「秋の展示会に初めて出展するけど、出展料やブース装飾の費用はまとめて経費にしていいの?」「ディスプレイ什器を購入したけど、資産計上が必要なケースもあるらしい……」——2026年の秋に向けて、展示会への出展を検討するスタートアップや個人事業主から、こうしたご相談が増えています。展示会出展は新規顧客獲得の大きなチャンスですが、費目ごとの経理処理を誤ると、税務調査で否認されるリスクもあります。本記事では、費目別の勘定科目の振り分けから、10万円・30万円の少額資産特例の適用判断、消費税の仕入税額控除まで、具体的な仕訳例とともに解説します。

01展示会出展にかかる費用の全体像を整理する

展示会に出展する際に発生する費用は、大きく以下のカテゴリに分かれます。まずは全体像を把握しましょう。

  • 出展料(小間料):展示会主催者に支払うブーススペースの利用料
  • ブース装飾費・施工費:パネル制作、装飾施工、電気工事など
  • ディスプレイ什器・備品:展示台、モニター、テーブル、椅子など
  • ノベルティ・配布物の制作費:チラシ、パンフレット、試供品、名入れグッズなど
  • スタッフの旅費・宿泊費:出張交通費、ホテル代、日当
  • その他:通訳手配費用、搬入出の運送費、コンパニオン派遣費など

これらは一括で「広告宣伝費」として処理してしまいがちですが、金額や使用目的によって勘定科目や処理方法が異なります。以下、費目ごとに見ていきましょう。

02出展料(小間料)の勘定科目と処理

展示会の出展料は、自社の製品・サービスを不特定多数に宣伝するための費用であり、「広告宣伝費」として全額経費計上できます。これはもっともシンプルなケースです。

仕訳例:出展料330,000円(税込)を振り込んだ場合

(税抜経理方式の場合)

  • 借方:広告宣伝費 300,000円 / 貸方:普通預金 330,000円
  • 借方:仮払消費税等 30,000円

消費税の課税区分は「課税仕入れ」となり、仕入税額控除の対象です。なお、海外の展示会主催者に支払う出展料の場合は、リバースチャージ方式の適用有無を確認する必要があります。

03ブース装飾費・施工費——使い捨てか再利用かで判断が変わる

ブース装飾は、展示会ごとの「使い切り」か「繰り返し使えるもの」かで処理が大きく異なります。

使い切りの装飾・施工費の場合

展示会のためだけに施工し、会期終了後に撤去・廃棄する装飾パネルや壁面施工費は、「広告宣伝費」として全額経費にできます。

再利用可能なディスプレイ什器の場合

展示台やバックパネルのフレームなど、複数回の展示会で繰り返し使える什器は、取得価額に応じて次のように処理します。

  • 10万円未満:「消耗品費」または「広告宣伝費」として全額経費
  • 10万円以上20万円未満:「一括償却資産」として3年均等償却が可能
  • 10万円以上30万円未満:中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措法67条の5)を適用し、取得年度に全額経費計上が可能(年間合計300万円まで)
  • 30万円以上:「器具備品」等として資産計上し、耐用年数に応じて減価償却

ポイント:「一組」で判断する点に注意してください。展示台の天板と脚を別々に購入しても、通常は一体として使用するため合計額で判定します。たとえば天板8万円+脚4万円=合計12万円の場合、10万円以上の資産として扱います。個人事業主の場合、少額減価償却資産の特例は青色申告者のみ適用可能です。

仕訳例:再利用可能な展示パネルセット(取得価額25万円・税抜)を購入し少額減価償却資産の特例を適用する場合

  • 借方:減価償却費 250,000円 / 貸方:普通預金 275,000円
  • 借方:仮払消費税等 25,000円

※ 固定資産台帳への記載と、確定申告書への明細添付(法人の場合は別表十六(七))を忘れないようにしましょう。

04ノベルティ・配布物の制作費の処理

チラシやパンフレットの印刷費は「広告宣伝費」で問題ありません。名入れボールペンやエコバッグなどのノベルティも、不特定多数への配布が目的であれば広告宣伝費として処理します。

注意が必要なケース

  • 単価が高額なノベルティ(1個あたりの単価が概ね3,000円超):取引先や見込み顧客に対する「交際費」と認定される可能性があります。不特定多数にばらまくものか、特定の相手に渡すものかで判断が分かれます。
  • 試供品・サンプル:自社製品のサンプルを無償配布する場合、「見本品費」や「広告宣伝費」として処理します。消費税上は「事業として対価を得て行う資産の譲渡」に該当しないため、課税売上にはなりません。

05スタッフの旅費・宿泊費の処理

展示会に参加するスタッフの交通費・宿泊費は、通常の出張と同様に「旅費交通費」として経費計上します。日当を支給する場合は旅費規程に基づく合理的な金額であれば非課税となります。

仕訳例:スタッフ2名分の新幹線代・ホテル代合計88,000円を仮払いした場合

  • 借方:旅費交通費 88,000円 / 貸方:現金 88,000円

国内の旅費交通費は消費税の課税仕入れとして仕入税額控除の対象ですが、出張日当は不課税取引となるため区分に注意してください。

注意:展示会終了後の「打ち上げ」費用を旅費交通費に含めてしまうケースが見受けられます。社内の飲食は「福利厚生費」、取引先を交えた飲食は「交際費」として区分しましょう。法人の場合、1人あたり10,000円以下の飲食費は交際費から除外できる特例(措法61条の4第7項)の適用も検討してください。

06消費税の仕入税額控除における注意点

展示会関連費用の多くは課税仕入れに該当しますが、以下の点に注意が必要です。

  • 海外展示会の出展料:国外取引として不課税の場合がありますが、国内の主催者を通じた支払いの場合は課税取引となるケースもあります。契約内容を確認しましょう。
  • インボイス制度:2023年10月のインボイス制度開始以降、仕入税額控除にはインボイス(適格請求書)の保存が必要です。2026年8月現在、経過措置として免税事業者からの仕入れについて80%控除が認められていますが、2026年10月以降は50%に引き下げられます。装飾業者やノベルティ制作会社がインボイス発行事業者かどうかを事前に確認してください。

07費目別の勘定科目一覧

最後に、展示会関連費用の勘定科目を一覧で整理します。

  • 出展料(小間料)→ 広告宣伝費
  • ブース装飾・施工費(使い切り)→ 広告宣伝費
  • ディスプレイ什器(10万円未満)→ 消耗品費または広告宣伝費
  • ディスプレイ什器(10万円以上)→ 器具備品(資産計上+減価償却、少額特例適用の可否を検討)
  • チラシ・パンフレット印刷費 → 広告宣伝費
  • ノベルティ制作費(不特定多数配布)→ 広告宣伝費
  • ノベルティ(高額・特定相手向け)→ 交際費
  • スタッフ交通費・宿泊費 → 旅費交通費
  • 搬入出の運送費 → 荷造運賃または広告宣伝費
  • コンパニオン・通訳派遣費 → 広告宣伝費または外注費
この記事のまとめ
  • 出展料やブース装飾費(使い切り)は「広告宣伝費」として全額経費計上できる
  • 再利用可能なディスプレイ什器は取得価額により判断——10万円未満なら消耗品費、10万円以上30万円未満なら少額減価償却資産の特例の適用を検討、30万円以上なら資産計上して減価償却
  • ノベルティは不特定多数への配布なら広告宣伝費、高額品を特定の取引先に渡す場合は交際費に区分
  • スタッフの旅費は旅費交通費で処理し、日当(不課税)と交通費・宿泊費(課税)の消費税区分に注意
  • インボイス制度の経過措置の引き下げ(2026年10月以降は50%控除)を踏まえ、取引先のインボイス登録状況を事前確認すること