「会社のドメインを取得したけど、これは経費で落とせるの?」「商標登録の出願費用は一括で経費にしていい?」——創業期のスタートアップ経営者や個人事業主の方から、こうしたご質問をいただくことが非常に多くなっています。ドメイン名の取得費用や商標登録にかかる各種費用は、金額や支出の性質によって「一括経費」になるケースと「無形固定資産として資産計上」すべきケースに分かれます。本記事では、2026年7月時点の税務上の取扱いをもとに、支出の種類ごとの勘定科目と償却期間をフローチャート形式で整理します。

01ドメイン取得・更新費用の会計処理

ドメイン取得費用は原則「経費処理」でOK

一般的な「.com」「.jp」「.co.jp」などのドメイン名を年間契約で取得する場合、その取得費用は通常1,000円〜5,000円程度です。この金額帯であれば、取得年度に「通信費」や「支払手数料」として一括経費処理することが実務上の通例です。

ドメインは登録期間(通常1年〜10年)の使用権を得るものであり、独占排他的な権利としての性質は限定的です。国税庁の取扱いにおいても、通常のドメイン取得費用を無形固定資産として計上すべきとする明確な規定はなく、年間契約のドメイン取得費用は期間対応の経費として処理するのが一般的です。

ドメインの年間更新料

ドメインの年間更新料(年額1,000円〜数千円程度)は、その支払い対象期間に対応させて「通信費」または「支払手数料」として経費計上します。複数年分を一括で支払った場合は、原則として期間按分しますが、年額が少額であれば短期前払費用の特例(法人税基本通達2-2-14)の適用が可能な場合もあります。

高額なプレミアムドメインの場合は要注意

一方で、オークションや仲介業者を通じて取得する「プレミアムドメイン」は数十万円〜数百万円に達することがあります。このような場合には、単なる年間使用料とは異なり、事業上の価値ある権利の取得と見なされる可能性があります。

ポイント:高額なプレミアムドメイン(目安として数十万円以上)を取得した場合は、税務上「無形固定資産(電気通信施設利用権等に準ずるもの)」として資産計上し、耐用年数に応じた償却を検討する必要があります。明確な法定耐用年数の定めがないため、契約期間や利用実態に応じて合理的な耐用年数を設定し、税務署に確認を取ることをお勧めします。

02商標登録にかかる費用の会計処理——出願から登録まで

商標権は「無形固定資産」として資産計上が原則

特許庁に商標登録が認められ、商標権が発生した場合、その取得にかかった費用の合計は「無形固定資産(商標権)」として資産計上するのが原則です。法人税法施行令・所得税法施行令に基づく法定耐用年数は10年(定額法で償却)と定められています。

商標権の取得価額に含める費用

商標権の取得価額に算入すべき主な支出は以下のとおりです。

  • 特許庁への出願料(1区分あたり3,400円+区分数×8,600円)
  • 特許庁への登録料(1区分あたり32,900円 ※10年一括納付の場合)
  • 弁理士への出願代行報酬(相場:5万円〜15万円程度)
  • 商標調査費用(弁理士に依頼した場合の調査報酬)

例えば、弁理士報酬10万円、出願料12,000円(1区分の場合)、登録料32,900円であれば、合計約145,000円が商標権の取得価額となり、10年間で定額法により償却します(年間14,500円の減価償却費)。

少額の場合でも資産計上が必要?

商標権は法律上の権利であり、減価償却資産の中でも「無形固定資産」に分類されます。無形固定資産には、有形固定資産に適用される「少額減価償却資産の一括損金算入(取得価額10万円未満)」の規定(法人税法施行令133条)が同様に適用されます。したがって、取得価額の合計が10万円未満であれば、一括で経費処理することが可能です。

また、中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措法67条の5)により、取得価額が30万円未満であれば、年間合計300万円を限度として全額を損金算入できます(青色申告法人・青色申告個人事業主に限る)。創業期の商標登録費用は多くの場合30万円未満に収まるため、この特例を活用して一括経費処理できるケースが実務上は多くなっています。

注意:少額減価償却資産の特例は2026年度税制改正で適用期限が延長されていますが、将来的に制度変更の可能性があります。また、この特例は青色申告が要件ですので、白色申告の場合は原則どおり10年償却が必要です。適用にあたっては最新の税制を必ずご確認ください。

03更新料・争訟費用の取扱い

商標権の更新登録料

商標権の存続期間は登録日から10年ですが、更新登録の申請により何度でも10年ごとに延長できます。更新登録料(1区分あたり43,600円 ※10年一括納付の場合)は、既存の商標権の価値を維持するための支出であるため、「商標権(無形固定資産)」として資産計上し、次の更新までの期間(10年)で償却するのが原則です。

商標に関する争訟費用

他社から商標権侵害の警告を受けた場合や、逆に自社の商標権を侵害された場合の弁護士費用・訴訟費用については、以下のように区分します。

  • 権利を防衛するための訴訟費用(自社商標の侵害に対する訴訟):「支払手数料」または「雑費」として発生年度の経費処理
  • 商標権を取得するための争訟費用(異議申立て・審判請求など):商標権の取得価額に算入して資産計上
  • 損害賠償金の支払い:事業関連であれば経費処理可能(ただし故意・重過失の場合は損金不算入となるケースあり)

04フローチャートで判断——経費 or 資産計上?

以下のフローで判断すると迷いにくくなります。

  1. ドメイン取得・更新費用か?
    → 通常のドメイン(年額数千円程度):「通信費」等で経費処理
    → プレミアムドメイン(数十万円以上):無形固定資産として資産計上を検討
  2. 商標登録に関する費用か?
    → 商標権の取得価額(出願料+登録料+弁理士報酬等)の合計を算出
  3. 取得価額は10万円未満か?
    → はい:一括経費処理(少額減価償却資産)
  4. 取得価額は30万円未満か?(青色申告の場合)
    → はい:少額減価償却資産の特例で一括経費処理が可能
  5. 上記に該当しない場合
    → 「無形固定資産(商標権)」として資産計上し、法定耐用年数10年で定額法により償却

05創業期に押さえておきたい実務上のポイント

開業前に支出した場合は「開業費」になる?

法人設立前・開業届提出前に支出したドメイン取得費用や商標登録費用は、「開業費(繰延資産)」に含められる場合があります。ただし、商標権のように明確に無形固定資産に該当するものは、開業費ではなく取得時点で無形固定資産として計上するのが正確な処理です。一方、ドメインの年間使用料のような少額の経常的支出であれば、開業費に含めて処理することも認められる余地があります。

消費税の取扱い

特許庁への出願料・登録料は「国等が行う役務の提供」として非課税です。一方、弁理士報酬やドメイン取得・更新費用は課税仕入れとなります。消費税の仕入税額控除を受ける際は、この区分を正確に行ってください。

この記事のまとめ
  • 通常のドメイン取得・更新費用(年額数千円程度)は「通信費」等で経費処理。プレミアムドメイン(高額取得)は資産計上を検討。
  • 商標権の取得費用(出願料+登録料+弁理士報酬)は原則「無形固定資産(商標権)」として計上し、法定耐用年数10年で償却。
  • 取得価額10万円未満は一括経費処理可能。青色申告なら30万円未満でも特例により一括損金算入が可能。
  • 商標権の更新登録料は資産計上して10年償却。権利防衛のための訴訟費用は発生年度の経費。
  • 特許庁への出願料・登録料は消費税非課税。弁理士報酬・ドメイン費用は課税仕入れ。