税庁サイトからダウンロード可能)
  2. 従業員への一斉案内メール送付(後述のテンプレート参照)
  3. 保険会社から届く控除証明書を保管するよう従業員に周知

11月上旬〜中旬:回収と1回目リマインド

  1. 11月15日を一次提出期限として設定
  2. 未提出者へリマインドメールを送付
  3. 提出済み書類の記載内容をチェック(計算誤りや添付漏れの確認)

11月下旬:最終回収と計算作業

  1. 11月25日を最終提出期限として設定
  2. 全員分の書類が揃ったら年末調整計算に着手
  3. 不備があれば個別に修正依頼

12月上旬〜中旬:年末調整の完了

  1. 12月給与または賞与で過不足税額を精算
  2. 源泉徴収票を従業員に交付
  3. 法定調書・給与支払報告書の作成準備

創業期の会社では経理担当が経営者自身というケースも多いため、12月に作業が集中すると本業に支障が出ます。11月中に書類を揃え切ることを目標にしましょう。

03従業員への依頼メール・テンプレート

実際に従業員へ送る案内メールのテンプレートをご紹介します。初回案内とリマインドの2種類を用意しておくと便利です。

初回案内メール(10月中旬送付)

件名:【要対応】年末調整書類のご提出のお願い(提出期限:11月15日)

本文例:

「お疲れさまです。年末調整に必要な書類を下記のとおりお配りしますので、11月15日(日曜日の場合は前営業日)までにご提出ください。

■ご提出いただく書類
(1)令和9年分 扶養控除等(異動)申告書
(2)令和8年分 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
(3)令和8年分 保険料控除申告書(※控除証明書の原本を添付)
(4)住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ・銀行の残高証明書を添付)

■注意事項
・保険会社や銀行から届く控除証明書は原本が必要です。届き次第、紛失しないよう保管をお願いします。
・記入方法が不明な点があれば、遠慮なくご連絡ください。」

リマインドメール(11月上旬送付)

件名:【再送・期限間近】年末調整書類のご提出について

本文例:

「お疲れさまです。先日ご案内した年末調整書類の提出期限が11月15日となっております。まだご提出いただいていない方は、今週中にご対応いただけますようお願いいたします。控除証明書がまだお手元に届いていない場合は、その旨をお知らせください。届き次第の後日提出で対応いたします。」

04書類別の依頼ポイントと注意点

配偶者控除等申告書

配偶者の年間所得見積額の記載が必要です。パート勤務の配偶者の場合、年末近くにならないと正確な収入が確定しないケースがあります。その場合は見込額で記入してもらい、確定後に修正する運用で問題ありません。

保険料控除申告書

生命保険料・地震保険料・社会保険料(国民年金など個人で支払ったもの)・小規模企業共済等掛金の各控除証明書の原本添付が必須です。証明書の発送は保険会社によって10月〜11月とバラつきがあるため、「届いたものから順次提出してもよい」とアナウンスしておくと回収がスムーズになります。

住宅ローン控除申告書

住宅ローン控除の初年度は従業員自身が確定申告を行う必要があるため、年末調整で対応するのは2年目以降です。該当者がいる場合は、税務署から届く「住宅借入金等特別控除申告書」と金融機関の「残高証明書」の2点を提出してもらいます。

注意:控除証明書を紛失した場合、保険会社や金融機関に再発行を依頼すると1〜3週間かかることがあります。10月の初回案内時に「届いたらすぐ保管してください」と強く伝えることが、12月の作業遅延を防ぐ最大のポイントです。

05提出が遅れた場合の対処法

どれだけ段取りを整えても、提出が遅れる従業員は出てきます。以下のように対処しましょう。

  • 12月給与計算に間に合う場合:書類を受領し次第、年末調整計算に反映します。最終的に翌年1月31日までに正しい源泉徴収票を交付できれば法的には問題ありません。
  • 1月の給与で再年末調整する場合:翌年1月末日までであれば年末調整のやり直し(再年末調整)が可能です。12月に一旦控除なしで処理し、書類到着後に差額を精算する方法もあります。
  • それでも間に合わない場合:従業員本人に確定申告をしてもらうことになります。この場合は、その旨を本人に書面で伝え、確定申告の期限(2027年3月15日)を案内しましょう。

06創業期だからこそ仕組み化が大事

従業員が2〜3名の段階であれば、口頭で済ませてしまいがちですが、早い段階で回収フローを仕組み化しておくと、人数が増えたときに慌てずに済みます。具体的には以下の3点を整備しておくことをお勧めします。

  1. チェックリスト:従業員ごとに提出書類・添付書類・提出状況を一覧で管理する表を作成する
  2. テンプレートの保存:案内メール・リマインドメールの文面を来年以降も使えるように保存しておく
  3. スケジュールのカレンダー登録:10月・11月・12月の各タスクをGoogleカレンダー等に登録し、毎年リマインドされるよう設定する

年末調整は毎年必ず発生する業務です。初年度に丁寧に段取りを作っておけば、翌年以降は格段に楽になります。

この記事のまとめ
  • 年末調整で従業員から回収する書類は、扶養控除等申告書・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書(該当者のみ)の4種類
  • 10月中旬に初回案内、11月15日を一次提出期限、11月25日を最終期限とするスケジュールが安全
  • 控除証明書の紛失対策として、届いたらすぐ保管するよう早期に周知することが重要
  • 提出が遅れた場合も、翌年1月末までの再年末調整や従業員自身の確定申告で対応可能
  • 創業期のうちにチェックリスト・テンプレート・カレンダー登録で仕組み化しておくと翌年以降が楽になる