「通帳を見たら、思った以上に残高が減っている——」。6月は梅雨の空模様と同じく、経営者の資金繰りにもどんよりとした不安が忍び寄る時期です。予定納税の通知書、住民税特別徴収の新年度額への切り替え、そして労働保険の年度更新。創業して間もない経営者ほど、これらが一気に押し寄せる6月の”三重苦”に戸惑うことが多いのではないでしょうか。この記事では、2026年6月の今週中に確認しておきたいポイントを一枚のチェックリストにまとめました。
01なぜ6月は資金繰りが苦しくなるのか
6月に資金繰りが厳しくなる最大の理由は、「納付のタイミングが集中する」ことに尽きます。具体的には以下の3つが同時期に発生します。
- 予定納税通知書の届出(所得税):前年の確定申告で所得税額が15万円以上だった場合、税務署から6月中旬頃に予定納税額の通知書が届きます。第1期の納付期限は2026年7月31日です。
- 住民税特別徴収の新年度額適用:2026年度の住民税額が確定し、6月の給与から新しい税額での天引きが始まります。従業員だけでなく、役員報酬から天引きされる経営者自身の負担額も変わります。
- 労働保険の年度更新:2026年6月1日から7月10日までの間に、前年度の確定保険料の精算と新年度の概算保険料の申告・納付を行う必要があります。
創業1〜2年目の経営者にとって、前年の利益が出た翌年ほど危険な時期はありません。「売上は伸びているのに、手元にお金がない」という状態は、まさにこの6月に起こりやすいのです。
02今週中に確認すべき手元資金チェックリスト
以下のリストを上から順に確認してください。所要時間は30分〜1時間程度です。経理担当者がいない場合は、経営者自身が通帳・ネットバンキングの画面を開きながら進めましょう。
ステップ1:口座残高の現状把握
- 事業用口座の「今日時点の残高」を確認する
- 今月中(2026年6月30日まで)に入金が確定している売掛金の合計額を書き出す
- 今月中に支払い予定の固定費(家賃・人件費・リース料など)の合計額を書き出す
- 上記を差し引きして「6月末時点の予測残高」を算出する
ポイント:この「予測残高」が月間固定費の1.5倍を下回っている場合は、資金繰りの黄色信号です。たとえば月間固定費が150万円なら、6月末時点で225万円以上の残高が確保できているかを一つの目安にしてください。
ステップ2:予定納税の納付額と対応方針を決める
- 税務署から届いた予定納税通知書の「第1期分」の金額を確認する(届いていない場合は、前年の確定申告書の「予定納税基準額」欄を確認)
- 第1期の納付期限は2026年7月31日、第2期は2026年11月30日であることを手帳やカレンダーに記入する
- 2026年の業績が前年より大幅に下がっている場合は、予定納税の減額申請を検討する(申請期限は2026年7月15日)
予定納税は「前年と同じくらい利益が出る前提」で課される仮払いの税金です。たとえば前年の所得税額が60万円だった場合、予定納税基準額はおおよそ40万円となり、第1期・第2期にそれぞれ約13万円ずつ納付することになります。しかし今年の売上が落ちているのであれば、減額申請を行うことで手元資金の流出を抑えることが可能です。
ステップ3:住民税特別徴収の新年度額を確認する
- 市区町村から届いた「特別徴収税額の決定・変更通知書」を開封し、従業員・役員ごとの月額を確認する
- 前年度と比較して月額がどれだけ増減したかを把握する
- 6月分の給与計算に新税額が正しく反映されているかを確認する(給与計算ソフトを使用している場合はデータの更新を忘れずに)
住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、創業初年度に利益が出た場合、翌年の6月から急に天引き額が増えます。役員1名・従業員2名の小規模法人で、前年度より合計で月2〜3万円増えるケースも珍しくありません。年間にすると24〜36万円の差になりますので、資金計画への影響は小さくありません。
ステップ4:労働保険の年度更新に備える
- 厚生労働省・労働局から届く「労働保険 概算・確定保険料申告書」の内容を確認する
- 前年度に支払った賃金総額をもとに確定保険料を計算し、概算保険料との差額(不足額または充当額)を把握する
- 新年度の概算保険料の納付額を確認する(概算保険料が40万円以上の場合は3回分割納付が可能)
- 申告・納付期限は2026年7月10日——今から約1か月以内であることを認識する
注意:労働保険の年度更新を期限内に行わないと、政府が保険料を決定し、さらに追徴金(10%)が課される可能性があります。届いた書類を「後で見よう」と放置するのが最も危険です。届いたらすぐに開封してください。
03予定納税の減額申請——知らないと損をする制度
創業期の経営者にぜひ知っておいていただきたいのが、所得税の「予定納税の減額申請」制度です。以下のような場合に利用を検討できます。
- 今年の売上・利益が前年に比べて明らかに減少している
- 今年、多額の設備投資や経費が発生し、所得が大幅に減る見込みである
- 災害・病気・事業廃止などの特別な事情がある
手続きとしては、「予定納税額の減額申請書」に2026年6月30日時点の現況をもとにした所得見積額を記載し、2026年7月15日までに所轄の税務署へ提出します。税務署が承認すれば、第1期分の予定納税額が減額(場合によってはゼロ)になります。
たとえば、前年の予定納税基準額が30万円(第1期・第2期各15万円)だったとしても、今年の見込み所得税額が10万円であれば、予定納税額をゼロにできる可能性があります。15万円の資金流出を防げるのは、創業期のキャッシュフローにとって大きな意味を持ちます。
04資金ショートを防ぐための3つの実務アクション
チェックリストの確認が終わったら、以下の3つのアクションに取り組みましょう。
アクション1:「納付カレンダー」を作る
7月10日(労働保険・源泉所得税の納付期限)、7月15日(予定納税減額申請の期限)、7月31日(予定納税第1期の納付期限)を一覧にして、事業用の手帳やGoogleカレンダーに登録してください。期限の1週間前にリマインダーを設定しておくと安心です。
アクション2:納税用の資金を別口座に移す
運転資金と納税資金を同じ口座で管理していると、「使えるお金」と「使ってはいけないお金」の区別がつかなくなります。予定納税額・住民税・労働保険料の合計額を別の口座(またはサブ口座)に移しておくだけで、資金ショートのリスクは大幅に下がります。
アクション3:専門家に相談するタイミングを逃さない
減額申請の要否判断や、資金繰り表の作成は、創業期の経営者が一人で抱え込むと時間もストレスもかかります。特に予定納税の減額申請は7月15日が期限ですので、検討されている方は今週中に税理士へ相談されることをお勧めします。
056月のこの1週間が、下半期の資金繰りを決める
6月は決算や確定申告のような「大きなイベント」ではないため、つい対応を後回しにしがちです。しかし、予定納税・住民税・労働保険という3つの支出が同時に押し寄せるこの時期にしっかり手を打てるかどうかで、下半期の資金繰りの安定度は大きく変わります。
「まだ通知書が届いていないから大丈夫」と思わず、届く前に予測残高を計算しておくことが大切です。届いてから慌てるのではなく、届く前に備える——これが創業期の資金管理の鉄則です。
- 6月は予定納税通知・住民税新年度額適用・労働保険年度更新が重なる「三重苦」の月
- 今週中に事業用口座の残高を確認し、6月末時点の予測残高を算出する
- 予定納税の第1期納付期限は2026年7月31日。業績が前年より下がっている場合は7月15日までに減額申請を検討する
- 住民税特別徴収の新年度額が6月の給与計算に正しく反映されているか確認する
- 労働保険の年度更新は2026年7月10日が期限。届いた書類はすぐに開封して内容を確認する
- 納税資金は運転資金と別口座で管理し、資金ショートを防ぐ
