8月のお盆明けに届いた封筒を開くと、都道府県から届いた「個人事業税の納税通知書」。一方で、すでに届いている所得税の「予定納税の通知書」も手元に――。「これ、どっちがどの税金?」「両方払うの?」と戸惑う個人事業主の方は少なくありません。創業して間もない方ほど、2つの納付書を混同しやすく、資金繰りにも影響が出がちです。本記事では、2026年8月に届く2つの通知書の違いを一覧表で整理し、資金ショートを防ぐ口座設計の方法まで具体的にお伝えします。
018月に届く「2つの通知書」の正体を整理する
個人事業税の納税通知書とは
個人事業税は、都道府県が課す地方税です。前年(2025年分)の事業所得をもとに計算され、8月に第1期の納税通知書が届きます。法定業種に該当する場合に課税され、税率は業種によって3~5%です。事業主控除として年間290万円が差し引かれるため、所得が290万円以下であれば課税されません。
所得税の予定納税とは
予定納税は、国税である所得税の前払い制度です。前年の所得税額(予定納税基準額)が15万円以上の場合、その3分の1ずつを第1期(7月末)と第2期(11月末)に前払いします。2026年の場合、第2期の納付期限は2026年11月30日(月曜日)です。11月が期限とはいえ、減額申請を検討するなら8月中の準備が有利です。
一覧表で比較する
| 項目 | 個人事業税(第1期) | 所得税の予定納税(第2期) |
|---|---|---|
| 課税主体 | 都道府県(地方税) | 国(国税) |
| 計算の根拠 | 前年の事業所得 ×税率(3~5%) ※事業主控除290万円あり |
前年の所得税額の1/3 |
| 納付期限(2026年) | 第1期:2026年8月31日 第2期:2026年11月30日 |
第1期:2026年7月31日 第2期:2026年11月30日 |
| 確定申告での経費算入 | 必要経費に算入できる(租税公課) | 経費にならない(所得税の前払い) |
| 届く封筒の差出人 | 都道府県税事務所 | 税務署 |
ポイント:個人事業税は支払った年の「租税公課」として必要経費に算入できますが、所得税の予定納税は経費にはなりません。仕訳処理を間違えると確定申告で修正が必要になりますので、この違いは必ず押さえておきましょう。
02混同しやすい3つの落とし穴
落とし穴1:封筒を開けずに放置する
お盆休みの前後に届くため、封筒を開封しないまま期限を過ぎるケースがあります。延滞税や延滞金が発生するだけでなく、督促状が届くと精神的な負担も大きくなります。届いた封筒はその日のうちに開封し、納付期限をカレンダーに記入しましょう。
落とし穴2:個人事業税を「所得税の追加」と勘違いする
「確定申告で所得税を払ったのに、なぜまた請求が来るのか」と驚く方がいます。個人事業税は所得税とは別の税金です。確定申告書のデータが都道府県に共有され、自動的に課税される仕組みのため、自分で申告する必要はありませんが、届いたら支払い義務があります。
落とし穴3:予定納税の減額申請を知らない
2026年に入って売上が大幅に下がった場合、予定納税の減額申請が可能です。第2期分の減額申請期限は2026年11月15日ですが、必要書類の準備を考えると8月中に着手するのが現実的です。業績悪化が明らかなら、資金繰り改善のために検討しましょう。
03資金ショートを防ぐ「口座分離」の設計方法
なぜ口座を分けるのか
事業用口座に売上も経費も税金もすべて混在していると、「今いくら自由に使えるお金があるのか」が見えなくなります。特に8月は個人事業税と予定納税が重なるため、まとまった資金が必要です。口座を分離することで「使えるお金」と「税金用のお金」を明確に区別できます。
3口座方式のすすめ
おすすめは、以下の3つの口座を使い分ける方法です。
- メイン事業口座:売上の入金と経費の支払いに使用する口座。日常の事業資金を管理します。
- 納税プール口座:毎月、売上の一定割合を移動させ、税金の支払い専用に使う口座。所得税・住民税・個人事業税・消費税をここから支払います。
- 生活費口座:事業主の生活費を毎月定額で移動させる口座。事業資金と生活費の混在を防ぎます。
月次プール額の目安
納税プール口座に毎月いくら移すべきか、ざっくりとした目安を示します。
- 所得税・住民税分:売上(経費差引後の粗利ベース)の約15~20%
- 個人事業税分:粗利の約3~5%(法定業種・税率による)
- 消費税分(課税事業者の場合):売上の約3~5%(簡易課税のみなし仕入率による)
例えば、月の粗利が80万円の個人事業主であれば、80万円 × 20%(所得税・住民税)+ 80万円 × 4%(個人事業税)= 約19.2万円を毎月プールしておけば、年間で約230万円。これで主要な税金の支払いに備えられる計算です。
注意:上記はあくまで目安です。青色申告特別控除、扶養控除、小規模企業共済等の各種控除により実際の税額は変動します。正確な税額を知りたい場合は、税理士にご相談ください。
048月中にやるべきアクション3つ
2026年8月12日現在、お盆休みが終わったらすぐに着手したい3つのアクションをまとめます。
- 届いた通知書を開封・仕分けする:都道府県税事務所からの個人事業税か、税務署からの予定納税か、差出人で判別し、それぞれの納付期限をカレンダーやリマインダーに登録します。
- 予定納税の減額申請を検討する:2026年の事業実績が前年より大幅に下回っている場合は、第2期分の減額申請を11月15日までに行います。8月中に上半期の業績をまとめ、減額の可否を判断しましょう。
- 納税プール口座の残高を確認する:8月末の個人事業税第1期の納付に十分な残高があるか確認し、不足があれば事業口座から補充します。11月の予定納税第2期と個人事業税第2期に向けたプールも始めましょう。
05帳簿上の仕訳を間違えない
最後に、会計ソフトでの仕訳の違いを整理します。
個人事業税を支払ったとき
借方:租税公課 / 貸方:普通預金
個人事業税は必要経費に算入できるため、「租税公課」で処理します。
所得税の予定納税を支払ったとき
借方:事業主貸 / 貸方:普通預金
予定納税は所得税の前払いであり、経費にはなりません。事業用口座から支払った場合は「事業主貸」で処理します。確定申告時に予定納税額として差し引かれる仕組みです。
- 8月は個人事業税(地方税)と所得税の予定納税(国税)の通知が重なる時期。差出人(都道府県税事務所 or 税務署)で判別する
- 個人事業税は「租税公課」として経費になるが、予定納税は経費にならない。仕訳を間違えないこと
- 予定納税は業績悪化時に減額申請が可能。第2期分は11月15日が期限だが、8月中の準備がおすすめ
- 口座を「事業用」「納税プール用」「生活費用」の3つに分け、毎月粗利の20~25%程度を納税用にプールすると資金ショートを防げる
- 届いた通知書はその日のうちに開封し、納付期限をカレンダーに登録する習慣をつける
