「5月が終わって決算月を迎えたけれど、何から手をつければいいのか分からない」――創業1期目・2期目の5月決算法人の経営者から、毎年この時期にそんなご相談をいただきます。申告期限は原則として2026年7月31日ですが、届出書の提出期限はそれよりも早いものがあり、うっかり忘れると税額に大きく影響するケースもあります。本記事では、決算整理仕訳の着手から法人税・地方税・消費税の申告、各種届出書の提出までを時系列で整理し、初めての決算でもミスなく乗り切るための実務チェックリストをお届けします。
015月決算法人の申告スケジュール全体像
5月決算法人の場合、事業年度終了日は2026年5月31日です。法人税・地方税(法人住民税・法人事業税)・消費税の各申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内、すなわち2026年7月31日となります。ただし、創業期には申告だけでなく「届出書」にも注意が必要です。まずは大まかな流れを把握しましょう。
時系列で見るスケジュール
- 2026年5月中:決算月の月次処理を進めつつ、決算整理仕訳の準備を開始
- 2026年6月上旬〜中旬:決算整理仕訳の確定、試算表の確認、勘定科目内訳書の作成着手
- 2026年6月下旬:各種届出書の提出(届出期限が「事業年度終了の日の翌日から1か月以内」のものに注意)、税額の試算
- 2026年7月上旬〜中旬:法人税申告書・地方税申告書・消費税申告書の作成・最終チェック
- 2026年7月31日:法人税・地方税・消費税の申告期限および納付期限
ポイント:創業1期目の場合、設立届出書や青色申告承認申請書を設立時に提出し忘れていないかも改めて確認しましょう。青色申告承認申請書は設立日から3か月以内、または最初の事業年度終了の日のいずれか早い日が期限です。2期目以降に提出が漏れていた場合、青色欠損金の繰越控除が使えないなど大きな不利益が生じます。
02決算整理仕訳で押さえるべき重要項目
決算整理仕訳は、日常の記帳では処理しきれない項目を期末に調整する作業です。創業期に特に抜けやすいポイントを確認していきます。
創業期に漏れやすい決算整理仕訳
- 減価償却費の計上:設立時に購入したPCや備品、内装工事費などの減価償却を正しく計上します。事業供用日が期中の場合は月割計算が必要です。
- 前払費用・未払費用の計上:家賃やサーバー代、保険料など、期間対応が必要な経費の見直しを行います。
- 棚卸資産の計上:在庫を持つ事業の場合、実地棚卸を行い期末在庫を計上します。創業1期目は評価方法の届出(届出がなければ最終仕入原価法)にも注意してください。
- 創立費・開業費の処理:繰延資産として計上している場合、償却の要否・金額を確認します。任意償却が認められるため、初年度に赤字であれば償却を見送る判断も有効です。
- 未払法人税等の計上:概算でも決算書上に未払法人税等を計上することで、損益の実態に近い決算書になります。
03法人税・地方税の申告で注意すべきこと
創業1〜2期目の法人税申告では、以下の点に注意が必要です。
法人税
- 欠損金の繰越:青色申告法人であれば、欠損金を最長10年間繰り越せます。赤字でも必ず申告書を提出してください。
- 別表の作成:別表一(法人税額の計算)、別表四(所得の金額の計算)、別表五(一)(利益積立金額の計算)、別表五(二)(租税公課の納付状況)、別表十六(減価償却)などが主要な別表です。
- 中小法人の軽減税率:資本金1億円以下の法人は、所得800万円以下の部分について年15%の軽減税率が適用されます(2026年5月期も適用あり)。
地方税(法人住民税・法人事業税)
- 均等割:赤字であっても法人住民税の均等割は発生します。東京都23区内の資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人であれば、年額7万円です。
- 申告先:本店所在地の都道府県・市区町村に申告します。都内23区の場合は都税事務所への一括申告です。
04消費税の判定と届出―創業期の落とし穴
創業期において最もミスが起きやすいのが消費税に関する判定と届出です。
免税事業者か課税事業者かの判定
基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円以下であれば原則として免税事業者です。創業1期目は基準期間が存在しないため、原則として免税ですが、以下の場合は課税事業者となります。
- 設立時の資本金が1,000万円以上の法人
- 特定新規設立法人に該当する場合(大規模法人による支配関係がある場合など)
- インボイス発行事業者として登録した場合
届出書の確認
- 消費税課税事業者届出書:基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合に速やかに提出
- 消費税簡易課税制度選択届出書:適用を受けたい課税期間の開始日の前日までに提出が必要。ただし創業1期目に限り、事業年度終了の日までに提出すれば当期から適用可能です。
- 適格請求書発行事業者の登録申請書:インボイス制度に対応する場合、登録済みかどうかを確認しましょう。
注意:2期目の5月決算法人で、1期目の上半期(特定期間)の課税売上高と給与支払額がともに1,000万円を超えている場合、2期目から課税事業者になります。「まだ2期目だから免税」と思い込んでいると、無申告になる危険があります。必ず特定期間の数値を確認してください。
05届出書の提出期限チェックリスト
決算・申告と並行して、以下の届出書の提出漏れがないか確認してください。特に創業1期目の決算前後で期限を迎えるものを整理しています。
主な届出書と提出期限
- 法人設立届出書(税務署・都道府県・市区町村):設立日から2か月以内(未提出なら至急提出)
- 青色申告承認申請書:設立日から3か月以内、または最初の事業年度終了日のいずれか早い日まで
- 給与支払事務所等の開設届出書:開設日から1か月以内(未提出なら至急提出)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:随時提出可能。従業員10人未満なら年2回の納付に変更でき、資金繰りの改善に有効です。
- 棚卸資産の評価方法の届出書:最初の確定申告書の提出期限まで(2026年7月31日が期限)
- 減価償却資産の償却方法の届出書:最初の確定申告書の提出期限まで(届出なしの場合は定率法が適用、2007年4月1日以後取得の建物・建物附属設備・構築物は定額法)
066月末までに終わらせたい実務チェックリスト
2026年7月31日の申告期限に余裕をもって間に合わせるために、6月末までに以下の項目を完了させることを目標にしましょう。
- 現預金の残高照合(通帳・ネットバンキングの残高と帳簿の一致確認)
- 売掛金・買掛金の残高確認と得意先・仕入先への確認
- 固定資産台帳の更新と減価償却費の計算
- 在庫がある場合は実地棚卸の実施と棚卸表の作成
- 前払費用・未払費用・未払金の洗い出しと計上
- 仮払金・仮受金など仮勘定の精算
- 消費税の課税区分の見直し(課税・非課税・不課税・免税の区分確認)
- 役員報酬の定期同額給与の確認(期中変更の有無)
- 各種届出書の提出状況の確認と未提出分の対応
- 概算税額の試算と納税資金の確保
上記の項目をこの時期に終わらせておけば、7月は申告書の作成と最終確認に集中できます。
07初めての決算を確実に乗り切るために
創業期の決算・申告は、手続きの全体像が見えにくく不安になるものです。特に5月決算法人は、ゴールデンウィーク明けから決算作業と通常業務が重なるため、スケジュール管理が肝心です。
「自分で申告書を作成するのは難しい」と感じたら、早めに税理士に相談することをおすすめします。6月中に依頼すれば、7月末の申告期限にも十分間に合います。逆に7月下旬に駆け込みで依頼すると、確認不足のまま申告してしまうリスクが高まります。
また、申告期限に間に合わない場合は、法人税・消費税ともに無申告加算税(原則15〜20%)や延滞税が発生します。仮に税額が確定していなくても、見込み額で期限内に納付しておけば延滞税を最小限に抑えられますので、資金繰りの見通しも早めに立てておきましょう。
- 5月決算法人の申告期限は2026年7月31日。届出書には7月末より前に期限が来るものもあるため、6月中の確認・提出が重要
- 決算整理仕訳では減価償却費・前払費用・未払費用・棚卸資産・創立費や開業費の処理を重点的にチェック
- 消費税は「免税」と思い込まず、資本金の額・特定期間の売上高・インボイス登録の有無を必ず確認する
- 青色申告承認申請書や棚卸資産の評価方法の届出書など、創業期特有の届出の提出漏れがないか確認
- 6月末までに決算整理・届出・概算税額の試算を済ませ、7月は申告書作成に集中するスケジュールが理想
