「気づいたら口座残高が足りない」——創業1〜2年目の経営者から、秋口に最も多く寄せられる相談がこの悩みです。10月から12月にかけては、消費税の中間申告、法人税の中間申告、個人事業税の第2期、住民税の第3期と、納税の期限が立て続けに押し寄せます。売上はあるのにキャッシュが回らない。その原因の多くは「納税スケジュールの把握不足」と「資金の事前確保ができていないこと」にあります。本記事では、2026年9月の今、着手すべき具体的なアクションを整理します。
0110月〜12月に集中する主な納税一覧
まず、2026年10月から12月にかけてどのような納税が発生し得るのか、法人・個人事業主それぞれについて一覧で確認しておきましょう。
法人の場合(3月決算法人の例)
- 法人税・地方法人税の中間申告(予定納税):事業年度開始から6か月を経過した日から2か月以内。3月決算法人であれば、中間申告の期限は2026年11月30日(月曜日)です。
- 消費税の中間申告:前期の年税額が48万円超の場合に発生。年税額に応じて年1回・3回・11回と回数が異なりますが、年1回の場合は法人税と同様に11月末が期限となります。
- 法人住民税・法人事業税の中間申告:法人税の中間申告と同時期に都道府県・市区町村へ申告・納付します。
個人事業主の場合
- 個人事業税 第2期:2026年11月30日(月曜日)が納期限です。都道府県から届く納税通知書に基づき納付します。
- 住民税 第3期:2026年10月末日が納期限(自治体により若干異なる場合があります)。
- 所得税の予定納税 第2期:2026年11月30日(月曜日)が納期限です。前年の確定申告に基づき予定納税基準額が15万円以上の場合に発生します。
- 消費税の中間申告:前年の消費税年税額が48万円を超える課税事業者に発生。中間申告の回数は年税額によって異なります。
ポイント:創業2期目に入った個人事業主や小規模法人では、「前年はそこまで利益がなかったから大丈夫」と油断しがちです。しかし、創業1期目に想定以上の売上があった場合、2期目の中間申告で思わぬ高額の納税が発生するケースが少なくありません。前期の確定申告書・決算書を今一度確認し、中間納付額の目安を把握しておきましょう。
02月別の必要キャッシュを逆算する方法
納税スケジュールが分かったら、次は「いつ・いくら必要なのか」を具体的に数字で把握します。以下の手順で逆算してください。
ステップ1:前期の確定申告書から中間納付額を算出する
法人税の中間申告(予定申告方式)の場合、前期の法人税額の2分の1が中間納付額となります。消費税も同様に、前期の年税額を基に算出されます。
たとえば、前期の法人税額が120万円であれば中間納付額は60万円。消費税の年税額が96万円であれば中間納付額は48万円。これに地方法人税・法人住民税・法人事業税を加えると、11月末までに合計で130万〜150万円程度の納税が必要になるケースもあります。
ステップ2:月別に納付額を割り振る
2026年の10月〜12月で発生する納税を、期限ごとに整理してみましょう。
- 10月:住民税第3期(個人事業主の場合)——目安:数万円〜数十万円
- 11月:法人税等中間申告、消費税中間申告、個人事業税第2期、所得税予定納税第2期——目安:数十万円〜百数十万円
- 12月:従業員の年末調整に伴う源泉所得税の納付、賞与に関連する社会保険料——目安:事業規模による
ステップ3:月末残高のシミュレーションを行う
事業用口座の9月末時点の残高に、10月以降の売上入金予定を加え、固定費・変動費・納税額を差し引いて、月末ごとの残高推移を表にまとめます。Excelやスプレッドシートで十分です。残高がマイナスになる月があれば、9月中に手を打つ必要があります。
039月中に着手すべき「納税資金プール口座」の作り方
キャッシュ防衛の基本は「見える化」と「分離」です。売上が入る口座と納税資金をプールする口座を分けるだけで、資金ショートのリスクは大幅に下がります。
- 専用口座を1つ開設する:ネット銀行でも構いません。「納税準備口座」と名付けて、事業用メイン口座とは別に管理します。
- 毎月の積立額を決める:10月〜11月に必要な納税総額を算出し、9月末までに確保すべき金額を確定します。たとえば11月末に合計130万円の納税が必要で、現時点で50万円しか確保できていなければ、9月中に80万円を移す計算になります。
- 売上入金日に自動振替を設定する:売上入金があったタイミングで、一定割合(目安として売上の10〜15%)を納税準備口座へ自動送金する仕組みを作りましょう。
この方法は創業期だけでなく、事業が成長してからも有効です。「利益が出ているはずなのに手元にお金がない」という状態を防ぐ、もっともシンプルな仕組みです。
04資金が足りない場合の3つの選択肢
シミュレーションの結果、どうしても9月中に納税資金を確保しきれない場合もあるでしょう。その場合は、以下の3つの選択肢を検討してください。
選択肢1:換価の猶予・納税の猶予を申請する
国税には「換価の猶予」(国税徴収法第151条の2)や「納税の猶予」(国税通則法第46条)の制度があります。一括での納付が困難な場合に、原則として1年以内の分割納付が認められることがあります。延滞税の一部が軽減される点もメリットです。申請には一定の要件がありますので、早めに税務署または税理士に相談してください。
選択肢2:短期融資・当座貸越の活用
日本政策金融公庫や信用金庫には、納税資金を目的とした短期融資の相談に応じてもらえるケースがあります。創業期であれば、創業融資の枠が残っている場合もあるため、まずは取引金融機関に状況を説明しましょう。納税額と時期が明確であれば、融資審査においてもプラスに働きます。
選択肢3:仮決算による中間申告
法人税や消費税の中間申告には「仮決算方式」という選択肢があります。前期は好調だったが今期は業績が落ちている——そんな場合、当期の上半期の実績で仮決算を行い、実態に即した中間納付額に減額することが可能です。ただし、仮決算には決算と同等の事務負担がかかるため、税理士と相談のうえ判断してください。
注意:納税を滞納したまま放置すると、延滞税の負担が膨らむだけでなく、金融機関からの信用にも悪影響を及ぼします。「払えない」と分かった時点で、税務署への相談や税理士への連絡を最優先で行ってください。早めの相談が最善の防衛策です。
05年末まで安心して経営に集中するためのチェックリスト
最後に、2026年9月中に確認・実行しておきたい項目をチェックリスト形式でまとめます。
- 前期の確定申告書・決算書を手元に用意し、中間納付額を確認した
- 10月〜12月の納税スケジュールと金額を一覧表にまとめた
- 月別キャッシュフローのシミュレーション(残高推移表)を作成した
- 納税準備口座を開設し、必要額の積立を開始した
- 資金不足が見込まれる場合、猶予制度・融資・仮決算のいずれかを検討し始めた
- 顧問税理士がいる場合は、9月中に今期の見通しを共有した
納税は避けられない支出ですが、「いつ・いくら」が分かっていれば、怖いものではありません。9月のうちに準備を整え、10月以降の納税ラッシュを落ち着いて乗り切りましょう。
- 10月〜12月は消費税・法人税の中間申告、個人事業税第2期、住民税第3期、所得税予定納税第2期など納税が集中する時期
- 前期の確定申告書から中間納付額を算出し、月別キャッシュフローをシミュレーションすることが最優先
- 売上口座と分離した「納税準備口座」を設け、売上の10〜15%を毎月積み立てる仕組みを作る
- 資金不足の場合は、換価の猶予・短期融資・仮決算方式の3つの選択肢を早めに検討する
- 9月中の着手が年末までの資金繰り安定のカギ。迷ったら早めに税理士へ相談を
