「クラウドファンディングで100万円集まったけど、これって売上になるの?」「消費税はどうなるの?」——創業期にクラウドファンディングを活用する方が増えていますが、集めた資金の会計処理や税務上の取り扱いに迷う方は非常に多くいらっしゃいます。実は、クラウドファンディングの「型」やリターンの内容によって、売上・寄附・借入と処理がまったく異なり、間違えると税務調査で指摘を受けるリスクもあります。本記事では、2026年現在の取り扱いをもとに、具体例を交えてわかりやすく解説します。
01クラウドファンディングの主な3類型を整理する
まず前提として、クラウドファンディングには大きく分けて以下の3つの類型があります。それぞれ資金の性質がまったく異なるため、会計・税務処理も変わります。
- 購入型:支援者に対して商品やサービスなどの「リターン」を提供する形態。最も一般的。
- 寄附型:支援者にリターンを提供しない(またはお礼状程度)形態。社会貢献的なプロジェクトで多い。
- 融資型(貸付型):支援者に元本+利息を返済する形態。いわゆるソーシャルレンディング。
このほか「株式投資型」もありますが、創業期に利用されることが多い上記3つに絞って解説していきます。
02購入型クラウドファンディングの会計・税務処理
資金の性質は「前受金」→「売上」
購入型は、支援者が「商品やサービスを購入する対価」として資金を提供するものです。したがって、資金を受け取った時点では前受金として処理し、リターン(商品・サービス)を提供した時点で売上高に振り替えるのが原則です。
たとえば、2026年3月にクラウドファンディングで150万円を集め、2026年6月にリターンの商品を発送した場合、仕訳は次のようになります。
- 2026年3月(資金受取時):(借方)普通預金 150万円 /(貸方)前受金 150万円
- 2026年6月(リターン提供時):(借方)前受金 150万円 /(貸方)売上高 150万円
なお、プラットフォームに支払う手数料(通常10〜20%程度)は支払手数料として経費計上します。手数料が差し引かれて入金される場合でも、売上はあくまで総額で計上してください。
消費税の取り扱い
購入型は商品やサービスの対価の前払いですので、リターン提供時に消費税の課税売上となります。ただし、創業期で課税事業者に該当しない場合(基準期間の課税売上高が1,000万円以下の免税事業者)は、消費税の納税義務はありません。
注意:インボイス制度が導入されている現在、支援者が法人の場合は適格請求書の発行を求められることがあります。免税事業者のままでは適格請求書を発行できないため、BtoB取引が中心のプロジェクトでは課税事業者の選択(適格請求書発行事業者の登録)を検討する必要があります。
決算期をまたぐ場合の注意点
3月決算法人が2026年2月に資金を受け取り、リターン提供が2026年5月になるケースでは、2026年3月期の決算では前受金のまま据え置き、翌期に売上計上します。「お金が入ったから今期の売上」と安易に計上してしまうと、収益計上時期を誤ることになるため要注意です。
03寄附型クラウドファンディングの会計・税務処理
法人が受け取る場合
寄附型で集めた資金は、リターンの提供がないため売上には該当しません。法人の場合は受贈益(雑収入)として益金に算入され、法人税の課税対象となります。
- 仕訳例:(借方)普通預金 80万円 /(貸方)受贈益(雑収入) 80万円
個人事業主が受け取る場合
個人事業主の場合も、事業に関連する寄附金は事業所得の雑収入として総収入金額に含まれます。一方、事業とは無関係の個人的な寄附(例:闘病費用の募集など)であれば一時所得に該当する可能性があります。事業との関連性で判断が分かれるため、迷った場合は税理士にご相談ください。
消費税の取り扱い
寄附型は対価性がないため、消費税は不課税取引です。課税売上にも課税仕入にも該当しません。
04融資型クラウドファンディングの会計・税務処理
融資型は「借入金」として処理します。元本部分は収益ではなく負債であり、法人税・所得税の課税対象にはなりません。
- 資金受取時:(借方)普通預金 200万円 /(貸方)借入金 200万円
- 返済時:(借方)借入金 ○○万円・支払利息 ○○円 /(貸方)普通預金 ○○万円
支払う利息は経費(損金)として処理できます。消費税については、借入金の受取・返済ともに不課税、利息の支払いは非課税取引となります。
05「お礼」の線引き——購入型と寄附型の境界に注意
実務上最も判断に迷うのが、「リターンがお礼状やステッカー程度の場合、購入型なのか寄附型なのか」という点です。
税務上の判断基準は「対価性があるかどうか」です。支援金額に見合った経済的価値のあるリターンがあれば購入型(売上)、リターンが名目的で経済的価値がほぼなければ寄附型(受贈益)として扱います。
ポイント:たとえば1万円の支援に対して「お礼メール+活動報告書」のみをリターンとする場合、対価性はないと考えられ寄附型として処理するのが妥当です。一方、1万円の支援に対して「5,000円相当の商品+お礼メール」を提供する場合は、購入型として売上に計上する必要があります。プロジェクトページの設計段階から、どの類型に該当するかを意識しておくことが重要です。
06プラットフォーム手数料の処理
CAMPFIREやMakuakeなどのプラットフォームに支払う手数料(10〜20%程度)は、支払手数料として経費計上します。消費税の課税仕入れに該当しますので、課税事業者であれば仕入税額控除の対象となります。
ただし、手数料が差し引かれた金額で入金される場合でも、売上(または受贈益)はあくまで支援者が支払った総額で計上する点に注意してください。いわゆる「純額経理」は認められません。
07創業期に押さえておきたい実務チェックリスト
最後に、クラウドファンディングを活用する際に確認しておきたいポイントを整理します。
- プロジェクトがどの類型(購入型・寄附型・融資型)に該当するかを明確にする
- 購入型の場合、リターン提供時期を把握し、前受金→売上への振替タイミングを管理する
- 決算期をまたぐ場合は、期末時点の前受金残高を正確に把握する
- 消費税の課税・不課税・非課税の判定を類型ごとに確認する
- プラットフォーム手数料は総額・純額の処理に注意し、適格請求書(インボイス)を保存する
- 免税事業者の場合でも、将来の課税事業者判定に影響するため課税売上高を正しく集計する
- 購入型クラウドファンディングは「前受金→売上」として処理し、リターン提供時に消費税の課税売上となる
- 寄附型は「受贈益(雑収入)」として法人税・所得税の課税対象となるが、消費税は不課税
- 融資型は「借入金」であり、元本は収益に該当しない。利息の支払いは経費計上可能
- リターンの対価性の有無で購入型か寄附型かの判断が分かれるため、プロジェクト設計段階で類型を意識する
- プラットフォーム手数料は総額で売上計上したうえで、支払手数料として別途経費処理する
