「去年は利益が出たけど、今年は売上が激減している」「年の途中で法人成りしたのに、個人の予定納税がそのまま引き落とされてしまった」――そんな経験はありませんか。予定納税は前年の所得をベースに自動的に課されるため、当年の実態とかけ離れた金額を先払いさせられるケースは珍しくありません。特にスタートアップや創業間もない個人事業主は業績の変動が大きく、気づかないまま資金を拘束されていることがあります。本記事では、2026年の最新情報をもとに、予定納税の仕組みから過大納付の防ぎ方、確定申告での精算手続きまでを時系列で整理します。

01そもそも予定納税とは?前年基準で決まる仕組みを確認

予定納税とは、前年の申告納税額(予定納税基準額)が15万円以上になる場合に、その年の所得税の一部を前払いする制度です。具体的には、前年の確定申告で計算された所得税額(復興特別所得税を含む)から源泉徴収税額を差し引いた金額が基準となります。

予定納税のスケジュール(2026年の場合)

  • 第1期:2026年7月1日~7月31日(基準額の3分の1)
  • 第2期:2026年11月1日~11月30日(基準額の3分の1)
  • 確定申告(精算):2027年2月16日~3月15日(残りの3分の1相当+過不足の精算)

たとえば、2025年分の確定申告で予定納税基準額が90万円と算出された方は、2026年7月に30万円、11月に30万円を前払いし、翌年の確定申告で残額を精算する流れになります。

ポイント:予定納税基準額の通知は、毎年6月中旬頃に税務署から届きます。2026年であれば6月15日前後に届いているはずですので、届いていない方は紛失の可能性も含め税務署へ確認しましょう。

02過大引落しが起きやすい3つのパターン

予定納税額は「前年の所得」がベースのため、当年に以下のような変化があると、実際の税額よりはるかに大きい金額を先払いすることになります。

パターン1:業績の急激な悪化

前年に大型案件が集中して高い売上を計上した個人事業主が、翌年は受注が減少し売上が半減するケースです。前年基準の予定納税額がそのまま課されるため、手元資金が大幅に圧迫されます。

パターン2:年度途中の廃業

2026年の途中で個人事業を廃業した場合、廃業後は事業所得がゼロになりますが、すでに第1期の予定納税が引き落とされていることがあります。廃業届を出しても予定納税は自動的には止まりません。

パターン3:年度途中の法人成り

たとえば2026年4月に法人を設立し、個人事業から法人へ移行した場合、個人としての事業所得は1月~3月の3か月分のみとなります。しかし予定納税は12か月分の前年所得がベースのため、実際の税額に対して大幅な過大納付になりがちです。

03「減額承認申請」で過大納付を未然に防ぐ

過大な予定納税を防ぐ正式な手続きが、所得税の「予定納税額の減額承認申請」です。当年の所得が前年より大幅に減少する見込みがある場合に、税務署に対して予定納税額の引き下げを申請できます。

申請期限(2026年の場合)

  1. 第1期分と第2期分をまとめて減額する場合:2026年7月15日まで
  2. 第2期分のみを減額する場合:2026年11月15日まで

申請には「予定納税額の減額承認申請書」を使用し、当年の6月30日時点(第1期・第2期両方の減額の場合)または10月31日時点(第2期のみの場合)の現況に基づく見積額を記載します。

注意:2026年7月22日現在、第1期分の減額承認申請の期限(7月15日)はすでに過ぎています。第1期分の予定納税を納付済みで、今後さらに業績悪化が見込まれる方は、第2期分の減額承認申請(期限:11月15日)の準備を早めに進めてください。出し忘れると、確定申告まで資金が戻りません。

04減額申請を出し忘れた場合の「確定申告での精算」手続き

減額承認申請を出さずに予定納税を全額納付してしまった場合でも、確定申告で精算(還付)を受けることができます。手続きの流れは次のとおりです。

手順1:確定申告書に予定納税額を正しく記載する

確定申告書の第一表にある「予定納税額」欄(第1期分・第2期分それぞれ)に、実際に納付した金額を記載します。この記載がないと還付計算が行われませんので、必ず確認してください。

手順2:還付口座を指定する

還付が発生する場合は、確定申告書に還付金の受取口座を記入します。本人名義の口座であることが必要です。

手順3:還付申告は1月から提出可能

還付を受けるための確定申告は、通常の申告期間(2月16日~)を待つ必要はなく、翌年1月1日から提出できます。2026年分であれば2027年1月から提出可能ですので、資金繰りを早期に改善したい方は年明け早々に提出しましょう。

還付にかかる期間の目安

e-Taxで申告した場合はおおむね2~3週間、書面提出の場合は1か月~1か月半程度で還付金が振り込まれます。

05法人成りした年の注意点:個人と法人の「二重管理」

法人成りした年は、個人事業としての最終申告と、法人の第1期の申告が並行する形になります。この時期に見落としがちなポイントを整理します。

  • 個人の予定納税:法人を設立しても個人の予定納税義務は自動的には消滅しません。減額承認申請を行わないと、法人成り後も引き落とされ続けます。
  • 個人の確定申告:法人成りした年も、個人として1月1日から法人成り日前日までの所得を確定申告する必要があります。この申告で予定納税との精算(還付)が行われます。
  • 法人の消費税:新設法人で資本金1,000万円未満の場合、原則として設立1期目・2期目は消費税の免税事業者となりますが、インボイス登録をしている場合は課税事業者となるため注意が必要です。

06来年以降、同じ失敗を繰り返さないための3つの管理術

過大な予定納税による資金拘束を防ぐために、以下の習慣を取り入れてください。

  1. 6月に届く予定納税通知を即座に確認:通知が届いたら、当年の業績見込みと照らし合わせて減額の必要性を判断します。「とりあえず払っておこう」は資金繰りの敵です。
  2. 月次決算で年間着地を予測する:クラウド会計ソフトを活用し、遅くとも6月末までに上半期の損益を把握します。年間の見込み所得が前年を大きく下回る場合は、減額承認申請の準備に入りましょう。
  3. 税理士と年2回の「予定納税レビュー」を実施:第1期の申請期限前(7月上旬)と第2期の申請期限前(11月上旬)の年2回、業績見込みと予定納税額の妥当性を税理士とともに確認する場を設けるのが理想です。

当事務所でも、顧問先の皆さまには毎年6月に予定納税額の見直しをご提案しています。業績変動の激しいスタートアップや、法人成りを検討中の個人事業主の方は、早めのご相談が資金繰り改善の第一歩です。

この記事のまとめ
  • 予定納税は前年の所得が基準となるため、業績悪化・廃業・法人成りした年には過大納付になりやすい
  • 過大納付を防ぐには「予定納税額の減額承認申請」を期限内に提出することが重要(第1期・第2期まとめて減額する場合は7月15日まで、第2期のみは11月15日まで)
  • 減額申請を出し忘れた場合でも、確定申告で予定納税額を正しく記載すれば還付を受けられる。還付申告は翌年1月から提出可能
  • 法人成りした年は個人と法人の「二重管理」が必要。個人の予定納税は法人設立後も自動停止されない
  • 6月の予定納税通知が届いたら即座に当年の業績見込みと照合し、減額申請の要否を判断する習慣をつけよう