「昨年は順調に利益が出たのに、今年に入ってから売上が激減している……。それなのに税務署から”予定納税のお知らせ”が届いて、このまま払ったら資金繰りが回らない」——創業期やスタートアップの経営者にとって、こうした状況は珍しくありません。前年の実績をもとに自動的に算出される予定納税は、当年の業績が悪化しているときほど重荷になります。本記事では、2026年7月15日が申請期限となる第1期分の減額承認申請について、具体的な記載方法・添付書類・スケジュールを実務に即して解説します。

01そもそも予定納税とは?——仕組みをおさらい

予定納税とは、前年分の所得税(および復興特別所得税)の確定申告額が15万円以上の場合に、当年の所得税の一部を前払いする制度です。具体的には、前年の「予定納税基準額」の3分の1ずつを、第1期(7月1日~7月31日)と第2期(11月1日~11月30日)の年2回に分けて納付します。

予定納税額の計算例

たとえば、2025年分の確定申告で所得税の予定納税基準額が60万円だった場合、2026年の予定納税額は次のとおりです。

  • 第1期(2026年7月):60万円 × 1/3 = 20万円
  • 第2期(2026年11月):60万円 × 1/3 = 20万円

残りの20万円は確定申告時に精算します。業績が好調なら問題ありませんが、当年の売上が大幅に減少している場合や、設備投資・事業転換で一時的に利益が圧縮されている場合には、この前払いが大きなキャッシュアウトとなります。

02減額承認申請の対象になるケース

所得税法第111条により、当年の6月30日時点の状況から見積もった年間の所得税額が予定納税基準額より少なくなる場合、減額承認申請を行うことができます。代表的なケースは以下のとおりです。

  • 売上の減少・取引先の倒産などで事業所得が大幅に下がっている
  • 大型の設備投資や修繕費で経費が増加している
  • 病気・災害などで休業期間が発生した
  • 前年は譲渡所得や一時所得など臨時的な収入があったが、当年は見込めない
  • 新たに住宅ローン控除や医療費控除など大きな控除が適用される

ポイント:法人税には「仮決算に基づく中間申告」という類似の制度がありますが、本記事で解説する減額承認申請は所得税(個人事業主)の制度です。法人で中間納付額を減らしたい場合は、仮決算による中間申告書を提出する方法を検討してください。

03第1期分の申請期限は2026年7月15日——スケジュールを逆算する

減額承認申請書の提出期限は、第1期分と第2期分で異なります。2026年のスケジュールは次のとおりです。

  • 第1期分(+第2期分をまとめて申請する場合):2026年7月1日~7月15日
  • 第2期分のみ:2026年11月1日~11月15日

本日2026年7月1日時点で、第1期分の期限まであと2週間です。以下の逆算スケジュールを参考に、早めに準備を進めてください。

実務スケジュール例

  1. 7月1日~3日:1月~6月の売上・経費データを会計ソフトから集計し、上半期の損益計算書を作成する
  2. 7月4日~7日:7月~12月の売上・経費を見積もり、年間の所得税額を試算する
  3. 7月8日~10日:「予定納税額の減額承認申請書(所得税及び復興特別所得税)」を記入する
  4. 7月11日~14日:添付書類を最終確認し、所轄税務署へ提出(e-Tax提出も可能)
  5. 7月15日:提出期限

注意:7月15日は「届出」ではなく「申請」であるため、税務署の承認が必要です。期限を1日でも過ぎると申請自体が受理されません。郵送の場合は消印日が提出日となるため、7月13日頃までの投函を強く推奨します。e-Taxであれば7月15日23時59分まで送信可能です。

04減額承認申請書の書き方——記載のポイントを実例で解説

申請書の正式名称は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額承認申請書」で、国税庁のWebサイトからダウンロードするか、e-Taxで作成できます。記載項目は大きく分けて3つのブロックです。

ブロック1:申告納税見積額の計算

2026年分の年間所得金額・所得控除・税額控除を見積もり、最終的な所得税額を記入します。実務上は、1月~6月の実績を2倍にする方法が簡便ですが、下半期に大きな変動が見込まれる場合は月別で積み上げるほうが精度が高くなります。

記載例:前年の事業所得が800万円、当年上半期の事業所得実績が250万円の場合、年間見積りは500万円程度となり、所得税の見積額は前年より大幅に減少します。この金額をもとに減額後の予定納税額を記入します。

ブロック2:減額を求める理由

「申請の理由」欄には、業績が悪化した具体的な事情を簡潔に記入します。以下のような書き方が一般的です。

  • 「主要取引先との契約終了により、2026年1月以降の売上が前年比40%減少しているため」
  • 「2026年4月に事業用設備(○○機器)を購入(取得価額350万円)し、減価償却費が増加するため」
  • 「代表者の入院・療養により2026年2月~4月の約3か月間、事業活動を休止したため」

ブロック3:添付書類

申請書とあわせて以下の書類を添付します。

  1. 2026年1月~6月の損益計算書(または収支明細書):会計ソフトから出力した月次推移表でも構いません。税務署が「確かに業績が悪化している」と判断できる資料が求められます。
  2. 7月~12月の業績見通しメモ(任意):厳密には必須ではありませんが、見積りの根拠を補足する資料として添付すると説得力が増します。

なお、青色申告者であれば日頃から帳簿を整備しているため、上半期の損益計算書はスムーズに作成できるはずです。白色申告者の場合も、領収書や請求書をもとに簡易的な収支をまとめれば対応可能です。

05申請が却下されるケースと注意点

減額承認申請は提出すれば自動的に認められるわけではなく、税務署長が内容を審査したうえで承認・却下を判断します。却下されやすい典型的なケースを把握しておきましょう。

却下されやすいケース

  • 見積額の根拠が不十分:損益計算書が添付されていない、または数字の裏づけがない場合
  • 減額幅が過大:上半期の実績から見て「年間所得ゼロ」など極端な見積りは疑義を持たれます
  • 期限後の提出:7月15日を過ぎた申請は受理されません(第2期分のみの申請は11月15日まで可能)

却下された場合の対応

申請が却下された場合、当初の予定納税額をそのまま納付する必要があります。ただし、年間の所得が実際に減少していれば、確定申告時に差額は還付されます。つまり、一時的なキャッシュアウトは避けられませんが、最終的に税額が過大になることはありません。

06減額承認が認められた後の流れ

税務署から承認通知が届けば(通常、申請から数週間以内)、減額後の金額で予定納税を行います。仮に当初の第1期予定納税額が20万円で、申請により8万円に減額された場合、7月31日までに8万円を納付すれば足ります。

なお、第1期の申請時に第2期分もまとめて減額申請できます。下半期も引き続き業績悪化が見込まれる場合は、7月15日の申請で第1期・第2期の両方を申請しておくと、11月に再度手続きする手間を省けます。

07実務上のワンポイントアドバイス

創業2~3年目の経営者に多いのが、「初年度に大きな売上が立ち、翌年に予定納税が発生するが、実際には投資フェーズで利益が出ていない」というパターンです。この場合、減額承認申請を活用することで数十万円単位のキャッシュを手元に残すことができます。

また、申請書の作成や損益計算書の準備に不安がある場合は、顧問税理士に早めに相談することをおすすめします。7月15日の期限は動かせませんので、「来週やろう」と後回しにすると間に合わなくなるリスクがあります。

この記事のまとめ
  • 予定納税は前年の所得税が15万円以上の場合に発生し、当年の業績とは無関係に課される
  • 業績悪化時は「予定納税額の減額承認申請書」を提出して納付額を減らせる
  • 第1期分の申請期限は2026年7月15日(第2期分もまとめて申請可能)
  • 添付書類として2026年1月~6月の損益計算書を準備する
  • 見積額の根拠が不十分だと却下されるため、帳簿に基づく正確な数字を記載する
  • 却下されても確定申告時に差額は還付されるが、一時的なキャッシュアウトは発生する