「売上は順調なのに、なぜか納税額が想定より大きい」——創業1〜2期目の12月決算法人や個人事業主から、毎年この時期にいただくご相談です。原因を探ると、年末の決算整理で未払費用・未払金の計上が漏れていたケースが大半を占めます。計上漏れは利益の過大計上、つまり税金の”払い過ぎ”に直結します。本記事では、2026年12月期の決算を控える方に向けて、見落としやすい10項目を具体的な仕訳例とともに整理します。
01未払費用・未払金の計上漏れが「税金の過払い」を生むメカニズム
法人税・所得税は「発生主義」に基づき、その期間に発生した費用を対応する事業年度(暦年)の経費として計上します。12月中にサービスの提供を受けていても、請求書の到着や支払いが翌年1月にずれ込むと、帳簿に載せ忘れてしまうことがあります。
たとえば、12月分の外注費30万円を計上し忘れた場合、利益が30万円過大に表示されます。法人実効税率を約34%とすると、概算で約10万2,000円の税金を余計に納めてしまう計算です。創業期のキャッシュは貴重ですから、正しい費用計上で”適正な納税額”に着地させることが重要です。
02見落としやすい未払費用・未払金 10項目チェックリスト
以下は、創業期の12月決算法人・個人事業主が特に計上漏れしやすい10項目です。仕訳例とあわせて確認してください。
項目1:社会保険料の事業主負担分(12月分)
12月分の社会保険料は翌年1月末に納付します。従業員負担分は預り金として毎月処理していても、事業主負担分の未払計上を忘れがちです。
仕訳例:法定福利費 150,000 / 未払費用 150,000
項目2:労働保険料の概算・確定差額
年度更新時に前払いした概算保険料と実際の確定保険料に差額が生じた場合、決算期末で精算仕訳が必要です。
仕訳例:法定福利費 30,000 / 未払費用 30,000(不足分の計上)
項目3:クレジットカード利用分(12月利用・1月以降引落し)
12月に利用したクレジットカードの引落しは翌年1月〜2月になります。利用日基準で費用計上しなければなりません。
仕訳例:消耗品費 55,000 / 未払金 55,000
項目4:年払いサブスクリプションの月割り(前払費用の振替)
たとえば2026年4月に年額12万円のクラウドサービスを一括払いした場合、2027年3月までの3か月分(3万円)は前払費用として翌期に繰り延べます。逆に11月に契約し年払いした場合は、当期分2か月を費用計上し残りを前払費用へ振り替えます。
仕訳例(翌期分の振替):前払費用 30,000 / 通信費 30,000
ポイント:短期前払費用の特例(法人税基本通達2-2-14)を適用すれば、一定の要件を満たす場合に年払い全額を当期の費用にできます。ただし「等質・等量のサービス」「継続適用」が条件ですので、初年度に特例を使うか否かは慎重に判断してください。
項目5:外注費の検収済み・未請求分
フリーランスへの外注で、12月中に検収(納品確認)が完了しているが請求書が届いていないケースです。発生主義では検収完了日で費用が確定します。
仕訳例:外注費 200,000 / 未払金 200,000
項目6:通信費・光熱費(12月利用・1月請求)
電気・ガス・インターネット回線などは検針日や締め日の関係で1月に請求が届きます。12月利用分は見積額でも計上するのが原則です。
仕訳例:水道光熱費 18,000 / 未払費用 18,000
項目7:従業員給与・賞与の未払分
月末締め翌月払いの給与体系であれば、12月分給与は翌年1月支払いとなるため未払計上が必要です。決算賞与を支給する場合は、通知要件(支給額の個別通知+翌期1か月以内の支給)を満たすことで当期の損金にできます。
仕訳例:給与手当 500,000 / 未払費用 500,000
項目8:家賃・リース料(後払い契約の場合)
オフィス家賃やコピー機リースが「当月分を翌月払い」の契約になっている場合、12月分の未払計上を忘れるケースがあります。
仕訳例:地代家賃 120,000 / 未払金 120,000
項目9:固定資産税の第3期・第4期分
固定資産税の納期は自治体により異なりますが、第3期(12月)や第4期(翌年2月)の未納付分は、賦課決定日基準で全額を当期費用にできるため、未払計上が可能です。
仕訳例:租税公課 45,000 / 未払金 45,000(第4期分)
項目10:税理士・社労士等の顧問料(12月分の後払い)
士業報酬が後払いの場合、12月分を未払計上します。源泉所得税の預り金も同時に仕訳する点に注意してください。
仕訳例:支払手数料 55,000 / 未払金 44,685、預り金 10,315(復興特別所得税含む源泉税)
03税務調査で否認されないための証拠書類の整え方
未払費用・未払金の計上は「架空経費」と疑われやすい論点でもあります。以下の3点を意識して証拠書類を整備しましょう。
- 契約書・発注書の保管:外注費や顧問料は契約書を必ず締結し、発注内容・金額・支払条件を明記します。
- 検収記録・納品確認メール:12月中に役務提供が完了した事実を示すために、検収書やチャット・メールの履歴を保存しておきます。PDFやスクリーンショットでの保存も有効です。
- 計上根拠メモの作成:見積額で計上した光熱費などは「何月分を、どの根拠(前月実績・検針票等)で計上したか」をExcel等にメモしておくと、調査時にスムーズに説明できます。
注意:実際には翌期にサービス提供を受ける費用を当期の未払費用として計上すると「期ずれ」として否認されるリスクがあります。あくまで「当期中に発生した費用」のみを未払計上する点を厳守してください。計上時期に迷う場合は、顧問税理士に相談されることをおすすめします。
04実務で使えるチェックフロー
決算作業に入る前に、以下のフローでチェックすると計上漏れを防ぎやすくなります。
- 12月の通帳・クレジットカード明細を出力し、引落し予定が翌年にずれている取引を洗い出す
- 外注先・仕入先に12月分の請求書の発行状況を確認する
- 上記10項目チェックリストと突き合わせて未計上がないか確認する
- 見積額で計上した項目は、翌期に確定額との差額を調整する旨をメモしておく
創業期はまだ取引件数が少ないため、この段階で仕組みを作っておけば、事業が拡大しても決算整理の精度を維持できます。
05まとめ
- 未払費用・未払金の計上漏れは、利益の過大計上と税金の過払いに直結する。外注費30万円の漏れで約10万円の過払いになるケースもある。
- 社会保険料の事業主負担分、クレジットカード利用分、年払いサブスク月割り、検収済み未請求の外注費など10項目を年末にチェックする。
- 証拠書類として契約書・検収記録・計上根拠メモの3点を整備すれば、税務調査でも適正な計上として認められやすい。
- 創業期の取引件数が少ないうちにチェック体制を構築しておくことが、将来の決算精度向上につながる。
