「年末が近づくと、納税額がいくらになるのか分からず資金繰りが不安になる」「金融機関に試算表を出したいけれど、税金が反映されていないから実態と違う数字になってしまう」――創業期の経営者なら、一度はそんな悩みを感じたことがあるのではないでしょうか。12月決算法人や個人事業主にとって、年末の決算準備は資金計画の精度を左右する重要な作業です。本記事では、2026年11月の試算表段階で未払消費税・未払法人税(所得税)を概算計上しておくメリットと、具体的な計算・仕訳手順を解説します。

01なぜ「11月中」に概算計上すべきなのか

12月に入ってからでは遅い3つの理由

12月決算法人や個人事業主の場合、年が明けてから確定申告・納付の時期を迎えます。しかし、12月に入ってから税金の概算を始めると、以下のような問題が生じます。

  1. 12月分の売上・仕入の確定を待つと、資金計画の策定が年末ギリギリになる。年末年始の休業期間も重なり、対策を打つ時間がなくなります。
  2. 金融機関への月次報告が「税金を含まない数字」のまま提出されてしまう。利益が過大表示されるため、実態とかけ離れた試算表になります。
  3. 年末賞与・仕入代金の支払いと納税資金の準備が重なり、キャッシュフローがひっ迫する。11月中に概算額を把握しておけば、12月の支出計画に納税分を織り込めます。

つまり、2026年11月中に概算計上を済ませることで「あと1か月+α」の準備期間を確保でき、融資面談や資金調達の交渉にも余裕を持って臨めるのです。

02概算計上で試算表の信頼性が劇的に上がる

金融機関が見ているポイント

金融機関の担当者が月次試算表を見る際、「税引前利益」だけでなく「税引後の手残りがいくらか」を意識しています。未払税金が計上されていない試算表では、利益が実態より大きく見え、逆に資金が足りなくなるリスクを見落としやすくなります。

たとえば、12月決算法人で1月〜10月の税引前利益が600万円の場合を考えてみましょう。

  • 未払法人税の概算(実効税率約25%と仮定):600万円 × 25% = 約150万円
  • 未払消費税の概算(課税売上3,000万円、課税仕入1,800万円、税率10%):(3,000万円 − 1,800万円)× 10% = 約120万円

概算計上しない試算表では、この合計270万円分が負債に反映されません。融資担当者から「本当はもっと資金が必要なのでは」と指摘されかねませんし、自社の資金計画にも狂いが生じます。11月の試算表に概算値を載せておくだけで、こうした齟齬を防ぐことができます。

ポイント:概算計上はあくまで「見積り」です。12月の実績が出た段階で金額を修正すれば問題ありません。最初から正確な数字を求めすぎず、「大枠を把握する」ことが目的であると割り切りましょう。

03未払法人税(個人の場合は所得税)の概算計算手順

ステップ1:課税所得の見積り

まず、1月〜10月の試算表から税引前利益を確認します。そこに11月・12月の売上・経費の見込みを加味して、通期の課税所得を見積もります。創業期は季節変動が読みにくいため、直近3か月の平均値を使うのが実務的です。

ステップ2:税額の概算

法人の場合:資本金1億円以下の中小法人であれば、年800万円以下の所得に対して法人税率15%、地方税等を含めた実効税率はおおむね23〜25%程度です。通期の課税所得見込みに実効税率を乗じて概算額を算出します。

個人事業主の場合:所得税の速算表を用いて税額を計算し、さらに住民税(所得割10%)と事業税を加味します。青色申告特別控除65万円(電子申告要件を満たす場合)を差し引くことも忘れないようにしましょう。

ステップ3:仕訳の入力

法人の場合、11月末日付で以下の仕訳を入力します。

  • (借方)法人税、住民税及び事業税 150万円 /(貸方)未払法人税等 150万円

個人事業主の場合は、所得税・住民税は「事業主貸」で処理するケースが多いですが、資金繰り管理の観点から備忘的にメモ欄や補助科目で概算税額を記録しておくと効果的です。

04未払消費税の概算計算手順

原則課税の場合

1月〜10月の「仮受消費税」と「仮払消費税」の残高を会計ソフトから確認します。差額がおおよその未払消費税です。11月・12月の売上・仕入見込みを加算して通期の概算額を算出します。

  • (借方)租税公課(または仮受消費税の振替) 120万円 /(貸方)未払消費税等 120万円

簡易課税の場合

みなし仕入率を使って計算するため、課税売上高さえ見積もれば比較的簡単に概算が出せます。たとえばサービス業(第五種事業・みなし仕入率50%)で課税売上高が2,000万円(税抜)の場合、概算の消費税額は次のとおりです。

  • 2,000万円 × 10% ×(1 − 50%)= 100万円

注意:2023年10月から始まったインボイス制度に伴う2割特例は、2026年分の申告(2026年12月期)でも適用対象となる場合があります。免税事業者からインボイス発行事業者になった方は、2割特例の適用可否と経過措置の期限を必ず確認してください。判断が難しい場合は税理士にご相談ください。

05概算計上を資金計画・融資面談に活かすコツ

資金繰り表への反映

概算計上した未払税金を資金繰り表の「翌年2〜3月の支出」に組み込みます。法人税の納期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内(12月決算なら2027年2月末)、消費税も同様です。個人事業主の所得税は2027年3月15日が納期限です。支出時期を明確にすることで、年末年始の資金ショートを防げます。

融資面談での説明方法

金融機関に試算表を提出する際、「11月末時点で未払税金を概算計上済みです」と一言添えるだけで、担当者に与える印象は大きく変わります。月次で税金を織り込んだ試算表を作成できる経営者は「財務管理がしっかりしている」と評価されやすく、融資審査にもプラスに働きます。

06概算計上後のフォローアップ

11月末に概算計上した税額は、12月の実績が確定した段階で差額を調整します。手順は次のとおりです。

  1. 12月末の試算表で通期の利益・消費税額を再計算する。
  2. 11月に計上した概算額との差額を追加仕訳または修正仕訳で調整する。
  3. 確定申告書を作成し、最終確定額と帳簿上の未払税金が一致していることを確認する。

多少のズレは当然発生しますが、11月段階で大枠を把握しておくことで、12月の調整作業は格段にスムーズになります。

この記事のまとめ
  • 12月決算法人・個人事業主は、2026年11月中に未払消費税・未払法人税(所得税)を概算計上しておくことで、試算表の信頼性が大幅に向上する。
  • 概算計上の手順は「課税所得の見積り → 税率を乗じて税額算出 → 仕訳入力」の3ステップ。完璧な正確さよりも大枠の把握を優先する。
  • 概算税額を資金繰り表に反映させることで、年末年始の資金ショートを防ぎ、融資面談でも財務管理力をアピールできる。
  • 12月の実績確定後に差額を調整し、確定申告へスムーズにつなげる。