「気づいたら決算まであと3か月しかない」「節税対策を考えたいけれど、何から手をつければいいか分からない」——9月決算の法人にとって、7月は利益の着地予測を立て、具体的なアクションに落とし込める”最後の余裕がある時期”です。ここを逃すと選択肢が急速に狭まります。本記事では、2026年7月時点で着手すべき項目を優先順位付きで整理しました。

01なぜ「決算3か月前」がデッドラインなのか

節税対策は「決算直前に慌てて実行する」ものではありません。大きく分けて次の3つの理由から、決算の3か月前=7月中の着手が推奨されます。

  • 利益着地の精度が上がる時期:上半期(10月〜3月)と第3四半期(4月〜6月)の数字が出そろい、残り7〜9月の売上・経費を加味すれば、着地予測の精度は80%以上まで高まります。
  • 物品の調達・契約に時間がかかる:少額減価償却資産の購入や設備投資は、発注から納品・検収まで数週間〜1か月以上かかることも珍しくありません。
  • 届出書の提出期限が迫る:決算日までに提出しなければ翌期から適用となる届出書があり、書類準備を含めると7月中の判断が必要です。

02まず着手:利益の着地予測を行う

試算表ベースで「年間利益」を見積もる

まずは6月末時点の試算表を経理担当者または税理士から取り寄せてください。9か月分の実績が確定しているはずです。残り3か月の売上・原価・固定費は、直近3か月の平均値を用いるとシンプルに推計できます。

たとえば、6月末時点の税引前利益が600万円で、直近3か月の月平均利益が80万円であれば、着地見込みは600万円+80万円×3=840万円です。ここから既に確定している特別損益(固定資産売却損など)を加減算し、おおよその課税所得を算出します。

「800万円の壁」を意識する

資本金1億円以下の中小法人の場合、課税所得800万円以下の部分には15%の軽減税率が適用されます(年800万円超は23.2%)。着地予測が800万円前後であれば、この境界を意識した対策の優先度が高くなります。

ポイント:着地予測は「1つの数字」ではなく、楽観・標準・悲観の3パターンで出しておくと、対策の規模感を柔軟に決められます。例:楽観1,000万円/標準840万円/悲観650万円。

03優先度A:7月中に判断・実行すべき節税アクション

A-1. 少額減価償却資産の特例(30万円未満)

青色申告法人で、常時使用する従業員が500人以下であれば、取得価額30万円未満の資産を全額損金算入できます(年間合計300万円が上限)。業務に必要なパソコン、ソフトウェア、什器備品などが対象です。ただし2026年9月末までに「事業の用に供する」ことが要件のため、納品リードタイムを逆算すると7月中の発注が安全ラインです。

A-2. 決算賞与の検討

決算賞与は従業員へのモチベーション向上と節税を両立できる手段です。未払計上で損金算入するには、以下の3要件をすべて満たす必要があります。

  1. 決算日(9月30日)までに支給額を各人に通知すること
  2. 通知した全額を決算日の翌月末(10月31日)までに支払うこと
  3. 決算日の属する事業年度に損金経理すること

たとえば従業員5名に各20万円の決算賞与を支給すれば、社会保険料の会社負担分と合わせて約130〜140万円の損金を確保できます。7月中に資金繰りと支給額の目安を決めておきましょう。

A-3. 中小企業経営強化税制の適用判断

一定の設備投資について即時償却または税額控除(取得価額の7%〜10%)を受けられる制度です。適用には「経営力向上計画」の認定が必要であり、設備取得前に申請するのが原則です。認定までに通常1か月程度かかるため、7月中に税理士へ相談し、8月上旬までに申請を完了させるスケジュールが現実的です。

04優先度B:8月中に固めるべき項目

B-1. 不良在庫・滞留債権の棚卸と処理

決算時に在庫の評価損を計上するには、客観的な証拠が求められます。8月中に実地棚卸を前倒しで行い、廃棄リストや市場価格の資料を整えておくとスムーズです。

B-2. 役員報酬の改定判断

定期同額給与は原則として期首から3か月以内(9月決算なら12月末まで)に改定が必要です。よって当期の改定は既に終わっていますが、翌期(2026年10月〜)の役員報酬額を検討し始めるには、着地予測が固まる8月が適切です。

B-3. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)の前納

月額掛金の上限20万円×12か月分=年間240万円を前納することで、全額を損金算入できます。ただし前納の申出は引落月の5日までに届出が必要なため、8月中に手続きを完了させてください。なお、2024年10月以降の税制改正により、解約後2年間は再加入しても損金算入が認められない点にご注意ください。

注意:経営セーフティ共済は解約時に全額が益金算入されるため、単なる「課税の繰り延べ」です。資金繰りに余裕がない場合やイグジットの時期が見えている場合は慎重に判断してください。

05忘れてはいけない届出書——提出期限と優先順位

決算日(2026年9月30日)までに提出が必要な届出書、あるいは翌期の適用に向けて確認すべき届出を一覧にまとめます。

  • 消費税の届出(簡易課税選択届出書など):翌事業年度(2026年10月〜)から簡易課税を選択する場合、当事業年度末(9月30日)までの提出が必要です。設備投資の予定がある場合は原則課税が有利になることもあるため、必ずシミュレーションを行いましょう。
  • 青色申告承認申請書:設立1期目の法人で未提出の場合、設立日以後3か月を経過した日と最初の事業年度終了日のいずれか早い日の前日が期限です。
  • 棚卸資産の評価方法・減価償却方法の届出:設立1期目の確定申告期限(2026年11月30日)までに提出すれば適用可能ですが、7〜8月のうちに方針を固めておくと安心です。

06税理士への共有タイムライン

決算を円滑に進めるため、税理士と以下のスケジュールで情報を共有することをおすすめします。

  1. 7月中旬(今すぐ):6月末試算表の確認、着地予測の共有、設備投資・賞与の方針相談
  2. 8月上旬:経営力向上計画の申請要否の最終判断、消費税届出のシミュレーション結果の確認
  3. 8月下旬〜9月上旬:決算整理仕訳の事前打ち合わせ、在庫棚卸・固定資産台帳の突合
  4. 9月中旬:決算賞与の支給額確定・通知、届出書の最終提出
  5. 9月末(決算日):現預金残高の確認、未払金・前受金の計上漏れチェック
この記事のまとめ
  • 9月決算法人にとって7月は利益着地の精度が高まり、節税策を実行に移せる「最後の余裕ある時期」。3パターンの着地予測を立てることが出発点。
  • 優先度Aは「少額減価償却資産の取得」「決算賞与の検討」「経営強化税制の適用判断」——いずれも7月中の着手が安全ライン。
  • 優先度Bとして「不良在庫・滞留債権の整理」「経営セーフティ共済の前納」「翌期の役員報酬検討」を8月中に固める。
  • 消費税の届出書など決算日までに提出が必要な書類の漏れがないか、税理士と早めに確認を。
  • 税理士への情報共有は7月中旬からスタートし、段階的にスケジュールを組むと決算が円滑に進む。