「融資の面談って、何を聞かれるんだろう……」「事業計画書は作ったけれど、口頭でうまく説明できる自信がない」——創業期に初めて金融機関の融資面談に臨む方から、こうしたご相談をいただくことが少なくありません。実は、面談で聞かれる質問にはある程度パターンがあり、事前にしっかり準備しておけば落ち着いて対応できます。本記事では、2026年現在の創業融資の現場で頻出する5つの質問と、その意図・模範回答の組み立て方を税理士の視点で解説します。

01なぜ「面談」が重要なのか——書類だけでは伝わらないこと

日本政策金融公庫の新規開業資金や、各自治体の制度融資では、事業計画書や創業計画書といった書類審査に加え、担当者との面談が実施されます。面談の目的は大きく分けて次の3つです。

  • 書類に書かれた数字の「裏付け」を確認する
  • 経営者としての人物像や覚悟を見極める
  • 返済能力と事業継続性を総合的に判断する

つまり、面談は「書類の行間を埋める場」です。どれだけ立派な事業計画書を作っても、面談で整合性のない回答をしてしまうと評価が下がります。逆に言えば、面談対策をしっかり行うことで融資審査を有利に進めることができるのです。

02質問1:「なぜこの事業を始めようと思ったのですか?」

質問の意図

担当者が知りたいのは「一時的な思いつきではなく、根拠ある動機があるか」という点です。創業の経緯にストーリーと説得力があるかどうかで、事業への本気度を測っています。

模範回答の組み立て方

  1. 過去の経験・スキルと事業領域の接点を示す(例:「前職で10年間、飲食店の店舗運営に携わりました」)
  2. 市場のニーズや課題を自分の言葉で語る(例:「高齢化が進む地域で、買い物難民向けの宅配サービスが不足していると感じました」)
  3. 「なぜ今なのか」というタイミングの妥当性を添える

NGパターン

「儲かりそうだから」「会社を辞めたかったから」など、動機が消極的・短絡的な回答は印象を大きく損ねます。また、創業計画書に記載した動機と面談での回答が食い違うのも避けましょう。

03質問2:「売上の見込みはどのように算出しましたか?」

質問の意図

事業計画書の売上予測が「希望的観測」ではなく、論理的な根拠に基づいているかを確認しています。ここが曖昧だと、計画全体の信頼性が揺らぎます。

模範回答の組み立て方

売上の算出根拠を具体的な数字で示すことが重要です。業種によって計算式は異なりますが、代表的な例を挙げます。

  • 飲食業の場合:客席数 × 回転率 × 客単価 × 営業日数(例:20席 × 2回転 × 1,200円 × 25日 = 月商120万円)
  • サービス業の場合:月間対応可能件数 × 平均単価(例:月20件 × 15万円 = 月商300万円)

さらに、「開業後3か月は稼働率60%で見込んでいます」といった保守的な前提を加えると、担当者に「現実的に考えている」という安心感を与えられます。

ポイント:事業計画書に記載した売上予測の計算式を、面談でもそのまま口頭で再現できるようにしておきましょう。数字の整合性が取れていることが信頼獲得の第一歩です。

04質問3:「自己資金はいくらありますか?どのように貯めましたか?」

質問の意図

自己資金の額と、その形成過程を見ることで「計画的にお金を管理できる人かどうか」を判断しています。日本政策金融公庫の創業融資では、一般的に融資希望額の3分の1程度の自己資金があると評価が高くなると言われています。

模範回答の組み立て方

  1. 自己資金の総額を明確に伝える(例:「自己資金は350万円です」)
  2. 貯蓄の経緯を説明する(例:「3年前から毎月8万円ずつ創業用の口座に積み立ててきました」)
  3. 通帳のコピーなど、裏付け資料を提示する

NGパターン

面談直前に親族から一時的に借りた「見せ金」は、通帳の履歴ですぐに見抜かれます。タンス預金で貯めていたため通帳に履歴がないケースも、説明が困難になります。自己資金は日頃からコツコツ貯め、銀行口座で管理しておくことが大切です。

05質問4:「売上が計画どおりにいかなかった場合、どうしますか?」

質問の意図

事業には不確実性がつきものです。担当者は、経営者がリスクをどの程度認識し、対策を考えているかを見ています。楽観的すぎる回答は「リスク管理ができない人」と映ります。

模範回答の組み立て方

  • 具体的なリスクシナリオを想定していることを伝える(例:「売上が計画の70%にとどまった場合のシミュレーションも行っています」)
  • 固定費の削減策や代替の収益源を説明する(例:「配偶者が現在も会社員として勤務しており、生活費は最低限カバーできます」)
  • 損益分岐点の売上額を把握していることを示す

注意:「計画どおりにいかないことは想定していません」という回答は、最も避けるべきNG例です。面談官が確認したいのは「最悪のシナリオへの備え」であり、自信過剰な態度は逆効果になります。

06質問5:「借入金はどのように返済していく計画ですか?」

質問の意図

金融機関にとって最大の関心事は「貸したお金がきちんと返ってくるか」です。返済原資がどこから生まれるのか、月々の返済額が資金繰りを圧迫しないかを確認しています。

模範回答の組み立て方

  1. 月々の返済額と返済期間を明確に述べる(例:「500万円を5年間で返済し、月々の返済額は約8.5万円です」)
  2. 返済原資を説明する(例:「月間の営業利益が25万円を見込んでおり、返済額を差し引いても資金に余裕があります」)
  3. 据置期間の活用も検討している旨を伝える(例:「開業後6か月間は据置期間を設定し、売上が安定してから返済を開始したいと考えています」)

事業計画書の資金繰り表と矛盾がないよう、面談前に必ず数字を確認しておきましょう。

07面談当日までに準備すべき資料リスト

面談をスムーズに進めるために、以下の資料を整えておくことをおすすめします。

  • 創業計画書(事業計画書)の控え
  • 売上予測の算出根拠メモ
  • 資金繰り表(少なくとも12か月分)
  • 自己資金を確認できる通帳のコピー(直近6か月~1年分)
  • 見積書・契約書(設備投資や店舗賃貸などの裏付け資料)
  • 職務経歴書またはスキルシート(事業との関連性を示すもの)
  • 許認可関連の書類(該当する業種の場合)
  • 確定申告書・源泉徴収票(直近2年分)

これらの資料はクリアファイルなどに整理し、面談時にすぐ取り出せるようにしておくと好印象です。

08面談で差がつく「3つの心構え」

最後に、面談全体を通じて意識したいポイントを3つお伝えします。

  1. 正直に答える:わからないことは「確認して後日ご回答します」と伝えるほうが、その場しのぎの回答より信頼されます。
  2. 数字で語る:「たくさん売れると思います」ではなく、「月間30件の受注を見込んでいます」と具体的に答えましょう。
  3. 聞かれていないことまで話しすぎない:質問に対して簡潔かつ的確に回答し、補足が必要な場合のみ情報を追加するのが効果的です。

創業融資の面談は、経営者としての第一歩を金融機関に示す大切な場です。しっかり準備をして臨めば、必ず自信を持って対応できます。当事務所では、創業計画書の作成支援から融資面談の事前シミュレーションまでサポートしております。不安な点がございましたら、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。

この記事のまとめ
  • 融資面談では「創業動機」「売上根拠」「自己資金」「リスク対策」「返済計画」の5つが必ず聞かれる
  • 事業計画書の数字と面談での回答に整合性を持たせることが最重要
  • 売上予測は具体的な計算式で説明できるよう準備する
  • 「見せ金」や楽観的すぎる回答はNG——正直かつ現実的な姿勢が信頼につながる
  • 面談当日は資料を整理し、質問に対して簡潔・的確に答える