「株式を売却した利益はどの用紙に書けばいいの?」「赤字を来年に繰り越したいけれど、第四表って何?」――創業期の経営者や個人事業主にとって、確定申告書の”別表”や添付書類の使い分けは最初の大きなハードルです。令和7年分(2025年分)の確定申告期限は2026年3月16日でしたが、申告後に「別表の選択を間違えていた」と気づいて修正申告になるケースは少なくありません。本記事では、第三表(分離課税用)と第四表(損失申告用)の使いどころ、e-Taxでの添付書類の省略ルール、そして提出前のセルフチェックリストを2026年最新情報で整理します。

01そもそも確定申告書の「別表」とは?基本構成を押さえよう

個人の確定申告書は、大きく分けて以下の構成になっています。

  • 確定申告書(第一表・第二表):すべての申告者が使用する基本の用紙。所得金額・所得控除・税額を記載します。
  • 第三表(分離課税用):土地・建物の譲渡所得、株式等の譲渡所得、先物取引の雑所得など、他の所得と分離して税額を計算する必要がある場合に使用します。
  • 第四表(損失申告用):事業所得や不動産所得などで純損失が生じた場合、または雑損控除の適用で所得がマイナスになった場合に、損失の繰越控除・繰戻還付を受けるために使用します。

「第三表と第四表は同時に使うこともある」という点が見落とされがちです。たとえば、株式の譲渡損失を翌年以降に繰り越す場合、分離課税の計算を第三表で行いつつ、損失の繰越を第四表に記載する必要があります。

02第三表はいつ使う?——分離課税が必要な所得の具体例

第三表が必要になる代表的なケースは次のとおりです。

  1. 上場株式等の譲渡所得:特定口座(源泉徴収あり)で完結させず、確定申告を選択した場合。税率は所得税15.315%+住民税5%の合計20.315%です。
  2. 土地・建物の譲渡所得:不動産売却益は総合課税ではなく分離課税。所有期間5年以下(短期)か5年超(長期)かで税率が異なります。
  3. 先物取引に係る雑所得等:FXや日経225先物などのデリバティブ取引が該当します。税率は一律20.315%です。
  4. 山林所得:山林を伐採・譲渡した場合に5分5乗方式で計算します。

ポイント:スタートアップ経営者の方がエンジェル税制(特定中小会社の株式譲渡の特例)を利用する場合も、譲渡所得の計算は第三表で行います。令和7年分からの税制改正事項がないか、国税庁の手引きを必ず確認してください。

第三表の記載で特に間違えやすいポイント

  • 第一表の「税金の計算」欄に分離課税分の税額を転記し忘れる。
  • 上場株式等の譲渡損失と配当所得の損益通算を行う場合、「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の添付を忘れる。
  • 特定口座年間取引報告書の数字を転記する際、取得費と譲渡費用を逆に入力してしまう。

03第四表はいつ使う?——損失申告と繰越控除のしくみ

第四表は「損失申告用」と名前がついているとおり、その年の所得が赤字になったとき、あるいは前年以前の赤字を当年の所得から差し引きたいときに使います。

第四表が必要な主なケース

  1. 事業所得の純損失の繰越控除:青色申告者であれば、純損失を翌年以後3年間繰り越して各年の所得から控除できます。白色申告者でも変動所得・被災事業用資産の損失に限り繰越が可能です。
  2. 雑損控除の繰越:災害・盗難等による雑損失が大きく、その年の所得から引ききれない場合は翌年以後3年間繰り越せます。
  3. 上場株式等の譲渡損失の繰越控除:株式の譲渡損失を翌年以後3年間繰り越す場合、第三表と第四表の両方を提出します。
  4. 純損失の繰戻還付:青色申告者は前年分の所得税の還付を受ける選択も可能です。この場合は「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」も必要になります。

たとえば、2025年に創業したばかりの個人事業主が初年度300万円の赤字を出した場合、第四表(一)で損失額を記載し、第四表(二)で翌年以降への繰越額を明示します。翌年(2026年分)の確定申告では、第四表(二)に前年からの繰越損失額を記入し、黒字と相殺する流れです。

注意:損失の繰越控除を受けるには、赤字の年だけでなく、その後の年も連続して確定申告書を提出する必要があります。「翌年は黒字だったから申告しなくてもいい」と放置すると、繰越控除の権利を失いますのでご注意ください。

04e-Taxで省略できる添付書類・できない書類【2026年最新】

e-Tax(電子申告)を利用すると、一定の添付書類は提出を省略できます。ただし「省略=不要」ではなく、原則として法定申告期限から5年間は書類を手元に保管し、税務署から求められた場合に提示・提出する義務があります。

省略できる主な書類

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 医療費控除の明細書に基づく医療費の領収書(明細書自体は提出が必要)
  • 社会保険料控除の証明書
  • 生命保険料控除・地震保険料控除の証明書
  • 寄附金控除の受領証(ふるさと納税の受領証を含む)
  • 特定口座年間取引報告書

省略できない主な書類

  • 青色申告決算書(または収支内訳書):申告書と一体として電子データで送信が必要です。
  • 譲渡所得の内訳書(不動産譲渡の場合):PDF等での送信または郵送が求められます。
  • 住宅借入金等特別控除の初年度適用時の登記事項証明書・売買契約書の写し等:初年度は原本または写しの提出が必要です(2年目以降は省略可)。
  • 本人確認書類(マイナンバーカード方式の場合は省略可)

「特定口座年間取引報告書は省略できるが、譲渡所得の内訳書は省略できない」という違いを押さえておきましょう。株式の譲渡と不動産の譲渡では取り扱いが異なります。

05提出前のセルフチェックリスト——修正申告を防ぐ10項目

申告書を提出する前に、以下の項目を順番に確認することで、記載ミスや別表の選択間違いを防げます。

  1. 分離課税の対象となる所得があるか → 該当すれば第三表を作成しているか確認。
  2. 損失(赤字)が発生しているか、または前年以前の繰越損失があるか → 該当すれば第四表を作成しているか確認。
  3. 第三表と第四表の両方が必要なケース(株式譲渡損失の繰越等)に該当していないか。
  4. 第三表の税額が第一表の「税金の計算」欄に正しく転記されているか。
  5. 特定口座年間取引報告書の数値と第三表の金額が一致しているか。
  6. 青色申告決算書(または収支内訳書)の所得金額が第一表と一致しているか。
  7. 各種控除証明書の金額と申告書の記載額にズレがないか。
  8. マイナンバーの記載漏れがないか。
  9. e-Taxの場合、送信前に「帳票一覧」で必要な別表・付表がすべて含まれているか。
  10. 添付書類で省略できないものを郵送・持参する段取りができているか。

このチェックリストをプリントアウトして、一つずつ消し込んでいくだけでも、修正申告のリスクは大幅に減らせます。

06迷ったら早めの相談を——申告期限後の修正にはペナルティも

申告期限後に誤りに気づいた場合、修正申告では追加の本税に対して延滞税が課されます。さらに、過少申告加算税(原則10%、期限内に自主修正すれば不適用)が上乗せされるケースもあります。「別表を出し忘れていた」「繰越損失の金額を間違えていた」といった単純なミスでも、税務署から指摘を受けてからの修正は加算税の対象となり得ます。

令和7年分の確定申告期限(2026年3月16日)を過ぎた今の時期でも、誤りに気づいた場合はできるだけ早く対応することが重要です。自主的な修正であれば加算税が免除される場合もあります。

この記事のまとめ
  • 第三表は株式譲渡・不動産譲渡・先物取引など分離課税の所得がある場合に使用する。
  • 第四表は純損失や雑損失の繰越控除・繰戻還付を受ける場合に使用する。株式譲渡損失の繰越では第三表と第四表の両方が必要。
  • 損失の繰越控除を受けるには、赤字の年だけでなく翌年以降も連続して確定申告が必要。
  • e-Taxでは源泉徴収票や控除証明書は提出省略可。ただし5年間の保管義務あり。青色申告決算書や不動産譲渡の内訳書は省略不可。
  • 提出前に10項目のセルフチェックリストを活用し、修正申告のリスクを減らそう。
  • 申告後に誤りに気づいたら、加算税を避けるためにも早めの自主修正を。